台湾の副総統・蕭美琴(シャオ・メイチン)氏が11月7日、ベルギー・ブリュッセルの欧州議会で開かれた「対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)」の年次サミットに出席し、演説を行った。与党・民進党(DPP)支持者からは「外交的突破」として称賛の声が上がる一方で、野党側からは批判も噴出している。
台湾の政治評論家・黄揚明氏は、YouTube番組『鄉民監察院』で「実はこの件こそが『藍白合(国民党と民衆党の協力)』の本当の不安要素だ」と指摘。「この件は、民衆党が国民党と必ずしも手を組む必要がないことを示している」と分析した。
「緑白合作(民進党と民衆党の協力)」がなければ実現しなかった?
黄氏によると、もし民進党と民衆党の「緑白合作」がなければ、台湾はそもそもIPACに参加することができなかったという。つまり、蕭副総統の欧州議会での演説は、民衆党の存在があって初めて実現したものだ。
この背景には、民衆党の陳昭姿(チェン・ジャオズー)立法委員(国会議員)の役割がある。陳氏はIPAC台湾支部の共同代表を務めており、蕭副総統から直筆の感謝状を受け取ったことをSNSで公開している。
黄氏は、「IPACの加盟ルール上、議員として参加する必要があり、しかも政治的に対立する2つの政党が共同で加入しなければならない」と説明。民進党と時代力量(ニューパワーパーティー)のように、政治的立場が近い政党同士では認められないという。そのため、2024年に民衆党の陳氏が加わったことが「鍵」になったと述べた。
「柯文哲が主導した」加入プロセス
さらに黄氏は、民衆党の前党首・柯文哲(カ・ブンテツ)氏が昨年7月、「私たちはついに参加した」と発言していたことを指摘し、「これは柯文哲主導の結果だ」と断言した。その上で、「この件は、昨年、蔡英文前総統が柯文哲氏と総統府で会談した際に話し合われた可能性が高い」と推測している。
「藍白合(国民党と民衆党の協力)」の最大リスクは「外交の独立性」
黄氏は、「蕭美琴の欧州訪問こそ、藍白合にとって最大のリスクだ」と強調。これは「民衆党が国民党と組まなくてもやっていける」ことを意味していると述べた。
また、黄氏はこう続けた。「蔡英文前総統は、民衆党を取り込み、外交の一端を担わせる意図があった。しかし、賴清徳総統に政権が交代してからは『誰でも対応』になってしまった。鄭文燦氏にも、柯文哲氏にも接触した結果、民衆党支持者の多くが民進党に強い反感を抱くようになり、結局、民衆党は国民党との協力に追い込まれた。」
民衆党支持者には複雑な感情
黄氏は、IPACでの連携を主導した陳昭姿氏の存在が、民衆党支持層の間で賛否を呼ぶと見ている。「民衆党支持者の中には、『なぜ民進党と協力するのか』と納得できない人も多いだろう。しかし、柯文哲氏は昨年すでにこの方針を支持していた」と述べた。最後に黄氏は、「蕭美琴の欧州演説を過剰に神格化する必要はない。ただし、批判しすぎる必要もない」と語り、冷静な評価を呼びかけた。
編集:梅木奈実 (関連記事: 台湾副総統・蕭美琴氏が欧州議会で歴史的演説 「極秘訪欧」の舞台裏、本人も直前まで知らず 「台湾・EU関係が新段階へ」と外交筋 | 関連記事をもっと読む )
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