自民党内の分裂を回避するため、石破茂首相が正式に辞任を表明した。自民党が臨時総裁選挙を実施するかどうかは、8日に決定される予定である。
一方で、日本のメディア関係者で印太戦略研究機構の矢板明夫氏は、石破氏の退陣について「台湾にとっては好ましい出来事だ」と分析。その上で、農林水産大臣の小泉進次郎氏、前経済安全保障担当大臣の高市早苗氏が有力な後継候補として浮上しており、中国や台湾に対する姿勢も注目を集めている。
参院選敗北で辞任に追い込まれる
NHKやTBSの報道によれば、石破氏は7日、参議院選挙での大敗を受け、約2か月にわたる党内からの退陣圧力の末に辞意を固めた。
石破氏は2024年秋に首相に就任したが、直後の衆議院選挙、2025年6月の東京都議会選挙、同年7月の参議院選挙でいずれも敗北。自民党は衆参両院で過半数を失い、結党70年の歴史で初めての事態となった。これにより、党内で石破降ろしの動きが加速した。
「台湾にとって好ましい出来事」矢板氏が分析
石破氏の辞任表明を受け、矢板明夫氏は自身のSNSで「石破氏は過去10年以上の中で最も親中的で、台湾への関心が薄い首相の一人だった。今回の退陣は台湾にとって間違いなくプラスだ」と指摘。さらに、次期首相候補として小泉氏と高市氏を挙げ、「両者の対中・対台姿勢が今後の焦点になる」と述べた。
小泉進次郎 「最強政二代」再び表舞台へ

矢板明夫氏が名前を挙げた2人の有力候補のひとりが、小泉進次郎農林水産大臣(44)だ。元首相・小泉純一郎氏の次男であり、かつては安倍内閣の一員としても活躍した。昨年の自民党総裁選では石破茂氏と争ったが、討論での不振や経験不足が指摘され、3位にとどまり首相就任には至らなかった。
中国との関係については明確な立場を示していない。2013年に自民党青年局長として訪台し、当時の馬英九総統と会談した経歴を持つ。さらに昨年の討論会では「中国は一党独裁から習近平主席による一人独裁に変わった」と発言し、大きな議論を呼んだ。
ただし、対台・対中の具体的な立場は明確ではなく、発言も限られている。一方で「守旧的な日本政治」を批判し、脱原発を主張する姿勢は鮮明だ。同志社大学の中戸佑夫教授は「小泉進次郎の人気の大部分は父・純一郎氏の影響による」と分析している。
高市早苗 「日版鉄の女」初の女性首相へ挑戦

もう一人の注目候補が、前経済安保担当大臣の高市早苗氏だ。安倍晋三元首相の路線を継承する保守派の代表格で、長年にわたり対中強硬姿勢を貫いてきた。台湾支持を明確に表明しており、2025年4月には訪台して賴清德総統や蔡英文前総統と会談している。
「台湾を第二の香港にさせない」と2022年の演説で訴え、台日友好の強化と政策面での連携を主張した。政治一家の出身ではないが、30年以上の政治経験を持つ。2006年に安倍政権で初入閣し、2014年には女性として初めて総務大臣に就任。約1500日の在任期間は歴代最長である。
高市氏は英国のマーガレット・サッチャー元首相を政治的ロールモデルとし、2021年には自民党総裁選に出馬。保守層からの強い支持を得たが、最終的には岸田文雄氏に敗れた。
小泉進次郎か高市早苗か 日本政界の新時代へ
自民党の次期総裁選において、小泉進次郎農林水産大臣が史上2番目の若さで首相に就任するのか、それとも高市早苗前経済安保担当大臣が日本初の女性首相となるのかが焦点となっている。
インド太平洋戦略研究所の矢板明夫氏は「どちらが首相になっても台湾にとっては好ましい」との見方を示している。
総裁選と新首相選出の見通し
矢板氏の分析によれば、自民党は最速で10月4日に臨時総裁選を実施し、10月7日前後に国会で新しい首相を選出する見通しだ。小泉氏か高市氏のどちらが勝ち抜くかは大きな注目を集めるが、両者が敗れ、意外な「ダークホース」が登場する可能性も否定できない。 (関連記事: 石破茂首相が辞任決断 自民党分裂回避へ臨時総裁選の行方に注目 | 関連記事をもっと読む )
編集:梅木奈実
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