立憲民主党代表で元首相の野田佳彦氏は17日、日本外国特派員協会(FCCJ)で記者会見を開き、参院選の総括や新執行部の方針、物価高対策、外国人政策、外交・安全保障に至るまで幅広い論点について語った。2011年から2012年に首相を務めた経験を持つ野田氏は、最大野党の代表として「政権を担う準備」を強調し、石破茂首相(自民党総裁)との党首会談実現に強い意欲を示した。

会見では物価や外国人政策から外交安保まで活発に議論が交わされた。野田氏は、野党代表であると同時に元首相という立場を踏まえ、具体的な政策と政権構想を示した。冒頭、7月の参院選について「Hop(衆院)からStep(参院)には進んだが、Jump(次の衆院選)にはつながらなかった。事実上の敗北だった」と総括した。
その理由については「右派ポピュリズムの勢いが強まり、争点を奪われた。若い世代に十分なメッセージを届けられなかったのではないか」と自己分析。さらに「昨年の衆院選では議席を増やしたが、力を発揮しきれなかった」と振り返った。10日に発足した新執行部については「安定と刷新の両立」と位置づけ、「外交や財政に精通した人材を配置する一方で若手も登用した。規制政党のイメージを払拭し、次の衆院選で政権交代を目指す体制を整える」と強調した。
物価高対策については、立民が掲げる「食料品の消費税ゼロ」「ガソリン・軽油価格の抑制」を改めて訴えた。「ガソリン暫定税率を廃止すれば約1兆円の税収減になる。政府は増税で穴埋めしようとしているが、それは筋が違う」と批判。そのうえで「与野党の党首会談を早期に開き、給付付き税額控除をどう加速させるか整理することが大事だ」と述べ、石破首相の在任中に協議を前進させたい意向を示した。また「石破氏の退任までに結論が出なければ、新体制に協議を引き継ぐことを確認したい」とも語った。
外国人政策をめぐる質問に対しては「外国人排斥の言説が広がり、治安悪化と結びつける声もあるが、事実に基づき断固反論する」と強調。さらに、法務省の報告書で「2070年に外国人人口が10%に達する」との試算が示されたことについて、「数字を上限とすべきではない。必要な人材を現実的に受け入れることが重要だ」と述べた。不動産投資の弊害に関しては「冷静に是正する必要がある」としたうえで、「多文化共生社会の実現こそ目指すべきだ」と力を込めた。
外交・安全保障に関しては、「中国への対応をどう考えるか」「首相指名選挙に臨む意思はあるのか」との問いがあった。野田氏は「力による現状変更は断じて許さない。ウクライナや中東も同様で、確実な抑止力と外交努力の両立が基本だ」と回答。首相指名については「機会があれば挑戦したい。ただし、野党間で政権構想を議論することが前提だ」と述べた。
さらに「日韓関係や近隣諸国にどんなメッセージを送るか」と問われると、「韓国との緊密な協力は経済・安保の両面で不可欠だ」と強調。石破政権が韓国訪問に消極的だったことを引き合いに出し、「立憲民主党は与野党を問わず議員交流を続けてきた。今後も安全保障や経済で連携を深めたい」と語った。
質疑応答を通じて、野田氏は「与党との交渉を梃子に野党協調を進める」との戦略を繰り返し訴えた。これまでに与党との協議はすでに5回行われているが、「自民党は具体案を示していない」と批判し、「次の衆院選では野党が誠実に調整し、一丸となって政権交代を実現する」と意欲をにじませた。
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