トップ ニュース 中国の水素エネルギー攻勢が加速、「二つの手段」で世界覇権を狙う? 専門家が警鐘:米国は二本柱戦略で対抗すべき
中国の水素エネルギー攻勢が加速、「二つの手段」で世界覇権を狙う? 専門家が警鐘:米国は二本柱戦略で対抗すべき 新疆は中国における水素エネルギー産業の主要拠点の一つとされる。写真は、新疆兆聯清通エネルギー技術が伊寧市スラム工業団地で運営する水素充填試験所で、水素エネルギー牽引車が充填を行っている様子。(写真/新疆人民政府サイトより)
米国のトランプ政権が化石燃料を重視し「エネルギー主導権」の奪還を掲げるなか、中国は再生可能エネルギー分野ですでに大きく先行している。太陽光と風力のサプライチェーンで圧倒的な優位を持つだけでなく、水素分野でも世界最大の生産国となり、グリーン水素の供給量は世界の半分近くを占める。電解槽の輸出でも首位を維持している。
中国が水素産業で急速に地位を築いた背景には、国家主導の政策がある。大規模な補助金でコストを下げ、過剰生産で競合を圧迫し、設備輸出と融資を結びつけながら自国基準の国際化を推し進めている。
電解槽市場を席巻:中国が生産能力と価格で世界を支配 低排出の水素エネルギーはエネルギー転換の要であり、脱炭素化が難しい鉄鋼・石油化学・海運・航空などの産業にも利用可能だ。長期のエネルギー貯蔵にも活用でき、電力網の安定性向上にもつながる。世界の低炭素水素市場は2024年の263.9億ドルから、2034年には1131億ドル規模へと拡大すると予測されている。
中国の電解槽産業は一貫した国家戦略のもとで急成長した。2019年に国務院が初めて「水素ステーション」を政策文書で扱って以降、水素産業は戦略的な新興分野として位置づけられた。2022年の「水素エネルギー産業中長期発展計画(2021–2035)」では、2025年までに低炭素水素の年間生産量10万〜20万トン、燃料電池車5万台、水素ステーション体制の整備が掲げられた。今年の中共四中全会では「十五五計画」が承認され、水素は量子技術や核融合、ブレイン・コンピュータ・インターフェース(BCI)と並ぶ「次世代の核心産業」と位置づけられた。今後10年で水素産業が中国ハイテク製造の中核エンジンになる可能性が示唆された形だ。
補助金から輸出戦略へ 水素サプライチェーンを地政学ツール化する中国 欧米企業は長らくプロトン交換膜(PEM)電解槽で技術優位を保ってきた。PEMは再エネの変動性に対応しやすい一方、コストが高い。しかし中国はそのギャップを急速に縮めている。国家による大規模補助で中国製PEM電解槽の価格は2022〜2024年の2年間で40%下落した。
報告書では、「中国製の電解槽は価格が低いものの効率は相対的に劣る。電力が余剰気味で価格の安い地域ではAWEが依然有効だが、より厳しい運用条件には向かない」と指摘する。
現在、中国の電解槽は30を超える国に輸出されており、ナミビアのグリーンアンモニア大型案件にも採用されている。安価な機器と融資支援を組み合わせることで、中国は水素サプライチェーンそのものを「地政学的な影響力」として活用し始めている。
技術差が急速に縮まる中 欧米は革新と連携による対抗強化へ 米戦略国際問題研究所(CSIS)の専門家は、11月10日に米誌『フォーリン・ポリシー(Foreign Policy)』で 寄稿 し、中国の台頭に対して欧州が警戒を強めていると指摘した。太陽光パネルやEV向けバッテリー産業で経験した“製造業空洞化”の再来を避けるべく、欧州は水素分野の防衛策を急いでいる。欧州水素銀行(European Hydrogen Bank)は、中国製設備の比率を25%以下に制限し、域内製造のレジリエンスと技術主権を確保しようとしている。
CSISの専門家は、水素製造の競争力強化と並んで、持続的な技術革新こそが多様で強靭なサプライチェーンの構築に不可欠だと強調する。2005〜2020年の間、米国・ドイツ・日本は電解槽関連の国際特許出願件数でトップ10に入り、世界全体の約3分の2を占めていた。一方で中国のシェアは3%にとどまり、当時は国内市場向けに注力していたことが要因とされる。
しかし2022年までに状況は一変した。中国は水素関連技術、特に水素製造技術の特許保有で世界トップに躍り出た。電解槽の複雑なスタック設計やエンジニアリング、PEM電解槽のスタック部品、コンプレッサー製造といった高度技術には未だ弱点が残るものの、「西側を技術面で追い越すのは時間の問題」と見る専門家も増えている。
それでもCSISの専門家は、米国には「二本柱」の戦略で対処する余地があると指摘する。:
鉄鋼や石油化学など水素需要の大きい産業分野でグリーン水素の大規模生産を進め、「アンカー・プロジェクト」として国内の電解槽生産能力の育成を後押しし、将来の輸出機会を切り開くことだ。とりわけ欧州、日本、韓国は2050年に向けて大量の低炭素水素輸入を見込んでおり、米国製技術にとって潜在的な市場となり得る。 米国自身を同盟国に対する技術供給国として位置づけ、輸出市場向けの製造能力や高度な設備への投資を強化することだ。その際、国際開発金融公社(DFC)を活用して、米国製電解槽の新興国市場への展開を後押しすることが提案されている。論考はさらに、米国が中東と東アジアを戦略的なパートナー地域とみなし、サウジアラビアの「NEOMグリーン水素プロジェクト」に類する協力モデルを参考にすべきだと提言している。 革新、製造基盤の強化、そして国際市場戦略という三つの柱を同時に推進することができれば、西側諸国は透明性と弾力性を備えた水素サプライチェーンを確立でき、エネルギー安全保障と脱炭素の実効性を担保できる。中国の水素エネルギー急拡大は、単なる市場競争ではなく、産業主権や気候ガバナンスの秩序そのものを揺さぶる挑戦でもある。
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