トップ ニュース トランプ関税の行方に各国が翻弄 米国が台湾に最大5500億ドル投資を要求か、通商交渉は不透明なまま
トランプ関税の行方に各国が翻弄 米国が台湾に最大5500億ドル投資を要求か、通商交渉は不透明なまま 行政院副院長・鄭麗君氏はかつて、「現段階の関税交渉の焦点は、米国側が我々に対して投資拡大とサプライチェーン協力を期待し、我々は232関税の優遇措置と相互関税の再調整を求め、元の税率を上乗せしないことだ」と述べた。(写真/羅立邦撮影)
米連邦最高裁がトランプ大統領の関税措置の合法性を厳しく審理する一方、ホワイトハウスの大統領執務室(オーバルオフィス)では、世界を巻き込む通商交渉が全速力で進んでいる。だが、米メディア『Politico 』は12日、9人の判事がどんな最終判断を下そうとも、各国は関税の締め付けが強まる前に、わずかな生存余地を確保しようと必死に「交渉の席」を求めていると指摘した。
台湾も例外ではなく、米国側から最大5500億ドル(約85兆円)規模の投資を求められているという驚くべき話も伝わる。ただ、事情に詳しい関係者でさえ、台米間の協議が具体的な合意に至る時期については見通せていない。
欧州の小国の高官で、国家戦略上の理由から匿名を条件に取材に応じた人物は「扉はほんのわずかしか開いていない。私たちの目標は、その隙間にどうにか足をねじ込むことだ」と『Politico』に明かした。その切迫した心情は、いま多くの国々が共有しているものでもある。最高裁の判断がどう転んでも、まだホワイトハウスと合意に至っていない国々は、すでに協定を結んだ「先行組」に追いつかなければならず、少なくとも各国が勝ち取った「最良の税率」だけは確保したいとの思いに駆られている。
米連邦最高裁は先週の口頭弁論で、トランプ政権が1970年代の「国際緊急経済権限法(IEEPA)」を根拠に関税を課した範囲について、全体として懐疑的な姿勢を示した。トランプ氏はこの法律を使い、米国が「移民問題やフェンタニル密輸」という緊急事態に直面していると主張して、カナダ・メキシコ・中国からの輸入品に追加関税を課した。今年夏には、さらに「貿易赤字」そのものが国家の緊急事態だと位置づけ、主要な貿易相手すべてに「相互関税」を発動した。
ただし、この司法審査には限界がある。訴訟は、トランプ政権が鋼鉄・アルミ・自動車・自動車部品・木材などの重要産業を対象に実施した十数件の貿易調査には踏み込んでいないからだ。これらの調査には別の法的根拠があり、その結果、多くの輸入品に高い関税が課された。こうした関税もまた、トランプ政権が交渉の扉をこじ開けるための「武器」として機能し、欧州連合(EU)、韓国、日本といった輸出国を交渉の場に引きずり出した。特に自動車輸出国は、トランプ政権がちらつかせた25%の高関税に耐えられず、それぞれ米国と個別に合意した経緯がある。
米国の前副通商代表でアジア専門家のウェンディ・カトラー氏は、各国が急いで交渉を進める理由について「自動車や医薬品のように、すでに低い関税を確保した競争相手に後れを取ることへの強い危機感がある」と分析する。カトラー氏はさらに、各国には「法律がどう転ぼうとも、関税は何らかの形で残る」という強い確信があり、最高裁でトランプ関税が争われているにもかかわらず、各国が交渉のペースを緩めている兆しはまったく見られないと指摘している。
スイスに起こった急襲 『Politico』によれば、世界各国が一斉に交渉に走る背景には、それぞれ異なる計算があるものの、いずれもトランプ氏の通商政策下で生き残りを図ろうとする切迫感が共通している。たとえば永世中立国スイスは、今年8月にほとんど予告もなく最大39%もの「相互関税」を課され、7月にEUが米国とまとめた協議結果の2倍以上という重税に直面した。精密機器などスイスを代表する産業には壊滅的な衝撃となり、酪農家にも混乱が広がった。
こうした中、最高裁が関税訴訟を審理していたのと同じ週に、ロレックス(Rolex)のCEOをはじめとするスイスの経済界トップがホワイトハウスでトランプ氏と会談し、交渉は再び勢いを取り戻したようだ。米通商代表部のジェイミソン・グリア氏は、その後「話し合いは進展している」と認めている。スイス米国商工会議所のラフル・サハガルCEOも、「このタイミングを活かし、新しい空気を注ぎ込むことで、数週間以内に何か成果を得られないか期待している」と語った。
