8月15日、日本の終戦から80年を迎え、中国各地で記念行事が行われた。共産党機関紙「人民日報」は3面の目立つ位置に、署名「鐘聲」(中南海の公式見解を示すペンネーム)による論評「正しい歴史観を堅持することこそ、歴史・人民・未来への責任である」を掲載。その中で「日本の一部政治家が台湾問題で度を越した行為を繰り返している」と非難し、日本政府が発表した2025年版「防衛白書」で「中国脅威」を誇張し、台湾に関しても不当な言及をしたと批判した。
人民日報のほかにも、新華社や中国中央テレビが特集を組み、習近平国家主席の「歴史を忘れることは裏切りである」との発言を繰り返し紹介。北京は抗戦勝利80周年の節目を外交宣伝に利用し、大国としての歴史的イメージを再構築するとともに、国内で論争を呼ぶ「歴史虚無主義」や「党史野史」といった風潮に対処する狙いがあるとみられる。
また、日本の中学校で最も採用率が高い歴史教科書についても「戦争加害責任の記述が明らかに弱まっている」と批判。南京大虐殺を「南京事件」と表現し、多くの民間人が犠牲になった事実を曖昧にしていると指摘した。「人数はまだ確定されておらず研究中」とする教科書の記述を問題視し、日本の歴史教育が加害の責任を薄めようとしていると主張した。
こうした終戦記念日に日本批判を展開するのは従来からの手法だが、台湾問題を絡めるのは極めて異例である。以前、「台湾の問題は日本の問題」との発言が「一線を越えた」と注目されたこともあり、今回「台湾問題での越権行為」と公に非難したことは、日本の台湾への姿勢を北京が強く警戒している証左と受け止められている。
論評では日米同盟に名指しはしなかったものの、「周辺の脅威を誇張し、防衛費を大幅に増額し、武器輸出制限を緩和して軍事的な“小さなグループ”を作っている」として、日本の防衛政策の変化を強く牽制。さらに「非核三原則の修正を検討する声が時折聞こえる」などと述べ、日本が軍縮どころか軍拡の道を進んでいると批判した。
中国外交部は定例会見でも「北東アジア情勢を不安定にしている原因は中国ではない」と繰り返し強調しており、米国のアジアでの軍事配備強化に日本が積極的に関与している現状に不満を示している。
さらに、中国の外交部長である王毅氏は、メコン川流域外相会議後の共同記者会見で「日本の一部勢力が侵略を美化し、否定し、歴史を歪曲し、改竄し、戦犯を擁護しようとする行為は軽蔑に値する」と強く批判。「それは自らの恥であり、国連憲章への挑戦であり、戦後国際秩序への挑戦であり、人類社会の秩序全体への挑戦でもある」と断じた。
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