北京観察》終戦80年を外交舞台に 台湾問題を持ち出した対日批判は異例

2025-08-16 16:46
中国の民間学者によれば、北京が終戦記念日に合わせて日本を言論面で批判するのは常套手段だが、台湾問題に言及するのは極めて珍しい。かつて「台湾有事は日本有事」という表現が中国共産党の一線を越えたとされたが、今回の強硬な言葉遣いも、中国が日本の台湾問題への姿勢に強く反発している表れとされる。(イメージ写真/AP通信)
中国の民間学者によれば、北京が終戦記念日に合わせて日本を言論面で批判するのは常套手段だが、台湾問題に言及するのは極めて珍しい。かつて「台湾有事は日本有事」という表現が中国共産党の一線を越えたとされたが、今回の強硬な言葉遣いも、中国が日本の台湾問題への姿勢に強く反発している表れとされる。(イメージ写真/AP通信)

8月15日、日本の終戦から80年を迎え、中国各地で記念行事が行われた。共産党機関紙「人民日報」は3面の目立つ位置に、署名「鐘聲」(中南海の公式見解を示すペンネーム)による論評「正しい歴史観を堅持することこそ、歴史・人民・未来への責任である」を掲載。その中で「日本の一部政治家が台湾問題で度を越した行為を繰り返している」と非難し、日本政府が発表した2025年版「防衛白書」で「中国脅威」を誇張し、台湾に関しても不当な言及をしたと批判した。

人民日報のほかにも、新華社や中国中央テレビが特集を組み、習近平国家主席の「歴史を忘れることは裏切りである」との発言を繰り返し紹介。北京は抗戦勝利80周年の節目を外交宣伝に利用し、大国としての歴史的イメージを再構築するとともに、国内で論争を呼ぶ「歴史虚無主義」や「党史野史」といった風潮に対処する狙いがあるとみられる。

また、日本の中学校で最も採用率が高い歴史教科書についても「戦争加害責任の記述が明らかに弱まっている」と批判。南京大虐殺を「南京事件」と表現し、多くの民間人が犠牲になった事実を曖昧にしていると指摘した。「人数はまだ確定されておらず研究中」とする教科書の記述を問題視し、日本の歴史教育が加害の責任を薄めようとしていると主張した。

こうした終戦記念日に日本批判を展開するのは従来からの手法だが、台湾問題を絡めるのは極めて異例である。以前、「台湾の問題は日本の問題」との発言が「一線を越えた」と注目されたこともあり、今回「台湾問題での越権行為」と公に非難したことは、日本の台湾への姿勢を北京が強く警戒している証左と受け止められている。

論評では日米同盟に名指しはしなかったものの、「周辺の脅威を誇張し、防衛費を大幅に増額し、武器輸出制限を緩和して軍事的な“小さなグループ”を作っている」として、日本の防衛政策の変化を強く牽制。さらに「非核三原則の修正を検討する声が時折聞こえる」などと述べ、日本が軍縮どころか軍拡の道を進んでいると批判した。

中国外交部は定例会見でも「北東アジア情勢を不安定にしている原因は中国ではない」と繰り返し強調しており、米国のアジアでの軍事配備強化に日本が積極的に関与している現状に不満を示している。

さらに、中国の外交部長である王毅氏は、メコン川流域外相会議後の共同記者会見で「日本の一部勢力が侵略を美化し、否定し、歴史を歪曲し、改竄し、戦犯を擁護しようとする行為は軽蔑に値する」と強く批判。「それは自らの恥であり、国連憲章への挑戦であり、戦後国際秩序への挑戦であり、人類社会の秩序全体への挑戦でもある」と断じた。

