中国共産党の元老が習近平に逆らえない理由 反腐敗で人脈も影響力も断たれた構造

習近平氏は米国側の発言に耳を傾けながら、ほほ笑みを浮かべている。(写真/米ホワイトハウス公式サイト)
習近平氏は米国側の発言に耳を傾けながら、ほほ笑みを浮かべている。(写真/米ホワイトハウス公式サイト)
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中国の最高指導部の意思決定は長年ブラックボックスとされてきたが、習近平氏が共産党の「集団指導体制」を大幅に弱め、個人支配色を強めたという認識は国内外でほぼ共有されている。では、習氏はどのようにして権力集中を実現したのか。党内の長老たちは、なぜ抑止力として機能しなかったのか。

かつて中共中央党校の機関誌『学習時報』で記者・副編集審査官を務め、2018年に中国を離れて米国に移住し、中国政治の分析を続けている鄧聿文氏は、その理由を「今の党内長老には建国期の元老ほどの威望がなく、さらに習氏の反腐敗キャンペーンによって党内の人脈が断たれたため、長老たちは習氏に対抗できなくなった」と指摘する。

米誌『フォーリン・アフェアーズ』は14日、鄧氏による『中国保守派の終焉』(The End of China’s Old Guard)を掲載し、党内元老が習氏を制御できなくなった背景を論じた。鄧氏はかつて党系メディアで要職にあったが、胡錦濤・温家宝政権への批判を理由に署名権を剥奪され、その後職を失った人物だ。2018年に渡米後は『ニューヨーク・タイムズ』に「習近平への七つの忠告」を寄稿し、「一党・一個人の利益のために国家と民族を犠牲にしてはならない」と訴えた。現在も米国で中国政治の分析を続け、2023〜25年にはユーラシア・グループで中国政治のシニア顧問を務めた。

鄧氏は記事で、過去1年の北京では習氏に関する噂が飛び交っていたと指摘する。権力を失った、健康悪化で影武者が出ている、といった類いの話から、党内長老たちが実質的に権力を握っているという説、かつての自由派や軍保守派が結託して習氏の排除を図っているという荒唐無稽なものまで、さまざまな噂が流布していた。

2025年10月30日、アメリカ大統領トランプと中国国家主席習近平が韓国釜山で会談。(AP通信)
2025年10月30日、米大統領トランプ氏と中国国家主席習近平氏が韓国・釜山で会談した。(写真/AP通信)

こうした奇妙な噂は、権威主義体制では珍しいことではなく、大きな政治イベントの前には特に増える。中国共産党第20期四中全会では今後5年の方向性が示されたものの、誰が実権を握り、どの意図で意思決定が行われているのかが明確に見えないことが、憶測を生む土壌になっている。共通しているのは「影響力を持つ元老の存在」を前提にしている点だ。表舞台を退いたとはいえ、依然として習氏を揺さぶり得るほどの力を持っていると受け止められているからである。

この見方が広がるのは、実際に元老たちが歴史的に大きな役割を果たしてきたからだ。習氏の統治に失望する人々は、鄧小平氏が1970年代に急進路線を転換させたことや、1990年代に経済改革を推進した経験に重ね、「長老が再び政治の軌道を戻してくれるのでは」と期待を抱きがちである。曖昧で閉ざされた中国政治を理解する上で「元老政治」は便利な説明装置でもある。

だが鄧氏は、今日の中国では長老の力は大きく低下していると断じる。習氏は長老が影響力を及ぼす際に用いてきたルート――人事への介入や軍とのパイプ――を徹底して封じてきた。さらに、革命を経験した第一世代のような道徳的権威を持つ人物は既におらず、制度的な権力の抑制メカニズムも機能していない。その結果、習氏に対しブレーキをかけ得る存在はほぼ消滅したという。

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