アメリカのトランプ大統領は、現地時間7月2日、エアフォースワンの機内で記者団に対し、関税交渉の期限延長を「考えていない」と明言した。来週7月9日に90日間の猶予期間が終了するなか、日本を含む複数の貿易相手国に対して高関税の再適用や追加課税を行う可能性を改めて示唆した。
なかでも日本に対しては「非常に厳しい」「甘やかされている」と批判を強め、合意に至らない場合、日本製品に対して30%から35%、あるいはそれ以上の関税を課す可能性に言及。この発言を受け、金融市場は敏感に反応し、米株は下落、為替市場では円高が進行した。
今回の発言は、トランプ氏が今年4月に開始した通商政策の一環として浮上したものだ。4月、同氏は各国に対し「相互関税(Reciprocal Tariffs)」の方針を打ち出し、各国が米国製品に課している高関税と同等の税率を米国も課すべきだと主張した。これにより市場は混乱し、一時的に関税措置は90日間の猶予期間が設けられていた。
この猶予が終了する7月9日を目前に控え、トランプ氏は再び強硬な姿勢を見せた。「延長は考えていない」と明言し、交渉相手国に対し「多くの国に手紙を書くつもりだ」と通告。これにより、日本を含む各国との交渉が、事実上の最終局面に入った形となっている。
日本を名指しの圧力、米国産コメと自動車が焦点に
今回の記者会見でトランプ氏は、日本を名指しして批判。特に日米間の自動車貿易の不均衡や、日本が米国産のコメを輸入しないことへの不満を露わにした。「日本と話を続けてきたが、合意に至るかは疑問だ」と述べ、「彼らは非常に強硬であり、理解してほしい。日本は甘やかされてきた」と語気を強めた。
さらに交渉が不調に終われば、日本製品には「30%、35%、あるいはそれ以上の関税が課される可能性がある」とし、「我々には巨大な貿易赤字がある」と警告。米国の対日赤字削減を強く意識した発言であり、日本側への圧力を一段と高める内容となった。
英フィナンシャル・タイムズの報道によれば、米国は4月2日に日本からのすべての輸入品に一律24%の関税を課したが、交渉期間中は一時的に10%に引き下げられていた。今回の発言は、関税が再び24%に戻るどころか、さらに大幅に引き上げられる可能性を示している。
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ニュース小辞典:「相互関税」とは何か?
これはトランプの貿易政策の核心をなす概念の一つである。彼は、ある国が米国の特定の商品に25%の関税を課す一方、米国がその国の同じ商品に2%あるいは無関税しか課していない状況は不公平だと考えている。このため、トランプ氏は、米国も他国に同等の税率を課すべきだと主張しており、これが彼の言う「相互」または「対等」関税である。
石破茂首相の政権は、米国との貿易交渉において安定的かつ友好的な関係を維持しようと努めている。一方で、国内の農業保護を優先する姿勢も崩していない。トランプ氏が今回の発言を行う直前、日本の林芳正官房長官は「関税軽減と引き換えに、国内の農業関係者の利益を犠牲にすることはない」との立場を明確にした。