今月9日、駐日台湾代表の李逸洋氏が台湾の公的肩書きで初めて長崎平和祈念式典に参列し、80年前の原爆犠牲者に哀悼の意を表した。しかし、座席が各国政府代表席ではなく「国際非政府組織(NGO)」の区画にあったとの情報が伝わり、李氏は中国側の圧力で台湾の地位を低く見せる意図があったと理解していると語った。これに対し、産経新聞は12日、長崎市の最新回答を報道。市は「会場にNGO区は存在しない」と説明した。
長崎市の説明
長崎市原爆被爆対策部調査課によると、会場には特定の「NGO区」は設けられておらず、台湾代表の座席は外務省が手配する外賓席の一部。座席順は特命全権大使を優先し、その後に臨時代理大使や書記官が配置されるため、台湾は後方となったという。
台湾側の立場
李逸洋氏は駐日代表処の声明で、台湾は長年、国際平和活動への参加を積極的に働きかけてきたとし、「国際社会と緊密に連携し世界平和を推進する立場と誠意を示す」ため、格下の扱いを受けても出席を選んだと説明。また「核兵器を拡張し続ける中国が、平和記念式典の裏で平和を追求する台湾に圧力をかけるのは極めて遺憾」と批判し、「台湾は国際NGOではなく、国際舞台で活動する主権国家だ」と強調した。
過去の前例
日本の主要な追悼行事で台湾が待遇を巡って問題となったのは今回が初めてではない。2012年の東日本大震災追悼式では、当時の日本政府が台湾代表を「民間代表者」と位置づけ、献花の際に名を呼ばなかった。台湾が250億円を寄付した経緯もあり、批判を受けた野田佳彦首相(当時)は国会で謝罪。翌年、安倍晋三首相が台湾を献花名簿に明記したが、中国はその年の式典を欠席した。
広島との違い
産経新聞によれば、広島市は今年初めて正式に台湾へ原爆式典の招待状を送ったが、長崎市は台湾から出席の意向を伝えられた後に招待状を出したという。なお、中国は今年、広島・長崎双方の式典を欠席している。
情報提供元:『産経新聞』
編集:梅木奈実 (関連記事: 広島原爆80年 台湾が初参加 駐日代表「戦争に勝者はいない」 | 関連記事をもっと読む )
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