医薬品原料の5割が中国依存 ジェネリック薬協会が危機感「薬なければ治療できない」

2025-07-03 12:55
2025年台米経済新局サミット開催、学名薬協会会長の陳誼芬氏(右から2番目)は地元製薬会社が直面する6つの構造的課題を指摘。(魏鑫陽撮影)
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アメリカのトランプ大統領が「米国の薬価を30~82%引き下げる」と「対等関税」の主張を打ち出していなければ、外部は今なお台湾の製薬業界が抱える体系的な弱点を過小評価していたかもしれない。

台湾の製薬産業の現状と課題について、台湾ジェネリック医薬品協会の理事長である陳誼芬氏は率直に「薬は必需品であるにもかかわらず、私たちは最も厳しい経営環境に置かれている」と語り、台湾のジェネリック医薬品業界は「六つの大きな困難」に直面しており、政策面での体系的な改善と支援が急務だと訴えている。

ジェネリック医薬品は使用量の7割を占めるが、薬費の取り分はわずか3割にとどまる

陳誼芬理事長は重々しく「薬がなければ、どんなに優れた医術でも患者を治せない」と訴える。台湾の健康保険における総薬費市場規模は約2,000億台湾元に上るが、ジェネリック医薬品は国内の薬品使用量の7割超を占める一方で、収入は約3割にとどまっている。一方で、少数の先発品メーカーや輸入ジェネリック医薬品は薬品許可証による独占的地位を背景に、薬費の7割を占めている。

また陳理事長は、台湾には2万件を超える薬品許可証が存在し、そのうち83%は台湾企業が保有しているにもかかわらず、高価格の設定や医療現場の好みにより、「輸入された血液製剤の薬品許可証は全体の4%にすぎないが、薬価配分の約50%を占めている」と指摘。これは制度的な不公平を如実に表していると語った。

原材料の中国・インド依存、供給チェーンが非常に脆弱

陳誼芬氏は、台湾の医薬品原料の85%以上が輸入に依存しており、そのうち約5割が中国、3割がインドからの調達であるため、非常に高いリスクを抱えていると警鐘を鳴らす。国際情勢の緊迫化や戦争、感染症の流行、関税の影響といった突発的な事態が発生すれば、台湾は薬が手に入らない深刻な事態に直面する恐れがある。

さらに陳氏は、「経済規模が小さすぎて自国製の原料薬すら使えない。誰も投資しようとしないのが現状だ」と強調した。

台湾製薬業「六大困難」に直面

陳誼芬氏は、台湾の国内製薬企業が直面する6つの大きな構造的課題を次のように指摘した。 (関連記事: 台湾・雲林県、超高齢社会に備え日本の在宅医療を視察 県長が悠翔会を訪問し先進事例を学ぶ 関連記事をもっと読む

  • 研究開発および製造の高度化ハードルが高い:新技術の導入には巨額の資金が必要だが、政府の補助が不足しており、1社あたりの平均的な設備・技術のアップグレードに1億元以上かかる。
  • 原料薬のリスク集中:生産リスクと輸入依存の問題が長年解決されておらず、薬不足のリスクが高い。
  • 国民の信頼度が依然低い:ジェネリック医薬品の品質は安定しているにもかかわらず、患者や医師は依然として「先発品指定」を好む傾向がある。
  • 規制が過度に厳しく重複している:国際基準と比較しても台湾の規制は「加えるばかりで減らさない」ため、運営コストが大幅に増加している。
  • 健康保険による薬価が低すぎる:一般的な注射用液剤は1瓶あたりわずか25元の支給で、生産維持や品質確保に十分な金額ではない。
  • 人材の深刻な流出:研究開発人材の海外流出が続き、人材不足が最大の課題の一つとなっている。