サハガル氏は、仮に連邦最高裁が最終的にトランプ氏の「相互関税」を退けたとしても、「関税マン」を自称する米大統領が、海外からの輸入品に課税する別の仕組みを必ず探し出すだろうと見ている。スイス側がさらに懸念しているのは、同国の基幹産業である製薬分野が、特定産業向け関税の対象になりかねないことで、このタイプの関税は今回の最高裁審理の結果とは無関係に発動可能だ。
またサハガル氏は、トランプ政権が法廷で敗れるリスクや、将来あらためて世界的な関税措置を導入する場合に手続きが煩雑化する可能性を見据え、むしろ年末にも予想される最高裁の判断が下る前に、二国間合意をできる限り「固めておこう」と急いでいるのではないかと分析する。
こうした見方に対し、ホワイトハウスのクシュ・デサイ報道官は『Politico』 に対し、政府の立場は一貫しており、「不均衡な」貿易取り決めを是正し、米国の労働者を損なう外国の貿易障壁を取り除くという目標を守り抜く姿勢を改めて強調した。
デサイ報道官は強い口調で、「現政権はこの公約の実現に全力で取り組む。我々の貿易相手は、根拠のない「予兆」を読み解こうとするのではなく、政府と協力して問題を解決すべきだ」と述べている。
台湾からの反応は依然としてない 交渉に詳しい関係者によれば、台北がより深刻に懸念しているのは、米商務省が別の法律に基づいて進めている調査で、台湾の半導体産業に対し、別枠の懲罰的関税が科される恐れがあるという点だ。現在の米台交渉で焦点となっている関税率の議論では、米国が日本や韓国と同様に、台湾にも数千億ドル規模の対米投資を求めていることが重要な条件になっている。ある関係者は、その投資額は「韓国の3500億ドルと日本の5500億ドルの中間になる」と話す。
『Politico』 は、もし米政府の閉鎖(シャットダウン)が早期に解消されれば、台北は今月末までに合意をまとめたい意向だと伝えている。しかし米台協議の事情に詳しい別の関係者は、トランプ氏が貿易交渉で土壇場の大幅な方向転換を繰り返してきたことを踏まえ、「トランプが最終的にいつ同意するのか、予測するのはもう諦めた」と嘆いている。
ニューデリーからハノイまで例外なし トランプ氏が引き起こしたこの通商の嵐のなかで、多くの国はいまも交渉の行き詰まりから抜け出せずにいる。米国とインドは、トランプ政権下で課された50%の高関税を引き下げる協議をなお続けているが、米国産農産物の市場アクセスや、関税をてこにロシア産原油の輸入停止をインド側に迫る問題などをめぐり、大きな溝が横たわっているとされる。ただ、トランプ氏は最近、インドがロシア産原油の購入を「大幅に減らした」と述べ、両国が合意に近づいていることをほのめかした。
ベトナムもまた、自国に課されている20%の関税引き下げを求めており、その交渉は連邦最高裁での審理が進む中でも止まっていない。グエン・ホン・ディエン工工商相は新たなラウンドの協議のため、すでにワシントン入りしている。匿名の関係者は、法的な不確実性があるにもかかわらず双方が定めた交渉日程を維持しようとしている姿勢の表れだと指摘する一方で、「今回のラウンドで最終的な決着がつく見通しはない」とも明かした。
一方、西半球では、中米諸国を含む経済圏が、関税の影響を受けやすい鉄鋼・アルミ・銅などの産業を抱えることから、トランプ政権との接触を活発化させている。パラグアイの交渉事情に通じた政府関係者は『Politico』 に対し、同国としては対米牛肉輸出の拡大を確保したい考えで、現在の協議は「技術的な細部」を詰める段階にあり、「間もなく進展があるだろう」と語った。
米通商代表のジェイミソン・グリア氏は先週、米FOXの番組でインタビューに応じ、「先週はアジアで、多くの東南アジア・東アジア諸国と彼(トランプ氏)が合意に達した。今月は、西半球やその他の地域でも同じ光景を目にすることになるだろう」と述べた。
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