孔令信の見解:安倍研究センターから「終戦史観」まで─頼清徳氏の史観と国安戦略の矛盾

2025-09-25 11:43
頼清徳総統が出席した「国立政治大学安倍晋三研究センター」設立大会。(写真/陳品佑撮影)
頼清徳総統が出席した「国立政治大学安倍晋三研究センター」設立大会。(写真/陳品佑撮影)

頼清徳総統が国立政治大学(政大)で「安倍研究センター」の除幕式に出席したことは、台日関係が一段と緊密になったことを示すのか。それとも、頼氏自身と安倍晋三氏の遺族との私的関係の近さを物語るにすぎないのか。頼氏は「きょう台湾が静穏な平和を享受できるのは、安倍晋三氏の高い先見性のおかげだ」と述べた。現職総統の口から出たこの言葉には苦笑を禁じ得ない。彼は九三軍人節=対日戦勝80周年を忘れたのか。八・二三砲戦で蒋介石・蒋経国の両氏(「二蒋」)が台湾・澎湖・金門・馬祖(台澎金馬)の安全を固めた事実を忘れたのか。さらには10月25日の台湾光復80周年も忘れたのか。これらの歴史的事実と英雄、そして中華民国のために身を粉にして尽くした国軍と先人こそが、きょうの台湾における中華民国を築いた功労者である。それにもかかわらず、頼氏は安倍氏の「先見性」を称揚するばかりである。これは歴史の錯綜であるだけでなく、他国の祖先を自らの祖霊であるかのように祀るに等しい行為である。

頼氏は「二国論」から「台湾地位未定論」、さらには「光復節は存在しない」へと主張を拡張し、いまや安倍氏に唯々諾々と従う姿勢を示している。これは日本を宗主国と認め、自らを「皇民」とみなすに等しいのである。この結果、中華民国の抗戦勝利と台湾回帰の記念・祝意は、ことごとく「終戦史観」へとすり替えられた。頼氏は台南市長時代に八田與一を格別に称揚した一方で、2018年に台南で設置された台湾唯一の慰安婦記念像は、ひそかに移された。台湾の慰安婦被害者は相次いで逝去し、2023年5月には最後の一人も亡くなったが、彼女らは最後まで日本政府の公式な謝罪と賠償を得られなかった。こうした待遇の落差は著しく、頼氏の歴史観への疑念を深めるものであり、現職の総統という地位とまったく相いれない。彼は果たして中華民国を護っているのか。 (関連記事: 調査》台湾・盧秀燕台中市長ら15県市長が中央と激突 総予算に賴清德政権の「見せかけの財政操作」 関連記事をもっと読む

まず、誤置と混乱を招く歴史観は、頼清徳氏が国家をいずこへ導こうとしているのかという疑問を抱かせるのである。もし本気で「台湾独立建国」を推し進めるのであれば、中華民国総統の職を辞すべきである。さもなくば、国民は日々、錯綜した歴史叙述と分断を招く価値観に向き合わされることになり、国家の福祉に資さない。民進党政権の10年は、教科書編成を台湾四百年史へと誘導し、中国を外国史に位置づけ、意図的に「両国は互いに隷属せず」という構図をつくってきた。将来の「台湾国」樹立に都合よく「状況」に入るためである。ところが、本年の対日抗戦勝利80周年に関して、頼氏のチームは「終戦史観」をもって自らを位置づけ、中華民国が抗日戦争の戦勝国であるという史実を逆転させた。頼氏は中華民国総統として、9月3日の忠烈祠における秋の追悼で国軍英霊を前にしても、「殉職将士の追悼」にとどめ、抗戦で壮烈に命を落とした将兵を堂々と追悼しようとしない。戦敗国の位置取りを自ら選ぶがゆえに、英霊の前で不格好な姿となるのである。加えて、北京の九三軍事パレードに対抗して抗戦勝利80周年を国際社会に高らかに宣明し、厳かに記念することもできず、中華民国が抗日を主導したという史実の発信権を脇へと追いやるのを座視した。頼氏は日々総統府にありながら、国家社会全体とは異なる歴史観を語っており、どうして国を号令し結束させ得るのか。

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