高市早苗首相が国会で、台湾有事の際には「集団的自衛権」の行使を含む対応に言及したことが、国内外で大きな議論を呼んでいる。中国側の反発も加わり、日中関係の緊張が高まる中、今週金曜夜、首相官邸前では市民団体が抗議集会を実施。「戦争を煽る発言をやめよ」「発言の撤回を求める」といった声が相次いだ。
集会には数百人が集まり、沖縄出身の大学生、崎浜空音氏が登壇。故郷を戦争の当事者にも、加害者にもしたくないと訴え、「外交と対話こそが平和への道だ」と語りかけた。崎浜氏はその後『風傳媒』の取材に応じ、沖縄の歴史やアイデンティティ、政治への思いを語った。
沖縄出身の日本人女子大学生・崎浜空音氏が、21日に首相官邸前で行われた抗議デモの中でスピーチを行う様子(写真/崎浜空音氏提供)
沖縄出身の女子大生 現在、東京の名門・慶應義塾大学の4年生として学ぶ崎浜空音氏は、父親が沖縄本島、母親が石垣島の出身だ。幼い頃から在日米軍嘉手納空軍基地の近くで育ち、家のすぐそばに軍事基地があることによる圧力や恐怖を、日常の一部として感じてきたという。抗議行動に参加する前に『風傳媒』の単独インタビューに応じ、沖縄の人々は平和を愛し、世界中の人々が平和の中で暮らせることを願っているとして、「どこにも戦争が起きてほしくない」と語った。
崎浜氏によれば、沖縄には基地が極めて高い密度で集中しており、住民にとって長年にわたり大きな負担となってきた。たとえばベトナム戦争期には、彼女の故郷にある嘉手納空軍基地から米軍のB52爆撃機が飛び立ち、ベトナムで多くの犠牲者を出したという。そのため沖縄が「悪魔の島」と呼ばれることもあり、沖縄の人々の複雑な心情につながっていると話す。「私たちは加害者になりたくない。誰かを傷つけたくない」とも述べた。
首相官邸前でのスピーチでは、「私たち沖縄の人々は、(第二次世界大戦の)沖縄戦の被害者であるだけでなく、そこに軍事基地が設けられたことで、戦争の加害者にもなってしまった」と強調。「戦争に関わることは、私たち自身がその渦中に巻き込まれるだけでなく、他国の人々を殺害する加害者にもしてしまう」と訴えた。
また崎浜氏は、自衛隊がすでに石垣島に配備され、島外への避難計画も整備されている一方で、沖縄本島には多くの米軍基地が存在している現状を指摘した。そのうえで、「もし中国と日本の間で戦争が起きたとしたら、最初の標的はどこになるのか」と問いかけ、「軍事力が集中している場所であることは明らかだ」と述べた。「日本においてそれは沖縄諸島を意味する。私たち沖縄の人々は、あの惨烈な沖縄戦を経験したにもかかわらず、再び『日本を守る戦争』の最前線に立たされている」と危機感を示した。
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1945年、米軍は沖縄に上陸し、激しい地上戦となった沖縄戦が繰り広げられた(写真/AP通信)
沖縄戦がもたらした大きな傷跡 第二次世界大戦における沖縄戦は、沖縄の人々にとって非常に悲痛な歴史の一頁となっている。激しい戦闘と日本軍の抵抗戦術により、米日両軍の兵士だけでなく、多くの一般住民も甚大な被害を受けた。この事実は、崎浜氏の家庭を含め、沖縄の家庭に今なお重くのしかかっている。
崎浜氏は『風傳媒』の取材に対し、80代の祖母が沖縄戦の生存者として今も健在だが、一方で多くの親族が沖縄戦で命を落としたと明かした。戦後80年以上が経過した現在も、日本政府が沖縄の人々に対して謝罪したことはなく、補償も行われていないとし、「日本政府には、戦争によって沖縄にもたらした被害について、沖縄の人々にきちんと謝罪してほしい」と求めた。
