台湾の台東といえば、多くの人がまず思い浮かぶのは雄大な太平洋の海岸線や、谷間に広がる青々とした稲穂の風景、そして都会から離れた心地よい深呼吸だろう。だが、本当に台東を理解するには、風景を眺めるだけでは足りない。台東の魅力は、味覚を通してこそ見えてくる。朝の光から夜の帳が下りるまで、台東の一日は食と切り離せない物語である。
朝の味:台東式の「おはよう」
まだ夜の涼しさが残る早朝の台東。街角の軒先からは鉄板のジューッという音が響き、豆乳、蛋餅(台湾風クレープ)、焼き立ての餅の香りが入り混じって、まるで「台東の朝の交響曲」のように漂ってくる。
小さな店「早點來」は、いつも地元の人でいっぱいだ。華やかな内装はないが、どこか家庭的な温もりに包まれている。肉入りの蛋餅は厚みがあり食べ応え十分で、昔ながらのミルクティーと合わせれば、素朴でしっかりとした幸せを感じられる。



一方、「明奎早餐店」は、多くの台東人にとって共通の記憶のような存在だ。外はカリッと、中はふんわりのフレンチトーストに練乳をたっぷりかけた一皿は、甘いのに不思議としつこさがなく、誰もが笑顔になる朝の定番。ひと口頬張れば、子ども時代の純粋な喜びを思い出すようだ。



もう少し伝統的な味を求めるなら「江浙點心屋」がおすすめだ。小籠包や鍋貼(焼き餃子)は肉汁がじゅわっと広がり、地元の人にとってはおなじみの日常の味。そして名前通り、開店後すぐに売り切れてしまう「秒殺水煎包(蒸し焼き肉まん)」は、学生や会社員にとって朝の必須補給。毎日数十分で売り切れるため、遅れて行けばただ鍋を見つめるしかない。

さらに路地を歩けば「小胖水煎包」や葱油餅の屋台にも出会える。水煎包(蒸し焼き肉まん)は皮がもっちり、葱油餅(焼き葱入り餅)は外はカリッと中はふわりと香ばしい。ひと口かじれば小麦とネギの香りが口いっぱいに広がる。派手さのないこれらの屋台こそ、台東の人々の日常のリズムを映し出している。


昼のひととき:庶民の味覚風景
太陽が高く昇る頃、台東の街はにぎわいを増していく。お昼時になったら、市街地や伝統市場に足を延ばしてみたい。そこには、本当の「地元の昼ごはん」が待っている。 (関連記事: 【台湾旅行】台東の星空・稲穂・初日の出を満喫 2025年下半期おすすめイベント特集 | 関連記事をもっと読む )
台東グルメの象徴ともいえるのが「榕樹下」の米苔目(ミータイムー)だ。大鍋で煮込まれたスープは香り豊かでコクがあり、手打ちの米苔目はつるりと喉越しがよく、もちもちとした食感が心地よい。一杯の中に、積み重ねられた時間の味わいが感じられる。常連客の多くは、ここで必ずカジキやシイラのフライを一緒に頼む。カリッと揚がった衣の中に閉じ込められたやわらかな魚の身からは、太平洋の旨味が広がる。



さらに路地を少し歩くと「客來吃樂(客来吃楽)」がある。驚くほどシンプルなメニュー、「大腸と牡蠣の麺線、黒糖と竜眼入りの緑豆スイーツ、緑豆かき氷」それだけで毎日行列ができる人気店だ。とろみのある麺線には丁寧に処理された大腸と、ぷりぷりの牡蠣がたっぷり入り、そこにニンニク、唐辛子、黒酢を加えると、コクが一気に立ち上がります。食後は冷たい緑豆スイーツをひと口。竜眼の香ばしさと黒糖の濃厚な甘さが口いっぱいに広がり、夏の暑さを和らげてくれる。



台東でのお昼ごはんに特別な飾りはない。だが、素朴な料理の中に、地元の文化と暮らしの知恵がぎゅっと詰まっている。
ゆったり午後:コーヒーとスイーツの穏やかな時間
午後になると、台東の空気は少しゆるやかに流れ始める。そんな時は、小さなカフェでひと休みするのが心地よい。 (関連記事: 【台湾旅行】台東の星空・稲穂・初日の出を満喫 2025年下半期おすすめイベント特集 | 関連記事をもっと読む )
「草月咖啡館(Mese Coffee)」は街の一隅にひっそりと佇む温かな空間だ。木の家具から漂うやわらかい雰囲気、時折姿を見せる猫たち。まるで「ゆっくりしていいんだよ」と声をかけてくれているようだ。ここでいただけるハンドドリップコーヒーは香り高く、特に台東名物のローゼル(洛神花)を加えたオリジナルドリンクは、コーヒーのコクに爽やかな酸味と甘さが調和し、ここでしか味わえない一杯となっている。



