2025年ノーベル化学賞 京都大学・北川進教授ら3教授が受賞 気体を“捕まえる”新素材「MOF」で世界を変える

2025-10-09 15:14
2025年ノーベル化学賞が発表され、日本、オーストラリア、アメリカの3人の学者が栄誉を分かち合う。(AP通信)
2025年ノーベル化学賞が発表され、日本、オーストラリア、アメリカの3人の学者が栄誉を分かち合う。(AP通信)
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2025年ノーベル化学賞は8日午後に発表され、京都大学の北川進教授、オーストラリア・メルボルン大学のリチャード・ロブソン教授、カリフォルニア大学バークレー校のオマール・M・ヤギ教授が共同で受賞した。受賞理由は、金属–有機フレームワーク(MOFs)領域における画期的な研究と成果に対してである。

スウェーデン王立科学アカデミーは、ノーベル化学賞を北川氏、ロブソン氏、ヤギ氏に授与すると発表し、彼らの「金属–有機フレームワーク(MOFs)」分子構造における卓越した貢献を称えた。

MOFsは結晶内に多数の空間を持つ分子構造で、気体や他の化学物質が自由に流れることができる。この構造は、砂漠の空気から水分を集めること、二酸化炭素を吸収すること、毒性ガスを保管すること、化学反応を促進することなどに応用可能である。金属イオンが建築の基盤となり、長鎖有機分子が結合して大きな空洞を持つ結晶構造を形成する。化学者はMOFsの構成単位を変化させることで、特定の物質を捕捉・保存する材料の設計や化学反応促進、導電性の付与が可能となる。

2025ノーベル化学賞受賞者北川進。(美聯社)
2025ノーベル化学賞受賞者北川進。(AP通信

ノーベル化学賞委員会のハイナー・リンケ会長は、「金属–有機フレームワークは巨大な発展可能性を持ち、新しい機能をもつカスタマイズ材料の設計を可能にする」と述べた。

MOFsの研究は1989年に始まった。当時、ロブソン氏は正電荷を持つ銅イオンと四腕分子を結合させる新しい方法を試みた。各アームの端には銅イオンを引き付ける化学基があり、結合することで、ダイヤモンドの中に無数の空洞が広がるような高度に秩序立った結晶が形成された。ロブソン氏はこの分子建築の潜在力にすぐ気づいたが、初期の構造は不安定で崩れやすかった。その後、北川氏とヤギ氏が手法を強化し、1992年から2003年にかけて革新的な突破口を開いた。

北川氏はMOFsが気体の出入りを自由に可能にし、柔軟性を持つことを示した。ヤギ氏は非常に安定した構造を作り、理論的な設計を通じて新たな機能と性能を付与する方法を確立した。

3人の研究成果により、化学者は数万種類の異なるMOFsを合成できるようになった。その中には、水中のパーフルオロアルキル物質(PFAS)の除去、環境中の微量薬物の分解、二酸化炭素の捕捉、砂漠の空気から水を集めるなど、人類が直面する課題の解決に役立つものも含まれると期待されている。

2025年ノーベル化学賞受賞者の人物紹介

北川進(Susumu Kitagawa)

生年月日:1951年、日本京都

学歴:1979年日本京都大学博士号取得

現職:日本京都大学教授

リチャード・ロブソン(Richard Robson)

生年月日:1937年、英国グラスバーン

学歴:1962年英国オックスフォード大学博士号取得

現職:オーストラリアメルボルン大学教授

オマール・M・ヤギ(Omar M. Yaghi)

学歴:1990年アメリカ イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校博士号取得

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