台湾・憲法法廷で異例の内紛――「憲法訴訟法」改正に違憲判決も、大法官3人が「5人による判決は無効」と猛反発

司法院は19日、憲法法廷の「114年憲判字第1号判決」に関する記者会見を開き、ニュース・法治啓発処処長で報道官の呉定亜氏が判決の概要を説明した。(写真/劉偉宏撮影)
司法院は19日、憲法法廷の「114年憲判字第1号判決」に関する記者会見を開き、ニュース・法治啓発処処長で報道官の呉定亜氏が判決の概要を説明した。(写真/劉偉宏撮影)

台湾の立法院(国会)で国民党と民衆党(「藍白」陣営)が昨年12月20日に可決した「憲法訴訟法(憲訴法)」改正をめぐり、憲法法廷は19日、「民国114年憲判字第1号判決」を言い渡した。改正法について、立法手続きに重大な瑕疵があり、正当な立法手続きおよび権力分立原則に反するとして違憲と判断し、判決公告日から失効するとした。もっとも、この判決の公表直後、蔡宗珍氏、楊惠欽氏、朱富美氏の3人の大法官が、判決に同意しないとする公開の反対意見書を提出した。意見書では、憲法法廷が現行法の要件を満たさず、合法的に構成されていない以上、当該判決そのものの正当性に疑義があると指摘している。

改正された憲訴法では、大法官の定数を15人とし、評議に参加する大法官は10人以上、違憲宣告には9人以上の同意が必要と定められている。しかし、前司法院長の許宗力氏ら7人の大法官が退任した後、現職の大法官は8人にとどまっている。この間、頼清徳総統が2度にわたり計7人の大法官を指名したものの、いずれも野党の反対で承認されず、憲法法廷は1年以上にわたり判決を出せない状態が続いてきた。現在は受理・不受理の決定にとどまり、今年11月末時点で未結案件は473件に上っている。

20250321-副総統蕭美琴(中)、秘書長潘孟安(右四)、司法院長被提名人蔡秋明(左四)、副院長被提名人蘇素娥(右三)、大法官被提名人詹鎮榮(左起)、林麗瑩、蕭文生、鄭純惠、陳慈陽21日出席114年司法院正、副院長及大法官被提名人紹介記者会。(顏麟宇撮影)
大法官候補の指名は、野党側の反対でいずれも承認に至っていない。(写真/顏麟宇撮影)

立法院は憲訴法改正案を可決後、今年1月23日に公布したが、行政院が提出した覆議案は野党に否決された。その後、民進党団が暫定処分および憲法審査を申し立て、5月14日に過半数の大法官が受理に同意した。司法院は19日午後、この件に関する記者会見を開き、改正憲訴法は立法過程に明白かつ重大な欠陥があり、憲法の正当な立法手続きと権力分立原則に反するとして、違憲であり失効すべきだとの判断を示した。

不同意意見書「5人判決は法定人数を欠き、無効」

判決の公表を受け、蔡宗珍氏、楊惠欽氏、朱富美氏の3人の大法官は、共同で「本判決に同意しない」とする公開の法律意見書を発表した。意見書は、改正後の憲法訴訟法が明文で定めるとおり、憲法法廷が判決を下すには少なくとも10人の大法官が必要であり、現状では法廷は法的に成立し得ないと指摘している。また、憲法訴訟法は総統の公布を経て効力を持つ現行法であり、立法院による改廃、もしくは合法に構成された憲法法廷が違憲を宣告するまでは、憲法法廷と大法官を絶対的に拘束すると強調した。たとえ同法が憲法審査の対象となっても、そのことだけで効力が失われたり、一時停止されたりすることはないとしている。

3人はさらに、憲法法廷に判決権限があるかどうかは、法廷が客観的に合法に構成されているか否かで決まると述べた。判決内容がどのように自己正当化を試みても、その点は判断基準にならないとしたうえで、5人の大法官のみが署名した「114年憲判字第1号判決」は、形式上ひと目で法定人数を満たしておらず、明らかに無効だと結論づけている。意見書は、憲法法廷が正常に機能していない根本原因は、大法官の欠員という事実にあるとして、解決策は憲法手続きに従って欠員を補充することだと提起した。

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