アップル、Siriに外部AI導入か 自社開発に限界、OpenAI・Anthropicと交渉中

2025-07-01 13:40
WWDC 2024 アップル開発者会議のプレゼン映像。(ネットから転載)
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アップルが誇る閉鎖的なエコシステムに、かつてない規模の戦略転換が迫っている可能性がある。『ブルームバーグ』が7月1日に報じた独占記事によれば、アップルは次世代Siriの基盤として、競合他社であるOpenAIまたはAnthropicのAI技術を採用することを検討しているという。この方針転換は、自社で長年開発してきた大規模言語モデル(LLM)が行き詰まっていることを事実上認めるものだ。来年にも導入される可能性があるこの動きは、シリコンバレーに衝撃を与えるとともに、アップルのAIチーム内で混乱と危機が進行している実態を浮き彫りにしている。

遅れを認める?アップルがかつての対抗馬に救援要請

2011年の登場以来、Siriはスマート音声アシスタントの代名詞とされてきたが、現在ではOpenAIのChatGPTやGoogleのGeminiといった競合に大きく後れを取っている。アップルはすでに、ChatGPTを通じてSiriがウェブ検索に回答できる機能を導入しているものの、音声アシスタントの中核部分は今なお自社技術に依存している。

『ブルームバーグ』は関係者の話として、アップルが現在、自社の根幹哲学を覆しかねない計画を進めていると報じた。それは外部の力を借りるという選択だ。アップルはOpenAIおよびAnthropicと個別に協議を進めており、両社の大規模言語モデル(それぞれChatGPTとClaude)を新型Siriの基盤として活用する可能性を探っているという。さらにアップルは、これらのモデルを自社の「プライベート・クラウド・コンピュート」環境で動作させるためのカスタマイズも依頼し、すでに社内での試験運用に着手しているとされる。

この構想が現実のものとなれば、アップルにとって前例のない戦略的転換となる。ハードとソフトの統合、自社技術へのこだわりで知られるこのテック大手が、生成AIという数十年に一度の技術革新の波において主導権を握れなかったことを認めるに等しい。計画の目的は、Siriの性能をAndroidスマートフォンに搭載されたAIアシスタントに追いつかせ、「AI後進国」の汚名を返上することにある。Apple Carの開発・生産からの撤退に続くかたちで、また一つの重要市場から手を引くことになる可能性もある。アップル、OpenAI、Anthropicはいずれも本件に関するコメントを控えたが、この報道を受けてアップルの株価は一時2%以上上昇し、市場はこの「現実的な判断」を好意的に受け止めたようだ。

ニュース辞典:AnthropicとClaude

Anthropicは、元OpenAIの社員によって設立された新興AI企業で、OpenAIの最強の競争相手と見なされている。彼らが開発した大型言語モデル、ClaudeはAIの安全性と倫理に焦点を当てていることで知られ、Googleやアマゾンなどの大企業から巨額の投資を受けている。アマゾンはすでにClaudeの技術を新バージョンのスマート音声アシスタントAlexa+で活用している。

内部分裂と士気の低迷

この「Siri救済計画」は、アップル社内におけるAIチームの混乱と権力闘争の存在も浮き彫りにしている。報道によれば、外部のAIモデル導入を検討するプロジェクトは、ソフトウェアエンジニアリング担当上級副社長のクレイグ・フェデリギ氏と、新たにSiriの責任者に就任したマイク・ロックウェル氏が主導しているという。

従来のAI部門責任者であるジョン・ジャンナンドレア氏は、「Apple Intelligence」の発表が市場で冷ややかに受け止められたことや、Siri機能の開発遅延が問題視され、影響力を大幅に失い、事実上チームの中で孤立しているとされる。