台湾・花蓮県光復郷では、台風18号(ラガサ)がもたらした豪雨により、9月23日午後2時50分、馬太鞍渓上流のせき止め湖が堤頂から越流した。洪水はわずか20分後に台9線の馬太鞍渓橋へ到達して橋を押し流し、交通は直ちに途絶。その後、大量の黒い濁流と土砂が市街地に流れ込み、店舗や住宅を水没させ、自動車を押し流した。住民の一部は避難が間に合わずに取り残され、花蓮県政府が事前に光復郷、万栄郷、鳳林鎮で避難を実施し、計5084人を安全地帯に移したものの、洪水の到達があまりに速く、深刻な被害が発生した。SNS上では「まるで小林村のようだ」との声も上がっている。
然後花蓮縣長今天才要回國,
— Otto Huang (@OttoHuang120)September 23, 2025
這就是傅崐萁統治20年的花蓮!pic.twitter.com/2ylXvJkajx
花蓮光復郷は「小林村」の再来か
ネット上では、今回の災害が2009年の台風8号(モーラコット)による小林村壊滅と比較されている。両者はいずれも極端な豪雨で山崩れが発生し、河道が塞がれてせき止め湖が形成、その後水圧の上昇で越流・決壊に至ったという点で共通している。
ただし小林村では堤体そのものが崩壊し、集落が瞬時に埋没した。一方、光復郷では堤頂越流と橋梁の崩落が主因で大規模浸水が発生した。被害規模は深刻だが、地形条件に差異もある。
なぜ花蓮の今回の災害は特に深刻なのか
光復郷の被害が短時間で甚大化した背景には、複数の要因が重なった。
- 馬太鞍渓せき止め湖の規模が極めて大きく、堤高約200メートル、湖面積140ヘクタール、満水時の貯水量は9100万トンに達し、大型ダムに匹敵したこと。
- 台風による短時間の豪雨で水位が急上昇したこと。
- 馬太鞍渓橋が洪峰に耐え切れず崩壊し、排水と交通が遮断されたこと。
- 避難命令は発令されていたが、洪水の到達が速すぎ、住民の避難が追いつかなかったこと。
- 上流域の地質が脆弱で、既に大規模な山崩れが発生しており、土砂流入が洪水被害を加速させたこと。
【台湾東部で台風の影響により浸水、2人死亡30人行方不明】
— Sputnik 日本 (@sputnik_jp)September 24, 2025
🌀台湾東部の花蓮県では台風18号(ラガサ)の接近に伴う大雨の影響で湖があふれ、浸水が発生した。台湾当局によると、2人が死亡し、30人が行方不明になったとのこと。…pic.twitter.com/y745jfeu6b
せき止め湖が決壊しやすい理由
せき止め湖は山崩れや土砂で河道が塞がれて形成されるが、その堤体は緩い土砂で構成されており、人工ダムのような強度を持たない。豪雨で水位が急激に上昇すれば、堤頂部や脆弱部に圧力が集中し、越流や侵食が進む。さらに、堤体内部に亀裂や浸水経路があれば空洞化が進み、崩壊リスクが一気に高まる。土砂の滑落で水位上昇や流向変化が起きることも危険要因だ。2009年の小林村壊滅も同様のメカニズムで発生した典型例とされている。
花蓮光復郷今後の対応と課題
花蓮県政府は住民に対し、引き続き建物の2階以上で避難を続けるよう呼びかけ、台11線を主要な代替ルートとして利用するよう案内している。中央災害応変センターもせき止め湖の水位を継続監視しており、専門家は「降雨が再び強まれば第二波の洪峰が発生し、さらなる浸水リスクがある」と警告する。
一部住民からは「第二の小林村になるのでは」と不安の声も出ているが、十数年前と比べると、今回の事前警戒と避難行動はより迅速であり、人的被害を一定程度抑える効果があったとも評価されている。今後の課題は、地形的リスクを踏まえた継続的な監視と防災体制の強化であり、災害拡大を防ぐための持続可能な対策が求められている。
編集:柄澤南 (関連記事: 台湾・花蓮の洪水災害 中央と地方が責任の押し付け合い 行政院長と国民党議員が救助現場で口論勃発 | 関連記事をもっと読む )
台湾ニュースをもっと深く⇒風傳媒日本語版X:@stormmedia_jp