中国語関連記事

編集:田中佳奈

最新ニュース
<独占インタビュー> 台湾インディーズバンド浅堤ボーカル・依玲さん、初のエッセイ集を刊行
台湾・台中市が「鳥取しゃんしゃん祭」に参加 日台の観光・文化交流を深化
台湾・頼清徳総統が「終戦」を強調 医師で評論家の沈政男氏「親日的な台湾独立の歴史観」
2週間で資産が90億ドル増加?ソフトバンク孫正義氏、AI熱で日本長者番付2位に浮上
TICAD9開幕目前に東大教授の遠藤貢氏が講演 アフリカの現状と国際関係、日本の関与のあり方を分析
第9回アフリカ開発会議(TICAD9)、8月20日から横浜で開催 日ア共創の新時代へ
ゲッティイメージズ、「サステナビリティは企業が主導すべき」と日本人の8割が回答 ビジュアル表現のポイントを提示
日本の歴史学者:日本政府が第二次世界大戦の戦争犯罪に責任を負いたがらない
オーストラリアで中国系「慰安婦」銅像除幕 戦争の記憶継承
台北観光スポット》台北101の魅力再発見 高さごとに変わる絶景の表情
参政党・神谷代表が靖国参拝 終戦80年の日に「日本軍の中国侵略は虚構」発言も再浮上
大阪「We TAIWAN」終盤戦、台湾発「魔法のテント」大阪に上陸 残り5日でほぼ満席、没入型物語体験が話題
終戦80年 全国戦没者追悼式 石破首相「反省」強調、天皇陛下は恒久平和呼びかけ
陸文浩の視点:米露首脳がアラスカで対峙、中露海軍の合同巡航が直撃
中国有力学者「武力統一ならTSMCは国有化」 一国二制度は適用せず
夏一新の視点:台湾・頼清徳総統、米国の20%関税、台湾に衝撃 頼政権の後手対応に批判噴出
風評:頼政権の「二国論」憲法解釈、矛先は中国出身配偶者に 職解任も
舞台裏》台湾・国民党主席選、台中市長が不出馬 反朱立倫派は対抗馬擁立へ
驚愕!エアアジア航空便が仁川ではなく金浦に着陸、乗客と乗務員も驚く
天気予報》再び台風発生か 専門家「ダブル台風」形成の恐れ 週末は猛暑の可能性
H20輸出許可の裏で米中駆け引き激化 NVIDIAに中国使用制限の打撃
トランプ・プーチン会談、アラスカで15日開催 トランプ氏「数分で交渉の見通し判断」
トランプ政権、親中批判から一転 インテル出資を極秘協議 TSMC誘致に続く半導体戦略か
神社の踏切で台湾人女性死亡 観光撮影中に列車と衝突か
親台派日本紙が賴清德氏を批判 大規模リコール「与党掌握」の予測外れる
北京観察》終戦記念日前夜、靖国参拝が外交問題に 日中関係に再び亀裂か
台湾・柯文哲氏の拘置所生活 獄中で軍事要人の著書を精読 書き込みが示す次の一手
「領土割譲和平」は誰の発案か 『エコノミスト』が暴く米特使の失策と交渉悪化の経緯
長崎原爆式典、台湾代表席めぐり波紋 「NGO区」報道に市が反論
トランプ氏、プーチン氏に停戦迫る構え 米露会談はアラスカ軍事拠点で 領土交渉権はゼレンスキー氏に
中露の極秘軍事協定が流出 プーチン氏、中国の台湾侵攻演習支援か 8年越し計画の存在明らかに
台湾外交部長・林佳龍氏が高市早苗氏と会談 日本政権交代を見据えた賭け 中国反発で外交リスクも
トランプ氏、ノーベル平和賞受賞の可能性?元側近が明かす国務省のプレッシャーと各国の強力な推薦
FPCJが50周年記念ロゴ公募開始 年齢・国籍不問、締切は2025年9月16日
米露首脳会談が世界情勢に影響か!退役将軍が台湾に言及 米台貿易「前向きシグナル」:合意達成のタイミング
国際ニュース特集》北京、企業にNvidiaチップ購入の自粛要請。70万個の大型注文取消しか―なぜ中国はNvidiaにひかれつつも恐れるのか?
関西万博が陸の孤島化 地下鉄全線ストップで帰れず 来場者が会場内で一夜 猛暑で熱中症相次ぎ33人搬送
天気予報》台風11号去って猛暑到来 台湾南部は36℃超え、午後は中南部で雷雨・大雨、熱中症警戒
トランプ氏、ワシントン警察を電撃接管し州兵800人派遣 大統領に権限はあるのか問う声
台湾・内政部長の「二国論」発言火消しか?頼清徳氏による両岸関係の微調整に兆し
中国の「レアアースの都」に潜入:世界を脅かす武器を握る中国、その対価とは?
台湾・環島中に「5分間の空白」 深夜の台3線で起きた「時間逆行」現象、黒い霧と血のような標識と謎のパトカー
米国元国務顧問が提言 台湾は米軍依存を脱し、「中華民国」色を薄め経済新枠組みで自立へ
台湾の治安が悪化し国際的ニュースに! 4つの観光地で多発するスリ、日本台湾交流協会が警告
また戦場記者が殉職!イスラエル『アルジャジーラ記者はハマス』と非難し標的殺害 国際機関:根拠のない中傷だ
虹とロクシタンの香りで涼感倍増!ホテル椿山荘東京の「雲海スプラッシュ」が7月から期間限定開催
AKOMEYA TOKYOに令和7年度産新米登場!沖縄から新潟まで厳選7銘柄を順次販売
JR東日本が8月18日からフェア開催、エキナカにカレー集結!スパイス香る限定メニューも
東ハト、ハロウィン限定スナックを8月18日発売!おばけ型や黒色スナックで遊び心満載