テック人材争奪戦》米H-1B費用増観測で魅力後退、中国「Kビザ」不透明で失業若者反発

2025-10-06 08:15
中国の青年失業率が高く、中国の若者たちは仕事探しで熾烈な競争を強いられている。(写真/AP通信提供)
中国の青年失業率が高く、中国の若者たちは仕事探しで熾烈な競争を強いられている。(写真/AP通信提供)
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米国が海外の科技人材に高い壁を築く一方、中国は迅速に門戸を開いた。トランプ政権がH-1Bビザ申請料を10万ドルへ大幅引き上げると発表し、テック産業に衝撃を与えた。これに乗じて中国は「Kビザ」を強力に推進し、世界の若手STEM(科学・技術・工学・数学)人材に対し、雇用主の担保なしで入国・就業を認めると約束したのである。

しかし、この「Kビザ」は中国国内で反発を招いている。若年失業率が依然19%に達しているためである。数千万人規模の新卒が就職に奔走するなかで、政府が海外人材の受け入れを急ぐ理由、そして政策の詳細が不透明である点に疑義が相次いでいる。

アメリカの魅力が低下、トップ人材が中国に向かう

9月19日、トランプ政権はH-1Bビザの初回申請料を10万ドルに引き上げると発表し、テック業界に衝撃を与えた。他国による人材獲得を助長しかねないとの見方が広がっている。一方で、米国はすでに研究費の削減や、学者・研究者・留学生に対する審査強化、なかでも中国関連研究者への厳格化により、学術研究の現場に不確実性が増し、海外人材への吸引力が低下していたとする報道もある(米CNN)。

トランプ氏の最初の大統領任期下で実施された「チャイナ・イニシアチブ」以降、米国を離れる華人系科学者は75%増加し、そのうち3分の2が中国へ移ったという。彼らが米国を去った理由は、中国の体制への幻想ではなく、米国の政策に対する不信と排除の空気であるとしている。

2025年9月29日、アメリカのトランプ大統領がホワイトハウスでイスラエルのネタニヤフ首相と記者会見を開き、ハマスに72時間以内で和平計画受諾の最後通牒を行った。(AP)
アメリカのトランプ大統領。(写真/AP通信提供)

2024年初以降、米国で原子核物理学、AI、神経科学に従事していた少なくとも85人の科学者が中国の研究機関へ移った。そのうち半数は本年になって中国へ戻ったばかりである。

米メリーランド大学に在職していたタンパク質化学者・陸五元はこう振り返る。「1989年に大学院留学で渡米した当時の中国は貧しく、資源もなく、研究は大きく遅れていた。中国に留まっていれば今の成果はなかっただろう。だが、米国の政治と学術界の空気はすでに昔とは違う」。陸(文中では盧武源とも表記)は2020年に中国へ帰国定住を決め、現在は上海の復旦大学に在職している。彼によれば、海外からの応募は目に見えて増加しており、「中国の大学は『競争相手からの贈り物』を機会に変えようとしている。海外で高等教育を受けた中国エリートが逆流しており、これはもはや止められない潮流だ」と述べる。

この「人材の中国回帰」は、米国のテック覇権の基盤を揺るがしつつある。とりわけAI、量子計算、半導体、バイオ、軍事技術といった将来産業で影響が大きいとみられる。CNNはプリンストン大学の社会学者・謝宇の指摘として、中国の大学が今回の米国の政策変動を好機と捉え、国際的な人材の採用を一段と強化し、新たな研究プロジェクトや養成機関を設けていると伝えている。 (関連記事: 米国防総省、5,000人に秘密保持契約と無作為ポリグラフ リーク封じで「恐怖政治」と批判も 関連記事をもっと読む

中国「Kビザ」人材獲得策、アメリカの政策との明確な対比

中国国務院は8月に「Kビザ」の新設を告示し、10月1日から施行した。STEM分野の外国人卒業生や研究者を対象に、雇用主の担保なしでの在留・就業を認めるものである。このビザは、中国が既に運用する人材招致の枠組み(「啟明計画」など)と組み合わされ、学術界にとどまらずビジネス技術分野へと対象を広げている。

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