台湾公共テレビ(PTS)と日本放送協会(NHK)が共同制作した旗艦級ドキュメンタリー『神木の森へ 台湾阿里山森林鉄道』の日本特別上映会が、9月21日、東京・お台場のユナイテッド・シネマで開催された。大スクリーンを通じ、阿里山森林鉄道の壮大な自然景観と百年にわたる人々の物語が日本の観客に届けられ、日台文化交流の重要な節目となった。
阿里山森林鉄道を題材にした8Kドキュメンタリー『神木の森へ 台湾阿里山森林鉄道』が9月21日、東京で特別上映され、日台両国の公共メディア協力の成果として文化的な絆と自然の魅力を伝えた。(写真/黃信維撮影) 『神木の森へ 台湾阿里山森林鉄道』は、8K超高精細映像と22.2チャンネル立体音響で制作。独立山の「スパイラルループ」、水社寮の「Ωカーブ」、スイッチバックといった特色ある鉄道工法を紹介しながら、阿里山森林鉄道の自然環境と文化記憶を鮮明に描き出す。百年以上の歴史を誇るこの鉄道は、台湾人の共同記憶であると同時に、日台両国の深い文化的絆を象徴する存在である。
上映会に日台の要人が集結 上映会には、台北駐日経済文化代表処の李逸洋代表(駐日大使)、台湾維新基金会会長で総統府資政の謝長廷氏、NHKコンテンツ戦略局企画管理センター専任部長の加藤拓氏をはじめ、日本の政界・文化界・映像業界から多くの関係者が出席した。
阿里山森林鉄道を題材にした8Kドキュメンタリー『神木の森へ 台湾阿里山森林鉄道』が9月21日、東京で特別上映され、日台両国の公共メディア協力の成果として文化的な絆と自然の魅力を伝えた。(写真/黃信維撮影) 台湾公共テレビの胡元輝董事長は挨拶で、「『神木の森』は言語や地域を超え、PTSとNHKのチームが共に完成させた作品です。単なるドキュメンタリーではなく、両国の公共メディアが協力して実現した映像文化交流の成果です」と強調。さらに、昨年台北・自由広場で行った屋外上映会に2,000人以上を動員したことや、64.6チャンネル音響と300インチL字型スクリーンを用いた没入型バージョンの公開実績も紹介した。
阿里山森林鉄道を題材にした8Kドキュメンタリー『神木の森へ 台湾阿里山森林鉄道』が9月21日、東京で特別上映され、日台両国の公共メディア協力の成果として文化的な絆と自然の魅力を伝えた。(写真/黃信維撮影) 李逸洋代表は、阿里山森林鉄道が日本統治時代に建設され、当初は伐採や運材に使われたが、現在は観光・文化資産として受け継がれていると説明。「森林鉄道」「登山鉄道」「高山鉄道」の三つの特性を併せ持ち、箱根登山鉄道と並んで世界四大登山鉄道の一つに数えられている」と述べ、「台湾の世界遺産候補の一つとして、本作は日台協力による文化保存と共有の試みでもあります」と語った。
阿里山森林鉄道を題材にした8Kドキュメンタリー『神木の森へ 台湾阿里山森林鉄道』が9月21日、東京で特別上映され、日台両国の公共メディア協力の成果として文化的な絆と自然の魅力を伝えた。(写真/黃信維撮影) 謝長廷氏は、中国語と日本語を交えたスピーチで、若き日の阿里山訪問の思い出を振り返り、「当時抱いた神木が後に雷に打たれて裂けた」と語りながら、「もちろん私が抱いたせいではありません」とユーモアを交え、会場の笑いを誘った。続けて「阿里山森林鉄道は山と人々を結び、台湾への愛情を育んできました。今日その感動を日本の友人と共有できることを心から嬉しく思います」と述べた。
阿里山森林鉄道を題材にした8Kドキュメンタリー『神木の森へ 台湾阿里山森林鉄道』が9月21日、東京で特別上映され、日台両国の公共メディア協力の成果として文化的な絆と自然の魅力を伝えた。(写真/黃信維撮影) NHKの加藤拓氏は、PTSにとって初めての8K制作を技術面で支援した経緯を紹介。「撮影はわずか2週間で行われ、天候急変に対応しながら日台スタッフが協力し合い、完成に至りました。台湾側は真剣に学び、NHKスタッフも指導に大きなやりがいを感じました」と振り返り、「本作は友情をさらに深める架け橋となりました」と語った。
阿里山森林鉄道を題材にした8Kドキュメンタリー『神木の森へ 台湾阿里山森林鉄道』が9月21日、東京で特別上映され、日台両国の公共メディア協力の成果として文化的な絆と自然の魅力を伝えた。(写真/黃信維撮影) 上映後のトークセッションには、PTSの施悅文プロデューサー、NHKの柴崎壮プロデューサー、安藤良美監督が登壇。施氏は「長年の信頼関係があったからこそ実現しました」と語り、柴崎氏は「天候の変化に柔軟に対応したことで貴重な自然光を捉えられた」と述懐。安藤監督は「短期間で鉄道沿線の人々の生活をどう映像に収めるかが課題だった」と明かした。
阿里山森林鉄道を題材にした8Kドキュメンタリー『神木の森へ 台湾阿里山森林鉄道』が9月21日、東京で特別上映され、日台両国の公共メディア協力の成果として文化的な絆と自然の魅力を伝えた。(写真/黃信維撮影) 観客からも「鉄道に乗った記憶が蘇った」「台湾は宝の島だと実感した。今度は家族と一緒に訪れたい」といった声が寄せられ、会場は温かな拍手に包まれた。
阿里山森林鉄道を題材にした8Kドキュメンタリー『神木の森へ 台湾阿里山森林鉄道』が9月21日、東京で特別上映され、日台両国の公共メディア協力の成果として文化的な絆と自然の魅力を伝えた。(写真/黃信維撮影) 本作は施悅文氏と柴崎壮氏が中心となり、自然科学番組の経験豊富な安藤監督、海洋・水中洞窟撮影に実績を持つ松下猛撮影監督、立体音響の専門家である伏見雅子氏と栗野将基氏、PTSのゴールデンベル賞受賞チーム、AKflyドローンチームなど国際的なスタッフが参加。音楽は作曲家・吉田潔氏が担当し、先日AISルミエール賞8K部門優秀作品賞を受賞した。
阿里山森林鉄道を題材にした8Kドキュメンタリー『神木の森へ 台湾阿里山森林鉄道』が9月21日、東京で特別上映され、日台両国の公共メディア協力の成果として文化的な絆と自然の魅力を伝えた。(写真/黃信維撮影) 主催者は、台北駐日経済文化代表処の支援に加え、台湾農業部林業及自然保育署、阿里山林業鉄道と文化遺産管理処、台湾維新基金会、上銀科技、泓徳エナジーテック、スターラックス航空、檜山坊、日台産経友好促進会など協賛団体への謝意を表した。
編集:田中佳奈