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中国外交官が高市早苗氏を「首を斬る」と威嚇 英シンクタンク研究者「国際社会は台湾か中国かの選択を迫られている」 日本の首相である高市早苗氏(写真)が中国の大阪総領事である薛健氏にSNS上で「首を切る」と脅迫された。(写真/AP通信)
英国王立国際問題研究所(Chatham House)の韓国財団研究員で、オックスフォード大学政治学講師のエドワード・ハウエル氏が、台湾海峡情勢と東アジアの安全保障環境をめぐり新たな緊張が生じていると指摘した。発端となったのは、日本の高市早苗首相が中国駐大阪総領事の薛剣氏からSNS上で「斬首」と脅迫されたとされる問題で、ハウエル氏は北京の対外姿勢が一段と強硬になっていることを示す事例だと分析している。
ハウエル氏は、薛氏が投稿を削除した後も「一外交官の逸脱行為」で片づけられる問題ではないと強調した。いわゆる「戦狼外交」と呼ばれる過激な対外発信は、近年の中国外交の特徴として広がっており、台湾統一を最優先課題とみる北京にとって「レッドライン」に触れる発言は強い反発を招きやすいという。高市氏が「中国が台湾へ武力攻撃に出れば、日本も存立の危機に直面する可能性がある」と述べた点については、安全保障上の現実を踏まえた発言だとしたうえで、中国側が威圧的な表現で応じた背景には、外交的な抑制が働かなくなっている現状があるとの見方を示した。
習近平氏、国民党に「統一推進」を改めて要求 ハウエル氏はまた、習近平国家主席が台湾野党・国民党の新代表に選出された鄭麗文氏に対し、「国家統一の推進と共通発展の促進」を公開の場で求めた発言にも触れた。どのような形の「統一」を指すのかは明白で、「空気を読む必要すらない」と指摘。国民党が一貫して「親中」路線を掲げてきたにもかかわらず、この発言には祝意よりも北京の要求が前面に出ていると分析した。
さらに中国軍の動向については、2027年、2035年、2049年という三つの節目が単なるスローガンではなく、党規約や国防計画に明記された近代化の工程に組み込まれていると説明した。人民解放軍創設100年にあたる2027年までに能力強化を進め、2035年には「西側水準」に相当する軍の成熟度を目標とし、2049年には「世界一流軍隊」の実現を掲げている。背景には「台湾統一を可能にする軍事力の確保」という明確な意図があるものの、能力の有無と実際の行動は別であり、北京の判断はコストとリスクの計算に左右されるとした。
ハウエル氏は、中国による台湾侵攻をめぐっては全面的な武力行使よりも、「封鎖」がより現実的な選択肢として研究されてきたと指摘する。封鎖であれば上陸作戦に踏み切らずとも「開戦していない」と主張しつつ、台湾経済を急速に麻痺させることが可能になるためだという。ただ、その場合でもグローバル・サプライチェーンへの影響は即時に及び、台湾が世界の先端半導体の9割超を供給していることを踏まえれば、供給停止はApple、NVIDIA、Teslaなど主要企業の事業を直ちに停滞させると述べた。日本と韓国はエネルギー輸送の9割を南シナ海に依存しており、輸送が遮断されれば両国経済に直接的な打撃が及ぶ可能性があるとして、高市氏の「存立の危機」という表現は地政学的現実を反映したものだと説明した。
国際社会は「台湾への脅威を未然に防ぐ」段階へ ハウエル氏は、日本の戦略的立場についても分析を加えた。高市早苗首相の台湾に対する安全保障上の姿勢は、従来の日本の指導者と比べても踏み込んだ内容だとし、日本が台湾の半導体や部品供給に高度に依存している現実を指摘した。また、日本のエネルギー輸入は南シナ海の航路に大きく依存しており、地政学的リスクを無視できない構造にある。日本政府が2022年の「国家安全保障戦略」で「台湾有事は日本有事」と明記したことは、政策上、日本が台湾問題に「距離を置く」という選択肢を事実上取り得ないことを示していると述べた。
一方、英国に関しては、台湾海峡が地理的に遠い存在として受け止められがちだが、ハウエル氏は、英国のスマートフォンや自動車、軍事装備などが台湾製半導体に支えられている点を強調した。中国は英国の第4位の貿易相手国にあたり、台湾で供給網が寸断されれば英国のインフレや雇用状況にも直結すると警告している。また、鄧小平氏がかつてサッチャー首相に「香港は午後にも取り戻せる」と告げた逸話を引き、中国が領土を力で奪取する能力を持つことは歴史が示しているとしたうえで、その代償は国際的信頼の喪失であり、この構図は台湾問題にも当てはまると分析した。
さらにハウエル氏は、国際社会の役割について「台湾への脅威に対処するのではなく、脅威そのものを未然に阻止することだ」と述べた。武力衝突を回避しつつ中国の行動を抑止するためには、経済、エネルギー、金融、軍事といった各分野で中国の行動コストを引き上げる取り組みが不可欠だと指摘。民主主義陣営が十分な決意と結束を示すことで、北京は軍事的冒険に伴うリスクを再計算せざるを得なくなるとの見方を示した。
台湾問題は21世紀の最重要課題の一つ 記事の締めくくりでハウエル氏は、台湾問題は中国の内政問題にとどまらず、「21世紀における最も重要なグローバル安全保障上の試金石」だと強調した。日本の高市早苗首相が立場を明確にしたように、各国も自らの選択と向き合わざるを得ない局面にあると述べた。
ハウエル氏は現在、オックスフォード大学で政治学を教え、英国王立国際問題研究所の韓国財団研究員を務めている。著書に『北朝鮮とグローバル核秩序』があり、北朝鮮や東アジアの安全保障に関する研究を長年続けてきた。BBC韓国語サービスの制作にも携わった経験を持つなど、英国でも数少ない北東アジアの地政学に精通した若手研究者として知られている。
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