香港民主派の象徴・黎智英氏に有罪判決 終身刑の可能性も、国際社会に波紋

2025-12-20 18:54
2007年6月9日、香港のメディア実業家で、当時「蘋果日報」を率いていた黎智英氏が、香港返還10年をめぐり民主党が開いた討論会に出席した。(AP通信)
2007年6月9日、香港のメディア実業家で、当時「蘋果日報」を率いていた黎智英氏が、香港返還10年をめぐり民主党が開いた討論会に出席した。(AP通信)

黎智英(ジミー・ライ)氏の裁判は、香港当局による民主派への一連の「清算」の中でも、いまだ決着のついていない数少ない象徴的な国家安全法事件の一つである。起訴内容は、2019年の「逃亡犯条例改正案」反対デモに直結している。すでに数百人の活動家、弁護士、政治家たちが投獄されるか海外へ亡命したが、黎ほど世界中から注目を集め続けている人物は他にいない。英『ガーディアン』紙は、彼の歩んできた人生が「民主を追い求め、そして最終的に敗北した香港の歴史」と完全に見事に重なり合っていると振り返る。

香港民主の終わりを告げる一判決

12月15日(月)、香港の裁判所は『蘋果日報(アップル・デイリー)』の創設者である黎智英氏に対し、香港国家安全法違反などの罪で有罪を言い渡した。約2年に及ぶ歴史的な裁判の終結は、大きな打撃を受けてきた香港の民主化運動が、ついに「終焉」を迎えたことを象徴している。

今回の判決に、驚きはなかった。黎氏は長年にわたり北京当局から目の敵にされており、近年の民主派に対する決定的な大粛清において、最も象徴的なターゲットの一人となっていたからだ。当局は、この78歳の起業家であり民主派支援者を「裏切り者」かつ「犯罪者」と定義した。オーストラリアを拠点とする香港出身の弁護士、ケビン・ヤム氏は「彼の人生の軌跡は、まさに香港という街が辿った歴史そのものを反映している」と評する。

2025年12月15日、黎智英の妻子が西九龍裁判法院に到着し、黎智英事件の判決を待っている。左は名誉枢機卿の陳日君。(AP通信)
2025年12月15日、黎智英氏の妻と子どもが西九龍裁判法院に入り、判決を待った。左は引退した陳日君枢機卿。(AP通信)

黎氏は「扇動的な刊行物を共謀して発行した罪」1件と「外国勢力と共謀した罪」2件について無罪を主張していたが、裁判所は月曜日、3つの罪名すべてで有罪の裁定を下した。政府が指定した裁判官は、黎氏が「長年にわたり中華人民共和国に対して憎悪と怨念を抱き、中国共産党の統治を覆そうと意図していた。それがたとえ中国や香港の人々の犠牲を伴うものであったとしてもだ」と厳しく断じた。

この公判は開始以来、法的な論争や政府レベルの介入が入り混じり、何度も延期されてきた。多くの国際人権団体は、これが明らかに政治的動機に基づく「見せしめ裁判」であり、報道の自由に対する直接的な攻撃であると強く批判している。

黎氏は2020年からすでに拘束され続けており、別の複数のデモ関連事件ですでに約10年の刑期を言い渡されている。さらに、支持者らが「でっち上げの罪名」と主張する詐欺容疑での起訴も含まれている。

2020年8月10日、香港メディア大物の黎智英が香港の自宅で警察に逮捕される。(AP通信)
2020年8月10日、香港のメディア実業家・黎智英氏が、香港の自宅で警察に拘束された。(AP通信)

今回の最新の有罪判決により、黎氏には最悪の場合、終身刑が科される可能性がある。家族は、長期拘禁されているこの老齢の人物が、再び自由の身となって戻ってくる日は来ないのではないかと危惧している。判決の数週間前、黎氏の子女たちは同氏の健康状態が深刻なレベルにあると警告を発していた。 (関連記事: 黎智英氏、香港国安法違反で有罪 米国務長官「拷問のような扱い」批判し即時釈放求める 関連記事をもっと読む

立身出世の神話:少年工からアジアのメディア王へ

黎智英氏が香港で最も名の知れた億万長者の一人へと上り詰めた過程は、典型的な「立身出世」の物語である。12歳の時、毛沢東統治下の中国から逃れるため香港へと密入国した同氏は、当初、衣料品工場で働く少年工だった。その後、アパレルブランドの「ジョルダーノ(Giordano)」を設立して成功を収め、さらにメディア事業へと進出。雑誌と新聞を擁するメディアグループを築き上げ、欧米からは「アジアのルパート・マードック氏」と称された。

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