高市早苗首相は先週の国会答弁で、「台湾有事」(台湾海峡で武力衝突が発生する状況)が起きた場合、日本の安全保障法制における集団的自衛権の行使要件である「存立危機事態」に該当する可能性があるとの見解を示した。この発言は中国の強い反発を招いたほか、米国のトランプ大統領や国務省は、高市氏の見解を積極的に支持する姿勢を示さなかった。
アメリカ国務省は高市首相の発言を支持しないのか
『日本経済新聞』の報道によれば、米国務省の報道官は11月12日、高市氏が述べた「台湾有事は日本の存立危機事態となり得る」という見解について声明を発表し、「米国は台湾海峡の平和と安定を維持することに取り組んでおり、双方による一方的な現状変更に反対する」と強調した。
国務省報道官は、『日本経済新聞』の取材に対し、米国は台湾関係法に基づき台湾の自衛能力維持を支援し、武器供与も継続していると説明。中国と台湾は不可分とする立場に異議を唱えるものではないとしつつ、歴代政権が「一つの中国」政策の下で台湾の安全保障に関与してきた方針を維持していることを示した。
さらに同報道官は「米国は両岸の対話を支持し、脅迫のない環境で、双方の人々が受け入れ可能な平和的手段によって意見の不一致が解決されることを望む」と述べた。『日経』は、米側が高市氏の発言について明確な評価を避けた形だと指摘している。

中国の強い反発を意識し、米国は慎重姿勢
高市首相は11月7日の国会答弁で、中国本土が台湾に武力攻撃を仕掛け、さらに台湾支援に向かう米軍に対しても武力を行使した場合、「存立危機事態に当たる可能性がある」と述べた。これに対して中国は、「一つの中国」原則に重大に反する発言だとして、「内政干渉」などと強く批判している。
『日本経済新聞』の報道によれば、トランプ大統領は10日、米FOXニュースのインタビューで、高市氏の台湾有事発言や、それに対する中国の反応について問われたものの、中国批判は避けたという。
さらに、大統領は「中国が米国の友好国に当たるか」と問われた際、貿易不均衡を理由に「米国を貿易面で最も利用しているのは中国より同盟国だ。多くの同盟国は必ずしも『友人』と言えない」と述べ、台湾情勢への言及を避けた。
報道はまた、歴代米政権が重視してきた「戦略的曖昧さ」を説明するとともに、バイデン前大統領が過去に「台湾有事では米軍が関与する」と発言し論争を呼んだ経緯にも触れている。トランプ氏は一方的に「自分の任期中、中国は台湾に侵攻しない」と主張したが、具体的な根拠は示していない。
米保守系シンクタンク「ハドソン研究所」のパトリック・M・クローニン亜太安全保障部長は、「日本の存立を脅かす状況であれば、集団的自衛権の行使は受け入れられ得る」と述べる一方で、外交上の観点から「高市氏が公の場で仮定のシナリオに踏み込んだことは、必ずしも賢明とは言えない」と指摘した。

米紙:高市政権発足から1カ月足らずで「日中関係が悪化」
米紙『ワシントン・ポスト』は12日、高市氏を「扇動的な民族主義者で、対中強硬派」と評し、就任から1カ月足らずで「日中の複雑な関係が既に悪化し始めている」と報じた。
また同紙は、台湾有事を巡る日本の関与について、日本と米国が長年維持してきた「戦略的曖昧さ」から、高市氏が逸脱したように見える点も、今回の発言が注目を集めた一因だと分析している。
編集:柄澤南 (関連記事: 「台湾有事」発言の波紋 高市早苗首相に反発する中国と動き出した中共艦隊 | 関連記事をもっと読む )
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