作家・俳優・歯科医という三つの顔を持つ台湾出身の一青妙さんが、風傳媒の独占インタビューに応じ、最新作『青色之花』への思いや創作背景を語った。『青色之花』は、現代を生きる三人の女性が父親の過去を辿る物語。白色テロ時代と現代台湾を行き来しながら、時代と家族の対話を描き出す。小説に登場する三人の父親は台湾大学の同級生で、1950年代に地質学を学んだ仲間。生前、それぞれの娘に断片的に過去を語っていたが、三人ともすでに亡くなっている。

現代の三人の女性は偶然に出会い、自分たちの父が親友だったことを知る。そこから父親の人生の謎を追い始める──。一青さんは「現代の三人の女性を主人公に据え、過去の時代では若き日の父親たちを描きました。その三人の女性にはモデルがいて、ひとりは私自身です」と語る。

本作は2025年7月24日に刊行されたばかりの一青さん初の本格長編小説。構想から調査、執筆を経て完成まで約10年、実際の執筆には5年を費やした。
東京生まれで幼少期を台湾で過ごした一青さん。父は基隆の顔家出身、母は日本人。歯科医資格を持ち、舞台や映像作品に出演しながら、文学活動や日台文化交流にも積極的に関わってきた。

「歯科医としての訓練は細部への集中力、人の内面に寄り添う姿勢に結びついています。俳優の活動は感情や人間関係の理解を深め、物語を表現する力を育ててくれました。作家としては、そのすべてが土台になっています」

「私の一日は少し変わっていて、朝は歯科医として高齢者を訪問し、午後は俳優として舞台に立ち、夜は静かな時間に執筆する。別々に見える活動も、実はつながっているんです」。現場で人の心と向き合い、舞台で感情を表現し、そのすべてが小説に反映されるという。

物語は「現代の三人の娘の探索」と「父親たちの青春と運命」という二つの時間軸で構成される。過去と現代がまるで対話しているかのように描かれている。
「2013年に初のエッセイ『私の箱』を出版して以来、私は自分のアイデンティティや父の過去を問い続けてきました」。一青さんは二二八紀念館、国家檔案局、大学、親戚や友人を訪ね歩いたが、資料や証言は限られていた。「答えのない問いに突き当たった」と振り返る。
当初はノンフィクションを考えていたが、結末が見えず、最終的にフィクションとして執筆する道を選んだ。「虚構と現実を織り交ぜ、そこに自分の想像や願いを加えて物語にしました」。
「最初は日本語で執筆しました。ちょうどコロナ禍で時間があったので集中できたんです」。初稿は25万〜30万字に及んだが、「全部書きたいことを書いたら、その分量になった」と笑う。「小説には読者の想像の余白が必要」と考え、編集者と推敲を重ね、最終的には約18万字に削った。
作品には、家族の記憶を掘り起こそうとする試みが色濃く反映されている。一青妙さんは、当初は自分が基隆の顔家の出身であることを自覚していなかったという。「自分が基隆顔家の末裔だと初めて気づいたんです。台湾で繰り返し姓を尋ねられる中で、ようやく家族が台湾の歴史の中で果たしてきた役割を理解し始めました。この家族は、一生かけても解き明かせない存在です」