舞台裏》台湾・柯文哲前台北市長の2か月の沈黙 AIと何を探り、何を構想していたのか

2025-11-24 18:02
民衆党創設者の柯文哲氏(写真)は出獄後、ほとんど公の場に姿を見せず、公式スケジュールも公表していない。自宅で「オタク生活」を送っているとされる。(写真/柯承惠撮影)
民衆党創設者の柯文哲氏(写真)は出獄後、ほとんど公の場に姿を見せず、公式スケジュールも公表していない。自宅で「オタク生活」を送っているとされる。(写真/柯承惠撮影)
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台湾民衆党の創設者・柯文哲氏は、2025年9月中旬に勾留・接見禁止が解除されてから、すでに2か月以上が経過した。この間、柯氏は何をしていたのか。本人は公式チャンネルの動画で「ほとんど一日中自宅でインターネットをして、ネット上をあちこち見て回っている」と語っている。台湾の野党・民衆党の現任主席である黃國昌氏によれば、柯氏とは頻繁に意見交換しており、週に2回は顔を合わせているという。黃氏は、国民党の鄭麗文主席と会う前日の午前1時にも、柯氏からメッセージが届いたと明かした。

また、妻の陳佩琪氏もフェイスブックで、最近の柯氏は動画撮影や運動、トレーニング、会議、旧友との再会に加え、医学関連の講座にも通っていると説明。さらに、この1年の間に自分の知らないうちに起きた出来事を知ろうと、ユーチューブで関連動画をよく視聴しており、「AIは本当に便利だ」と何度も口にしていると綴った。

柯文哲妻子陳佩琪透露,柯文哲(見圖)回家近兩個月,最常坐在電腦桌前努力學習新知識。(取自陳佩琪臉書)
「理性・務実・科学」を掲げる柯文哲氏は、3C機器やAIにも精通しており、決して“時代遅れのオジサン”ではないという。(画像/陳佩琪氏フェイスブックより)

柯文哲氏、AI研究のため人生初のクレジットカー

今年66歳の柯文哲氏は、支持者から「阿北(アーベイ=おじさん)」と呼ばれてきたが、最近は自らを「阿公(アーゴン=おじいさん)」と自嘲することもある。見た目だけを見ると3C機器(PC・通信機器など)に不慣れな高齢者のようにも映るが、実際にはインターネットが好きで、パソコン操作にも長け、自作のPPT資料を頻繁に作るタイプだ。新しいテクノロジーを研究するのが好きで、過去には自らGoogleトレンドを使って、どの政治家やテーマの「声量」(ネット上での注目度)が高いかを分析していた。2023年の総統選に出馬した際には、「その年の人類史で最も重要な出来事はChatGPTの誕生だ」と述べ、AIが人間社会に本格的に登場した象徴だと位置づけ、今後人々の生活様式はAIによって必然的に変化していくとの見方を示していた。

柯氏は勾留されていたこの1年間、拘置施設内でAI、情報技術、半導体に関する書籍を数多く読み込んでいた。釈放後は、改めて「AIこそ時代の大きな潮流だ」と強く認識し、この1年でAIがどこまで進化したのかを知ろうと、自ら積極的に大型言語モデル(LLM)を基盤とする生成AIチャットボットの使い方を学び始めた。ChatGPT、Google Gemini、DeepSeekなど、主要な生成AIは一通り試しているという。 (関連記事: 舞台裏》台湾・国民党に「隠れ実力者」副主席 鄭麗文主席が起用した蕭旭岑氏は柯文哲氏と習近平氏を結ぶパイプ役 関連記事をもっと読む

関係者によれば、現在もっとも頻繁に使っているのはChatGPTだという。興味深いのは、月額690台湾ドルの有料版ChatGPTを利用するため、それまでクレジットカードを持っていなかった柯氏が、わざわざ人生初のクレジットカードを作ったことだ。かつて自らを「一番倹約する市長」と称していた柯氏だが、側近には「AIは必ず使えるようにならないといけないし、使うからには最新かつ最強のモデルを使うべきだ。だから自分と同じく有料版を使ったほうがいい。お金を払わなければ、使えるのはごく初歩的で「アウトデート(過去世代)」のモデルに限られてしまう」と話しているという。

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