さらに、東京は自らの利益と視点から安全保障を考えているとしたうえで、中国と日本の間、あるいは台湾海峡で戦争が勃発した場合、東京の住民は避難することができ、政治家も退避できる一方、政府は首相官邸や皇居、東京の防衛に重点を置くだろうと語った。「そのとき沖縄は、犠牲にしてもよい存在として扱われてしまうのではないか」との懸念も示した。
第二次世界大戦で最も深い傷を負った地域として、戦争を体験した沖縄の高齢世代を含め、誰も戦争の悲劇が繰り返されることを望んでいないと強調する。崎浜氏は、いかなる国であっても戦争や内戦、ジェノサイドに反対する姿勢を示し、「私たちは高市首相に発言を撤回させることで今回の抗議を終わらせるのではなく、むしろ一層団結し、戦争を食い止めるために行動し続けるべきだ」と語った。
2025年6月23日、沖縄県糸満市の平和祈念公園で行われた沖縄戦終結80年の追悼式典で、石破茂首相が演説した(写真/AP通信)
沖縄の人々は「琉球独立」をどう見ているか 崎浜氏は『風傳媒』の取材に対し、「台湾の人たちなら、沖縄の人々の感情をよく理解できるはずだ」と語った。台湾と沖縄は歴史的・文化的な共通点が多く、その位置づけも似ていると指摘する。また、保守系の沖縄の政治家であっても、多数の軍事基地が島にもたらしている被害を本質的には理解しているとしつつ、「それを公然と言うのは難しいのかもしれない」とも述べた。その背景には、日本の中央政府からの予算や、国政レベルの「舞台」やポストに依存せざるを得ない現実があるとみている。
一方で、外部からたびたび取り上げられる「琉球独立」問題については、沖縄のリベラル派が掲げる主張が「親中派」だからだという誤解が、一部日本メディアの間にも存在すると説明する。崎浜氏は、彼らは日本の右傾化や高市政権に反対しているが、それは沖縄も日本も戦争に巻き込まれたくないからであり、「決して親中的な立場だからではない」と強調している。
沖縄の将来の位置づけについて、崎浜氏は「沖縄の人々が第一に望んでいるのは、自らの力による独立だと考えている」と語る。「それが何十年後になるのか、あるいは千年先になるのかは分からないが、現時点でも経済面・政治面で日本本土から自立してほしいと思っている」と話す。そのうえで、「沖縄の主要産業は観光だが、観光にはシーズンの波やリスクがある。だからこそ、沖縄は別の産業を育てていく必要があるかもしれない」と付け加えた。
沖縄の観光地は、台湾からの旅行客にも高い人気を集めている(写真/AP通信)
では、中国が琉球独立を支持すると主張した場合、沖縄の人々はどう受け止めるのか。崎浜氏は、多くの沖縄の人々はそうした主張に慎重で、「将来的に別の形で再び『植民地化』されるのではないか」と懸念していると話す。自身の見方として、日本政府はそもそも沖縄を「事実上の植民地」として扱ってきた側面があると指摘し、「東京にいるとその感覚が薄れてしまうこともあるが、沖縄に戻ると、その構図がよく見えてくる」と語った。
代々沖縄に暮らしてきた家族の一員として、崎浜氏は、日本政府はもはや沖縄の利益を十分に代弁できていないと感じていると述べ、沖縄が独自の外交的な立場を持つことへの期待を示した。「沖縄は歴史的にも文化的にも日本とは違う。しかし、その沖縄の人々が、自分たちの言葉や文化を失いつつある」と危機感をあらわにする。
将来を見据えて、崎浜氏は「沖縄を再び戦場にしてはならない」と訴える。そのうえで、「高市首相に発言を撤回させることだけで今回の抗議を終わりにするのではなく、むしろ一層団結し、戦争を食い止めるために行動し続けなければならない」と強調している。