今日(9月3日)は一年一度の「九三軍人節」であり、頼清徳総統は忠烈祠で秋の祭典を執り行った。一方、中国は抗日戦争勝利80周年を記念して、北京で10年に一度の「九三軍事パレード」を開催した。会場には中国の友好国首脳や国際要人も招かれ、最新鋭の解放軍兵器が多数展示され、軍事専門家やミリタリーファンの注目を集めた。
国内の軍事専門家は、解放軍の新型兵器の性能や種類だけに注目するのではなく、戦略的な変化そのものに着目すべきだと指摘している。台湾側も、進化し続ける解放軍にどのように対応するかを真剣に考える必要があるという。
未来はドローンの時代?
元空軍情報参謀官で、軍事関連書籍『戦争下の市民の生存マニュアル』などを執筆し、国立暨南国際大学の「兵棋演習課程(机上で戦略や戦術をシミュレーションする訓練)」で軍事分析を行う邱世卿氏は、九三軍事パレード開始前に風傳媒に対し、今回の解放軍の戦略的視野の広さと深さに非常に驚かされたと語った。
邱氏は、ロシア・ウクライナ戦争や最近のイスラエル・ハマス間の衝突を例に挙げ、無人機が将来の戦場の形態を変える可能性を指摘。「無人機が運用される状況で、対抗手段や反無人機戦術を持たなければ、軍事行動は成立しない」と述べ、解放軍は今回のパレードでその答えを示したと分析した。「この解答は非常に高く評価できる」とも語った。
邱氏によると、九三軍事パレードには大きく三つの目的がある。第一に、各国要人に対する「統一戦線」の発信。第二に、解放軍の実力を誇示することで、戦略的競争相手への威圧。第三に、国内向けに国民の団結を強化し、国家の軍事力への信頼を高めることだ。「三つ目の目的も非常に重要である」と邱氏は強調した。

解放軍戦略「陸から海へ」、米軍抑止の狙い
邱氏はさらに、解放軍の戦略は中国国家全体の軍事戦略と連動しており、陸上中心から海上への展開へと全面的にシフトしていると指摘。「陸から海への展開において、いかに有効な抑止力を提供し、中国の国家利益を守るかが重要」と述べた。
邱氏は、海上での軍事対抗の最終目標は、航空母艦を中心とした戦力形成にあると分析。非公式情報では、三隻目の航空母艦「福建艦」が今年9月に就役予定だという。
また、今回のパレードで披露された兵器は、反弾道ミサイルや対艦兵器を含む、多様な攻撃手段を備えた世界でも最も包括的な兵器体系である。もしこれらの打撃手段が実際に機能すれば、米軍の西太平洋での航空母艦戦闘群は甚大な損害を被る可能性がある。
邱氏は、このパレードの戦略的目的を「米国に大きな損失のリスクを意識させ、西太平洋での軍事行動や介入の意欲を減少させること」と解説。「以武止戈」、すなわち軍事力の提示による抑止で、解放軍が自国の戦略的優位を確保する狙いがあるとした。 (関連記事: 【写真特集】中国、二戦勝利80周年で軍事パレード開催 新型ICBM「DF-61」や無人潜航艇を初公開 | 関連記事をもっと読む )

台湾は未来にどう備えるべきか
邱世卿氏は、台湾軍は決して「軟弱ではない」と強調する。国軍には独自の対応手段があるものの、台湾は解放軍が年々強化される現実から目をそらすことはできない。政府や国軍がまず取り組むべき課題は、自身の軍事観が既に時代遅れになっている可能性を正面から認識することだという。