夏一新氏の見解:立法院団訪日と安倍研究センター――国民党と民進党の対日外交対決

2025-10-06 17:15
立法院長の韓国瑜氏(中央)率いる「日本国会外交訪問団」が帰国し、桃園空港で団員とともに談話を発表。(写真/柯承惠撮影)
立法院長の韓国瑜氏(中央)率いる「日本国会外交訪問団」が帰国し、桃園空港で団員とともに談話を発表。(写真/柯承惠撮影)
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政党の命運は、社会の不安と期待にどう応えるかに左右されることが多い。2019年の香港「反送中」運動は台湾社会に安全保障への不安を呼び起こし、民進党は「亡国感」を喚起して国民党に打ち勝った。韓国瑜氏は群衆動員の力を持っていたが、「親中」のイメージが災いし自救に失敗した。あれから5年、青陣営(国民党)には、国防に関する国際的信頼を再構築しない限り中央政権は奪還できないとの認識が広がっている。2025年9月4日、国民党団総召の傅崐萁氏が27人の立法委員(国会議員)を率いて訪日し、「日華議員懇談会」と交流した。青陣営としては史上最大規模の対日行動とみられる。

馬英九氏の残した日台交流の遺産

馬英九氏が総統を務めた2008~2016年、日台間には相当程度の交流チャネルが維持されていた。馬政権は「活路外交」を基礎に、両岸関係の安定を確保しつつ日本との協力を推進。2011年に日台投資協定を締結し、2012年には「東シナ海平和イニシアチブ」を提唱、翌年には17年に及ぶ交渉の末に日台漁業協定をまとめ、尖閣(釣魚台)周辺の漁業権問題に実質的な解をもたらした。2011年の東日本大震災では、台湾政府と社会が強力な人道支援を示し、善意の循環が生まれた。研究統計によれば、馬政権の8年間で二国間協定は28件に達し、経貿、海洋、文化など幅広い分野をカバー。公式対話メカニズムの常態化を進め、政策と社会交流の安定した枠組みを築いた。外部の固定観念に反し、国民党政権期には効果的で信頼性の高い日台交流の時期が存在したことを示している。

2020大選の重い教訓

2020年の総統選では、高雄市長の韓国瑜氏が爆発的な人気を背景に中央政界へ挑み、青陣営の政権奪還に期待が集まった。しかし反送中の勃発で台湾の空気は一変。民進党(緑陣営)は「芒果乾」(マンゴーの当て字で「亡国感」の語呂合わせ。中国脅威を喚起する政治スローガン・キャンペーンを指す)を用いて危機感を高め、韓氏の勢いを圧縮した。最終的に韓氏は「親中」「紅統」のレッテルを背負い、支持と動員力は数カ月で崩壊。絶頂から一転して惨敗を喫した。この選挙は、台湾の総統選において「安全感」と国際的信頼が個人のカリスマを上回って決定要因になることを改めて示した。 (関連記事: 台湾・政治大学に「安倍晋三研究センター」設立 頼清徳総統「台海和平の最大の功臣」と称賛、台日協力の新たなマイルストーンに 関連記事をもっと読む

芒果乾の痛みからイメージ修復へ

今回の青陣営の訪日は、この断裂を埋める試みだ。会談では台湾海峡の安全保障にも踏み込み、日本側議員は地域の安定への関心を表明。国民党の立法委員は「平和と防衛を重視し、国防では譲らない」と強調した。経済・通商協力も主軸で、台湾のCPTPP(包括的・先進的環太平洋パートナーシップ協定)加盟への日本の支持取り付け、農産物輸出や直行観光の推進により、基層が外交の恩恵を実感できるようにするという。防災やエネルギー協力も議題に上がり、青陣営は食品安全の基準で福島産品の問題に応える姿勢を示した。加えて若者交流プログラムを提案し、次世代との新たな結びつきを築くことを目指している。

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