米紙ワシントン・ポストは関係者5人の証言として、米国のトランプ大統領が中国の習近平国家主席との貿易協議や首脳会談の可能性をにらみ、今夏、対台湾向けの軍事援助4億ドル(約592億円)超の承認を拒否したと報じた。ホワイトハウス当局者は「この援助計画の決定は最終的に固まっていない」と強調し、台湾の駐美代表処はコメントを控えた。今回の判断は、ワシントンの対台湾軍事支援のペースに大きな変化が生じたものと受け止められており、米中台三者関係の不確実性を一層高めている。
援助内容と戦力の性質
米紙ワシントン・ポストによれば、関係者2人は今回の援助に弾薬や自律型無人機が含まれており、その破壊力や効果は従来の対台湾支援を上回ると証言した。前国防総省高官で現在は米国企業研究所の専門家であるダン・ブルーメンソール氏は「米国が今ペースを緩めるのは絶対に誤ったタイミングである」と指摘した。同紙はさらに、トランプ政権が北京との包括的な貿易協定の可能性を模索する中で、競争分野における対応を緩和する兆候がみられると報じた。具体的には、一部の先端半導体の輸出規制緩和や、議会が可決したTikTok禁止法の不実施などが挙げられ、こうした一連の譲歩は前政権関係者や共和党の議員の間で衝撃と懸念を呼んでいる。
台米防衛の交流と軍事調達の調整
消息筋によると、台湾と米国の防衛当局者は8月、アラスカ州アンカレッジで会談し、大規模な武器売却について合意に達した。台湾側は現在立法院で審議中の追加国防予算を活用し、数十億ドル規模に及ぶ可能性のある新たな兵器購入を進める計画であり、その中心は無人機、ミサイル、沿岸センサーといった「非対称装備」に置かれている。ただし、これらの新世代システムの引き渡しには数年を要するとみられる。一方で台湾は、すでに契約済みで総額数十億ドルに上る兵器の到着を依然として待っており、その中にはF16戦闘機や「ハープーン」対艦ミサイルが含まれる。これと並行して、米議会関係者の一人は、トランプ政権が今週、対台湾で総額5億ドル(約1515億円)の武器売却を行う可能性について非公式に通知したと明らかにしたが、その詳細はまだ公表されていない。
「援助の一時停止」の背景にある政策論理
報道によれば、トランプ政権は台湾の経済規模や財政能力を踏まえ、イスラエルや一部の欧州同盟国と同様に、台湾は自らの資金で重要な戦力を調達すべきだとの立場を示している。この見方は一部の民主党議員からも支持を得ているという。より広い対外的なメッセージという観点では、トランプ氏は今年、中国に対して貿易面で圧力を強める一方で、台湾による米国の半導体技術窃取を非難し、また米台高官級の防衛会談を中止するとともに、頼清徳総統の8月のニューヨークとダラス経由の訪米も思いとどまらせた。ただし同氏は繰り返し「自らの任期中に中国が台湾へ侵攻することはない」と強調しており、交錯するメッセージは、ワシントンが「対中交渉のカード」と「対台湾の安全保障上の約束」の狭間で揺れていることを浮き彫りにしている。
重要な節目とその後の変数
- 夏の決定ウィンドウ:ホワイトハウスは対台湾4億ドル規模の援助を最終決定せず、一時的に保留。内容には弾薬や自律型無人機が含まれる。
- 対中戦略の計算:一部ハイテク分野の規制緩和やTikTok禁止法の不実施を通じ、貿易協定と米中首脳会談に向けた余地を確保。
- 台米軍事調達ライン:アンカレッジ会談を経て、台湾は追加予算で「非対称装備」の拡充を計画。既存のF16戦闘機やハープーン対艦ミサイルの納入はなお待機中。
- 議会の動向:行政当局は議会に非公式で通知、総額5億ドル規模の対台湾武器売却の可能性を検討中。
- 戦略的リスク:援助スケジュールや納入期間の長期化が、台湾海峡での即時的かつ持続的な抑止力を試す局面となっている。
編集:柄澤南 (関連記事: 《ワシントン・ポスト》独占報道:トランプ氏、習近平氏との取引で台湾軍事援助4億ドル停止か | 関連記事をもっと読む )
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