衆議院議員の高市早苗氏が自民党総裁に当選した。台湾・民進党の立法委員で青年局長の陳冠廷氏は4日、高市氏の総裁就任は日本の憲政史における重要な瞬間であるのみならず、日本の国家戦略思考の根本的転換を象徴すると指摘。台湾の視点から見れば、この展開は日台関係に前例のない戦略的な機会をもたらすとの見方を示した。
陳氏は、高市氏の勝利は日本社会が地域の安全保障情勢に抱く深い懸念を反映していると述べた。中国の軍事拡張が一層鮮明になる中で、有権者と政治エリートの間に画期的な合意が形成され、立場の明確な高市氏が選ばれたという。日本は過去の「戦略的曖昧さ」から、より明確な国家意思の表明へ移行しつつあり、安倍晋三氏が生前に掲げた「台湾有事は日本有事」の理念は、高市氏の下で個人の提唱から国家政策の指導原則へ格上げされる可能性が高いと分析。これにより台湾海峡の平和と安定が日本の核心的利益と位置づけられたことは、戦後日本外交史で前例がないとした。
陳冠廷氏:日台関係を戦略的パートナーへ格上げすべき
陳氏は、日台双方がこの歴史的機会を捉え、友好的パートナー関係を戦略的パートナー関係へ引き上げるべきだと主張。安全保障では、日本国憲法が軍事協力をなお制約する一方、非伝統的安全保障分野の連携を優先的に深め得るとして、常態化した海上保安の連絡メカニズムの構築、サイバーセキュリティ協力の強化、情報交換プラットフォームの整備などを挙げ、グレーゾーンの脅威に対応できると述べた。経済協力については、台湾の半導体優位と日本の経済安全保障戦略は相互補完的であり、協力を戦略レベルへ高め、民主陣営における技術のレジリエンスとサプライチェーンの安全を共同で構築すべきだと指摘。TSMCの熊本進出は「始まりに過ぎない」とし、今後は人工知能、量子コンピューティング、先進材料といった重要技術分野で広範な連携の余地があり、経済的利益の創出だけでなく、双方のグローバル・サプライチェーンでの地位強化にもつながると述べた。
一方で陳氏は、高市政権が依然として内外の課題に直面していることも強調。自民党内では対中政策をめぐる意見が分かれ、対中経済・貿易関係の維持を重視する声もあると指摘した。財政面では、防衛予算の増額が国債への依存度を高め、財政の持続可能性が問われる。地政学的には、在沖縄米軍基地の問題、日韓関係、日中の経済・貿易依存度などが外交上の裁量を狭めていると分析。台湾が日台関係の深化を推進するにあたっては、戦略的な知恵と外交の柔軟性を示し、日本の内部政治の生態や法的制約を十分に理解したうえで、日本側の能力範囲を超える期待を避ける必要があるとした。同時に、民間交流、学術対話、メディアの相互作用などを通じ、日本社会での対台湾支持を積極的に後押しし、台湾への理解と支持を深めるべきだと呼びかけた。
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