ロサンゼルス・ドジャースの新守護神タナー・スコット投手(31)にとって、2025年は波乱に満ちた一年となった。昨オフにサンディエゴ・パドレスからフリーエージェントとなり、4年総額7200万ドル(約107億円)の大型契約を結んで加入。速球とスライダーを武器に「大谷キラー」としても知られる左腕は、チームの勝利を託される役割を担ったが、救援失敗が続きファンやメディアから厳しい批判を浴びることとなった。

シーズンは東京ドームでの開幕シリーズから始まった。カブスとの試合で9回に登板し、無失点で切り抜けてシーズン初セーブを記録。日本のファンの前で新守護神としての存在感を示した。しかし、その後のシーズンでは制球難や被弾に苦しみ、安定感を欠く内容が続いた。夏場には左肘の炎症で負傷者リスト入りを余儀なくされ、復帰後もリードを守り切れない試合が相次いだ。9月12日のジャイアンツ戦では、山本由伸が7回1失点と好投したにもかかわらず、9回にサヨナラ満塁本塁打を浴びるなど、勝利を逃す場面もあった。

シーズン成績はここまで57試合で1勝3敗、21セーブ、防御率4.73。高額契約を背負いながら不安定な投球を続けたことから、「背信守護神」とのレッテルを貼られるまでになった。8月22日(日本時間23日)には、古巣パドレスの本拠地ペトコ・パークに凱旋。わずか3か月間の在籍だったにもかかわらず、敵地ファンからは「裏切者」との声を浴びた。スコットは「どうやったら裏切者になるんだ? 2か月しかいなかったのに」と冷静に反論し、「野球はそういうものだ。相手はすべて敵だから、勝つ努力をするだけ」と語った。
そしてシーズン終盤、米紙「オレンジ・カウンティ・レジスター」や日本の「東スポWEB」に「今は『どうでもいいや』って感じだ。何も考えないようにしている」と心境を明かした。シーズンを通じて「野球界が自分を嫌っている」と思いつめる時期もあったが、無心の境地に立つことで再び自信を取り戻そうとしているという。
また東京遠征中には、マウンド以外での意外な一幕もあった。試合前の練習でフィルムカメラを手にしていた際、誤ってフィルムバックを開けてしまい露光の危機に。居合わせた台湾のカメラマンが巻き戻しと交換を手助けし、スコットは「妻のバッグに入っていたのを見つけただけなんだ」と笑顔を見せた。スター投手が思わぬ形で助けを借りる姿に、周囲の取材陣からも笑いが漏れた。
背負った期待に応えられず、古巣から「裏切者」と呼ばれ、そして「どうでもいいや」と口にしたタナー・スコット。波乱の2025年シーズンの評価は、これから始まるポストシーズンのマウンドで最終的に下されることになる。
編集:柄澤南 (関連記事: ドジャースの大黒柱カーショウ、2025年限りで現役引退 通算222勝・サイ・ヤング賞3度の名左腕に幕 | 関連記事をもっと読む )
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