生成AIの普及が急速に進む一方で、倫理や法律をめぐる議論が相次いでいる。特に今年4月、米国で「AIが少年を死へと誘導した」とされる訴訟が明らかになり、社会に衝撃を与えた。この事件を受け、ChatGPTを運営するOpenAIは、成人と未成年の利用を区分する新方針を打ち出し、再発防止に向けた安全対策を強化することを決定した。
未成年専用「適齢版ChatGPT」の提供
OpenAIは、心理的要因や社会的側面を踏まえ、18歳未満と確認された利用者を自動的に「年齢適合版ChatGPT」に誘導する仕組みを導入すると発表した。
OpenAI says it is rolling out new safety measures for ChatGPT users under 18.https://t.co/khVW0v7WLI
— CBS News (@CBSNews)September 17, 2025
この専用版では性的コンテンツの遮断をはじめ、法的保護措置が複数組み込まれている。また「緊急かつ危険な状況」に限り、運営側が主体的に法執行機関へ連絡し、利用者の安全を確保できる仕組みも設けられる。
OpenAIは声明で「ChatGPTが15歳の利用者に応答する際、その方法や言語構造は成人への応答とは異なるべきだ」と強調している。

さらに、保護者が子どもの利用を管理できる「ペアレンタルコントロール」機能も追加される予定だ。保護者アカウントと未成年アカウントの連結、チャット履歴の管理、利用停止時間の設定などが可能となり、これらの機能は早ければ9月末にも実装される見込みである。
FTC調査との関連と背景
今回の発表は、米連邦取引委員会(FTC)が進める「チャットボットが子どもや青少年に及ぼす悪影響」に関する調査とも関連している。OpenAIは「ChatGPTを誰にとっても安全かつ実用的なものにすることを最優先に取り組んでいる。特に若年層にとって安全性は極めて重要である」と海外メディアにコメントした。

実際には、公式調査が始まる前からOpenAI内部で、脆弱な利用者や青少年層に対する追加的な安全保護策について議論が行われていた。背景には、米カリフォルニア州で起きた16歳のアダム・レインさんの自殺事件がある。両親は8月にOpenAIを提訴し、ChatGPTの回答が息子を追い詰めたと主張している。
年齢確認の課題と他社の事例
現時点で、OpenAIがどのように利用者の年齢を確認するかは明らかにされていない。ただし同社は、利用者の年齢が特定できない場合、自動的に青少年版へ誘導する仕組みを適用する方針を示している。
こうした差別化管理はOpenAIに限らず、YouTubeなどのプラットフォームでも早くから導入されている。YouTubeは「YouTube Kids」を提供するだけでなく、年齢推定技術を導入し、視聴動画の種類やアカウント作成時期をもとに未成年かどうかを判断している。

保護者が抱く強い懸念
米国の調査機関ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)が4月に発表した報告によると、青少年本人よりも保護者の方が、子どもの心理的健康に対して強い懸念を抱いていることが分かった。とりわけ「ある程度心配している」あるいは「より深刻に懸念している」と答えた保護者のうち、44%がソーシャルメディアを青少年に最も深刻な悪影響を及ぼす要因とみなしている。
⚠️もしもご自身や身近な人が抑うつや打ち明けにくい悩みを抱えている場合は、必ず支援を求めてほしい。台湾では安心専線1925(依舊愛我)に電話するか、地方自治体の心理健康資源を通じて24時間の専門相談を受けることができる。
日本にお住まいの場合は、「いのちの電話」0570-783-556(午前10時から午後10時まで)や「こころの健康相談統一ダイヤル」0570-064-556(おこなおう まもろうよ こころ)から、専門の相談員に話すことができる。
編集:柄澤南 (関連記事: OpenAIアルトマンCEOが警告 AIバブルはすでに過熱?「イエス」と断言 | 関連記事をもっと読む )
世界を、台湾から読む⇒風傳媒日本語版 X:@stormmedia_jp