日本の演出家・小池博史氏が率いるHiroshi Koike Bridge Projectが、ブラジル、インドネシア、ポーランド、マレーシア、日本のアーティストとともに創作した新作舞台『HINOTORI:Phoenix of Mountain and Phoenix of Sea(火の鳥―山のフェニックスと海のフェニックス)』が、10月11日から14日まで東京・中野ZERO大ホールにて世界初演される。

本作は、現代音楽・ダンス・演劇・サーカスと、古典および伝統芸能を融合させた国際共同制作作品であり、「山のフェニックス」と「海のフェニックス」の二部構成(各約2時間)で上演される。7月から日本、ブラジル、インドネシア、マレーシア、ポーランドの15名を超えるアーティストが東京で滞在制作を行い、9月13日にROHMシアター京都で第1部「山のフェニックス」を先行上演し、好評を博した。
小池博史は本作について、「混沌とした世界の中で、人間であるとは何かを問い直す作品」と語る。タイトルの「HINOTORI(火の鳥)」は、手塚治虫の名作漫画を想起させるが、同時に世界各地の神話に共通する“再生と変容”の象徴でもある。作品では、言語や文化の壁を超え、音楽、身体、映像を駆使して、人類の創造性と再生の力を描き出す。

第1部「山のフェニックス」は、20XX年の崩壊した都市を舞台に、死者と怪物、愛と裏切りが交錯する寓話的世界を描く。第2部「海のフェニックス」は、崩壊後の世界に帰還した人々が、再び混乱と狂気に直面しながら新たな未来を選び取る物語となる。
出演は、ポーランドのマルチ奏者ワツワフ・ジンペル氏、マレーシアの舞踏家リー・スウィ・キョン氏、元シルク・ドゥ・ソレイユの空中パフォーマー奥沢英人氏ら国際色豊かなメンバー。音楽には日本の笛奏者・太田豊氏、ブラジルのヴァイオリニスト・グレゴリー・スリヴァー氏、マレーシアの声楽家サントシュ・ローガンドラン氏らが参加し、横笛、法螺貝、アルトクラリネット、ディジュリドゥなど多様な音色が交錯する。
演出・脚本は小池博史氏。舞台美術を山上亘、衣装を濱井浩司氏、映像を岸本智哉氏が担当し、ブラジル、ポーランド、マレーシアのクリエイターたちも映像・3DCG・アニメーションデザインで参加する。 (関連記事: 六本木アートナイト2025開幕 台湾アーティスト范承宗・林介文が東京の街を彩る | 関連記事をもっと読む )
『HINOTORI』は2021年に始動した4年間の国際共同制作プロジェクトの集大成であり、ポーランドのグロトフスキ研究所(The Grotowski Institute)、マレーシアのKuala Lumpur Shakespeare Players、ブラジルのSesc São Pauloとの共同制作で進められてきた。文学作品『コスモス』(ヴィトルド・ゴンブロヴィッチ)、『オデュッセイア』(ホメロス)、『世界の終りの戦争』(マリオ・バルガス・リョサ)、そして手塚治虫の『火の鳥』などを下敷きに、人間の存在と再生を多角的に描き出す。