米国の保守派政治評論家チャーリー・カーク氏(Charlie Kirk)が先週ユタ州で殺害され、全米に衝撃が広がった。『ニューヨーク・タイムズ』によると、検察は16日、22歳のタイラー・ロビンソン容疑者(Tyler Robinson)を加重殺人など7つの罪で起訴し、死刑を求刑する方針を明らかにした。『ワシントン・ポスト』は同日、ロビンソン容疑者が犯行後に「彼の憎悪発言には耐えられなかった」「交渉では解決できない憎しみもある」と複数の相手に語っていたことを、裁判資料に基づき報じた。
メモとメッセージで浮かび上がる殺人動機
ユタ郡検察官ジェフ・グレイ氏(Jeff Gray)が提出した裁判資料によれば、ロビンソン容疑者はカーク氏の政治的発言に強く反発していた。事件後、ルームメイトは彼の机の下から「チャーリー・カークを抹殺する機会を得た。これから実行する」というメモを発見。恐怖に駆られたルームメイトがメッセージで問い質すと、ロビンソン容疑者は「僕だ、ごめん」と認め、「彼の憎悪には我慢できなかった」と答えたという。このやり取りは、検察が政治的動機に基づく犯行と断定する決定的証拠となった。
カーク氏は若者向け保守団体「アメリカン・ターンニングポイント(Turning Point USA)」を創設し、多様性推進を揶揄し、トランスジェンダーの権利や平等法案に反対するなど過激な言動で知られていた。そのため熱烈な支持者を集める一方で、多くの反発や憎悪も買っていた。
保守的家庭から左派青年へ──容疑者の変化とトランスジェンダーのパートナー
ロビンソン容疑者の家庭環境は事件をさらに複雑にしている。裁判所資料によれば、母親は調査官に対し、息子がここ1年ほどで「政治的に活発になり」、考え方が左派寄りになったと証言。さらに同性愛やトランスジェンダーの権利を強く支持するようになり、ルームメイトと交際していること、その相手が「男性から女性へ移行中のトランスジェンダー」であることを明らかにした。
ユタ州検察に「トランスジェンダー問題が動機に関係するのか」と質問が出たが、グレイ検察官は「法廷資料に記した通り」と述べ、慎重な姿勢を崩さなかった。一方、ユタ州知事スペンサー・コックス氏は、ロビンソン容疑者が「左翼的イデオロギーを持っている」と発言したが、詳細には触れなかった。
事件発生時、カーク氏はユタバレー大学のキャンパスで講演を行っており、そのテーマは「トランスジェンダーによる銃撃事件」だった。ユタ州公共安全部のボー・メイソン専務官(Beau Mason)は、「彼は家族に動機の一部を語っていた。カーク氏の意見に同意できず、憎悪を拡散していると感じた。これはカーク氏個人に対する憎悪に基づく政治的暗殺だ」と明言した。 (関連記事: 米大学でのカーク氏銃撃事件 フィナンシャル・タイムズが警鐘「言論の自由とキャンパスの安全は両立できるのか」 | 関連記事をもっと読む )
銃弾に刻まれたミーム:「ヘイ、ファシスト!受け取れ!」
捜査当局は現場近くで回収したライフル弾に、インターネットやゲーム文化に由来する奇妙な刻字を発見した。この深刻な政治的殺人事件に、思わぬ異様さを添えている。