もうひとつのおすすめは「一日手作」。素材を大切にした手作りのパンやスイーツは、派手さはなくともひと口ごとに真心が伝わる。窓から差し込む午後の光に包まれながら、自家製のデザートと特製ドリンクを楽しめば、旅の疲れもすっとほどけていく。



夜の食卓:海の恵みと豪快な味わい
夜、太平洋に闇が降りると、台東の食卓が本格的ににぎわいを見せ始める。 (関連記事: 【台湾旅行】台東の星空・稲穂・初日の出を満喫 2025年下半期おすすめイベント特集 | 関連記事をもっと読む )
「MAHI MAHI TODAY 好漁日」は、世界で唯一シイラ(鬼頭刀)をテーマにしたレストラン。毎日届く新鮮な魚を、バーガーやラップ、ドリアに仕上げて提供している。中でも人気の「好漁バーガー(好漁堡)」は、ふっくらとしたバンズにシイラのフィッシュステーキを挟み、特製ソースと共に味わう一品。ひと口かじれば、魚の旨味と香ばしさが広がり、思わず笑顔になる。




ちょっと気分を変えたいなら「Sam’s Burger」へ。台東の人々が愛するアメリカンスタイルの名店だ。肉厚でジューシーな手ごねビーフパティに、カリッと揚がったフライドポテト、そして爽快なドリンク。豪快で楽しい食事の時間が、旅の夜を一層盛り上げてくれる。店内に響く笑い声や音楽に包まれれば、旅の疲れもいつの間にか消えていく。



朝から夜まで、味わい尽くす台東
台東の一日は、まるで「食の旅」のようだ。朝の街角の朝食から、昼の庶民派グルメ、午後のカフェとスイーツ、そして夜の海の幸とボリューム満点の料理まで、どの一皿も、土地の暮らしや人の温もりを映し出している。
台東の魅力は山や海だけではない。日々の中に溶け込んでいる食の風景にこそ、この土地の真の美しさがある。地元の人々の足取りに合わせて、朝から夜まで食べ歩けば、きっとただお腹を満たす以上の体験が待っている。台東の食は、独特の温もりと人情を心まで満たしてくれるのだ。
台東グルメ一日プランまとめ
台東で過ごす一日は、まるで食の旅のように豊かだ。朝から夜まで、地元の人に愛される名店をめぐれば、この土地ならではの温かさと風味に出会える。ここでは「一日四食」のおすすめルートを紹介する。
朝ごはん
- 早點來:肉入りの蛋餅(台湾風クレープ)、昔ながらのミルクティー
- 明奎早餐店:練乳フレンチトースト、肉そぼろフレンチトースト、竜眼ミルクティー
- 江浙點心屋:小籠包、鍋貼(焼き餃子)、焼餅(中華風パイ)と豆漿(豆乳)
- 秒殺水煎包:キャベツ入り蒸し焼き肉まん(数量限定)
- 小胖水煎包・蔥油餅:薄皮水煎包(薄皮の蒸し焼き肉まん)、蔥油餅(焼きたて葱餅)
台東の朝は、湯気と香ばしさに包まれながら始まる。どの店も気取らず、地元の日常をそのまま味わえるのが魅力だ。
昼ごはん
- 榕樹下米苔目:スープ米苔目、乾拌米苔目、揚げカジキ、揚げシイラ
- 客来吃楽:大腸と牡蠣の麺線、黒糖と竜眼入りの緑豆スイーツ、緑豆かき氷
シンプルながらも味深い料理が並ぶ台東の昼食。庶民の味に触れることで、街の息づかいが一層近く感じられる。
午後のカフェタイム
- 草月咖啡館(Mese Coffee):ハンドドリップコーヒー、ローゼルブレンドの特製ドリンク
- 一日手作:自家製パンとスイーツ、爽やかな特製ドリンク
のんびりとした午後は、小さなカフェで過ごすのが心地よい。やわらかな光に包まれ、甘いひとときを楽しめば、旅の疲れも自然と癒やされていく。
夜ごはん
- MAHI MAHI TODAY 好漁日:フィッシュバーガー(好漁堡)、シイラのドリア、フライドフィッシュとポテト
- Sam’s Burger:手ごねビーフバーガー、スパイシーチキンバーガー、サーモンサラダ、カリカリポテト
夜の食卓は豪快かつにぎやか。海の恵みやボリューム満点の一皿が、台東の夜を彩ってくれる。
台東の魅力は、山や海の景色だけではない。食を通じて出会う日常の温もりが、この土地をより深く感じさせてくれる。次の旅では、一日の食の散歩を通して台東の空気を味わってみてはいかがでしょうか。
(台東県政府の広告) (関連記事: 【台湾旅行】台東の星空・稲穂・初日の出を満喫 2025年下半期おすすめイベント特集 | 関連記事をもっと読む )
編集:梅木奈実
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