北朝鮮の最高指導者、金正恩氏は北京訪問の際、再びロシアのプーチン大統領と対面で会談した。会談の内容に注目が集まる中、外国記者は会談終了後の「細かな対応」に目を留めた。金正恩氏が使用した椅子や机、飲み物用のカップなど、随行する北朝鮮の警護員たちは即座に拭き取り、すべての痕跡を消去した。これは金正恩氏のプライバシーや健康状態に関する情報が、意図せず敵対勢力に漏れるのを防ぐためと見られる。
《ロイター通信》クレムリンの記者アレクサンダー・ユナシェフ氏の映像を引用して報じた。映像には、金正恩氏の随行警護2名が会談室の椅子や机の背もたれ、扶手を丁寧に拭き、金正恩氏専用の飲用カップも回収する様子が映っていた。ユナシェフ氏はこれを「痕跡の消去」と表現し、まるで反スパイ作戦の現場を目撃したかのようだと伝えた。こうした行為は、毛髪や皮膚細胞、唾液などから健康状態を推測される可能性を防ぐことを目的としている。
🤡 All traces of Kim Jong Un were wiped away after his talks with Putin
They took the glass the dictator drank from and thoroughly wiped down the chair he had been sitting in.pic.twitter.com/eTf7f4FAZu— NEXTA (@nexta_tv)September 3, 2025
金正恩氏のこうした徹底ぶりは、移動手段からも見て取れる。『日本経済新聞』によれば、金正恩氏が使用する緑色の専用列車には一連の専用設備が整えられており、専用トイレも備えられている。
米シンクタンク、スティンソンセンターの北朝鮮研究者マイケル・マーデン氏は、「これは金正恩氏独自の対応ではなく、父・金正日氏の時代から続く、出国時の標準的な手順だ」と指摘する。

マーデン氏はさらに、「北朝鮮の職員は専用トイレと大量の専用ゴミ袋を用意し、廃棄物やゴミ、煙草の吸い殻をすべて回収することで、外国の情報機関がこれらの些細な物から分析を行い、金正恩氏の健康状態を探ることを防いでいる」と述べ、どのような可能性も排除するため、ロシアや中国など友好国への訪問であっても決して油断しないと説明した。
「結局、椅子やテーブル、カップでさえ、意図すれば毛髪や皮膚細胞、唾液のサンプルを採取でき、技術を駆使すれば金正恩氏の実際の健康状態を知ることも可能だ」


外国メディアも、金正恩氏が就任以降の海外訪問時に行われた痕跡消去の事例を整理している。
*2019年、金正恩氏はアメリカのトランプ大統領とベトナム・ハノイで首脳会談を行った後、近くの警備員がホテルの部屋を封鎖し、数時間かけて徹底的に清掃。ベッドマットレスを含む備品もすべて持ち去った様子が撮影された。
*2018年、金正恩氏は当時の韓国大統領、文在寅氏と会談した際、北朝鮮の護衛担当者は椅子とテーブルに消毒液を噴霧し、拭き取って清潔に保ち、金正恩氏が安全に座れる状態を確保した。
*2023年、プーチン氏との会談直前も、平壌の随行チームは椅子に消毒液を使用して拭き取り、座席の安全を厳密に確認した。警備員の一人は金属探知機で座席を検査し、わずかな欠陥も見逃さなかった。
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編集:田中佳奈
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