頼清徳総統が30年でノーベル賞3人輩出を宣言 日本との「差が開いた100年」に学者が警鐘

2025-11-13 13:00
中研院院士の陳培哲氏は、台湾の学術文化が「職業化」しており、基礎科学への信仰や文化的自信に欠けていると指摘。「このような大学からはノーベルの花は咲かない」と述べた。(写真/顏麟宇撮影)
中研院院士の陳培哲氏は、台湾の学術文化が「職業化」しており、基礎科学への信仰や文化的自信に欠けていると指摘。「このような大学からはノーベルの花は咲かない」と述べた。(写真/顏麟宇撮影)
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台湾総統・頼清徳氏は「2025総統科学賞」授賞式で「333ノーベル計画」の始動を発表し、今後30年間で台湾が物理、化学、医学の3大分野で少なくとも3人のノーベル賞受賞者を輩出するという大志を抱いた。日本が2000年以降22人のノーベル賞受賞者を輩出しているのに対し、台湾は1976年の丁肇中氏(成大卒)、1986年の李遠哲氏(台大卒)以外、約40年間ノーベル賞受賞者がいない。

頼氏の抱負に対し、中研院院士・陳培哲氏は「スローガンは簡単だが、我々の土壌はそのような花を咲かせることができるのか?」と率直に述べた。台湾の学術文化は「職業化」しており、基礎科学への信仰と文化的自信が欠如していると指摘し、「このような大学ではノーベルの花は開かない」と語った。

日本の啓示:戦敗から科学復興へ

今年(2025年)のノーベル生理学・医学賞は、大阪大学の坂口志文教授が米国の研究者とともに受賞した。受賞理由は、免疫機能を制御する「制御性T細胞」の発見とその研究成果である。日本が科学分野の賞を獲得するのは2年連続で、2000年以降の受賞者はすでに22人に達し、米国に次ぐ規模となっている。

陳培哲氏は、この背景に「文化的自信」の存在を指摘する。「湯川秀樹が1949年に日本人として初めてノーベル賞を受賞したのは、原爆投下からわずか4年後のことだ。あれは精神面での再建の象徴だった。日本社会は科学を通じて敗戦の影を乗り越え、民族としての自信を取り戻した」と語る。

1901年の創設から今日まで、日本は自然科学3分野で計32個のノーベル賞を獲得しており、ほぼ10年に一度は新たな受賞者が生まれている。「日本の学術制度は戦前の帝国大学の系譜がそのまま受け継がれ、断絶がなかった。重要なのは、研究の価値を信じる文化だ。たとえ理解されなくても、研究者は信念を持って続けることができる」と陳氏は強調した。

百年の対照:東京大学、京都大学と台湾大学、三つの大学が歩んだ運命の分岐 

1928年、日本政府は台湾に「台北帝国大学」を設立し、東京・京都と並ぶ帝国大学体系の一角を担った。当時の教授陣は多くが日本本土から派遣され、制度や学風も本土と大きく変わらなかった。しかし、その後およそ100年が過ぎ、東京大学と京都大学が十数人のノーベル賞受賞者を輩出する一方、台湾大学からはこの40年間、国際的な科学者が生まれていない。

「台北帝国大学は1928年創立で、2028年にはちょうど100年になる。東京・京都・台北の歩みを比べると、その差は歴然だ」と陳培哲氏は語る。鍵は教育の方向性の変質にあるという。「日本の学生が東京大学や京都大学に進むのは、学問を探究するためだ。だが、台湾の多くの学生は就職のために大学へ入る。」

陳氏はこうまとめる。「同じ制度から出発しても、文化の志向が違えば、行き着く結果はまったく異なる。」

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