世界の中央銀行が一斉に金融政策を発表する「スーパー中央銀行ウィーク」の終盤、日本銀行は19日、5会合連続で政策を維持し、基準金利を0.5%に据え置くことを決めた。市場予想どおりの判断だったが、意外にも2人の審議委員が利上げに賛成票を投じた。また、同時にETF売却計画の開始も発表された。これを受けて円相場は短期的に上昇し、株式市場は売りに押され急落。日経平均株価は一時1.8%安となり、4万5000ポイントの大台を割り込んだ。
タカ派色がにじむ会合結果
石破茂首相の辞任表明で政局が不透明感を増す中、日本銀行は今回、7対2の賛否で金利据え置きを決定した。内部の見解が分かれていることを示す結果となった。高田創氏と田村直樹氏の2人の審議委員は、物価上昇が進みリスクが高まっているとして、短期金利の誘導目標を0.50%から0.75%へ引き上げるよう提案したが、過半数の反対で退けられた。
三井住友銀行の鈴木裕史アナリストは、金利据え置き自体は市場予想通りだったとしつつも、ETF売却計画の発表と2人の利上げ支持票が「タカ派的なメッセージ」を含んでいると指摘。次回10月会合で利上げに踏み切る可能性もあるとの見方を示した。

ETFとJ-REITの段階的売却へ
日本銀行は19日、金融政策決定会合で金利を据え置くと同時に、保有する上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(J-REIT)の売却を開始すると発表した。売却額は各資産の保有比率に応じて決定し、時間を分散することで市場への影響を最小限に抑える方針だ。
日銀は、売却規模は「過去に金融機関から取得した株式」とほぼ同等と説明。今後は政策決定会合の中で、基本原則や実際の売却経験を踏まえ、売却ペースを柔軟に調整する可能性があるとしている。年間の目安は、帳簿価額でETF約3300億円、J-REIT約50億円の売却となる見通しだ。
日銀の政策声明全文
日銀は今回の会合で、無担保コール翌日物金利を0.5%前後で推移させるとの従来方針を7対2の賛成多数で決定した。また、ETFとJ-REITの処分については全会一致で合意し、市場の不安定化を避けながら段階的に売却を進める方針を明記した。
声明は日本経済について「全体としては緩やかな回復が続く一方、一部では弱さも見られる」と指摘。海外経済も全体的には緩やかな成長を示すが、各国の通商政策の影響で減速が確認される領域があるとした。輸出や鉱工業生産は総じて安定しているが、米国の関税引き上げで一部輸出が前倒しされ、その反動で落ち込みが生じていると分析した。
企業収益は高水準を維持するものの、製造業は関税の影響で下押し圧力を受けている。設備投資は緩やかな増加傾向を保っているが、住宅投資は弱含みで、公共投資は横ばいとされた。雇用と所得環境の改善が消費を支えている一方、食品価格の上昇が消費者心理に影響している。
物価については、生鮮食品を除く消費者物価指数(CPI)の上昇率が直近で2.5~3.0%の範囲で推移。賃金上昇が販売価格に反映される中、米価など食品価格の高騰も寄与し、インフレ期待は緩やかに上昇している。
日銀は今後の見通しとして、海外経済の減速が企業収益や国内経済に下押し圧力を与える可能性を指摘。ただし緩和的な金融環境が下支えとなり、海外経済が成長軌道に戻れば日本経済も回復する可能性があるとした。
CPI(生鮮食品除く)は足元の食品価格上昇の影響が徐々に剥落するとみられるが、景気減速の影響で基調的なインフレは低迷するリスクがある。ただ、中長期的には労働力不足の深刻化がインフレ期待を押し上げ、2025年7月時点の展望期間後半には、物価安定目標(2%程度)と概ね整合的な水準に近づく可能性があるとした。
一方で、声明は「通商政策を含む海外経済の動向やそれに伴う金融・為替市場の反応には高い不確実性がある」と警戒感を示した。
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編集:田中佳奈
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