台湾の前台北市長の柯文哲氏は京華城事件に関連して1年以上勾留されていたが、先ごろ保釈金7,000万元を納付して保釈された。しかし、台北地検が即座に抗告し、これが認められたことで今後の展開に注目が集まっている。これを受け、台湾民意基金会は「柯氏の1年に及ぶ勾留・接見禁止は頼清徳政権による政治的迫害ではないか」という世論調査を実施。その結果、賛否が拮抗する構図となったが、前回調査と比べると「政治迫害だ」と同意する層は8ポイント上昇し、不同意は7.9ポイント減少した。同基金会の游盈隆董事長は「台湾の世論は大きく転換し、この8か月間で柯氏に同情する人が150万人以上急増した」と述べた。
調査では、「柯文哲氏が1年間勾留・接見禁止とされたのは頼清徳政権による政治迫害だと思うか」と問いかけたところ、「非常に同意」20.2%、「ある程度同意」21.5%、「あまり同意しない」22.0%、「全く同意しない」22.6%、「意見なし」9.6%、「わからない・回答拒否」4.1%という結果であった。すなわち、20歳以上の台湾人のうち42%が「政治迫害」とみなし、45%が不同意で、不同意が同意を2.9ポイント上回った。
游氏は、「この結果は重大なメッセージを示している。すなわち台湾社会は、柯氏の勾留が頼政権による政治迫害かどうかについて深刻な分裂状態にあり、全く合意が形成されていない。多数はなお政治迫害ではないとみているものの、この事件が極めて強い政治的緊張を帯びた司法案件へと変質していることを意味している」と指摘した。

游盈隆氏はさらに分析を加えた。今回の調査結果を2025年1月、柯文哲氏が3度目の勾留・接見禁止となった時点の同様の調査と比較すると、「頼清徳政権による政治迫害」との見方に同意する人は8ポイント上昇し、不同意は7.9ポイント下落した。この推移により、当初は18.8ポイントも開いていた不同意と同意の差が15.9ポイント縮小し、現在はわずか2.9ポイントにまで迫っている。台湾では1ポイントが約19万5千人に相当するため、15.9ポイントはおよそ310万人に及び、過去8か月でこれだけの人々が態度を変えた計算になる。これは世論の大きな反転を意味し、柯氏に同情する層は150万人以上増加したことになる。背景にどのような要因があるのか、今後の分析が注目される。
游氏によれば、詳細に見ると8か月の間に「非常に同意」が6.5ポイント上昇し、「ある程度同意」も1.5ポイント増加した。一方で、「あまり同意しない」は3.6ポイント、「全く同意しない」は4.3ポイントそれぞれ減少。「意見なし」は2.6ポイント増えており、世論の構図が大きく動いたことが浮き彫りになったという。

游盈隆氏は、柯文哲氏の案件は台湾社会で高度な関心を集める司法案件であり、当初から強い政治色を帯び、頼清徳政権による政治的迫害との指摘すらあると述べた。最大の理由は、柯氏が民衆党主席であり、2024年総統選の候補者として高得票ながら落選した当事者であるためである。こうした状況を踏まえ、台湾民意基金会は昨年9月以降、三つの重要時点で全国世論調査を三度実施し、柯案が頼政権による政治迫害か否かを測った。その結果、明確な趨勢が示され、「政治迫害である」とみなす層は1年で13.1ポイント急増し、「政治迫害ではない」とみる層は10ポイント減少した。かかる重大な世論の転換はいかに、なぜ生じたのか。その政治的含意は何か、現在いかなる政治的衝撃と影響をもたらしているのか――今後の精査が求められる。

今回の調査は、台湾民意基金会の游盈隆教授が、質問票の設計、報告書の執筆、調査結果の解釈、そして公共政策や政治的含意の分析を担当した。実施業務は同基金会から委託を受けた山水民意研究公司が担い、主にサンプリング設計、電話インタビュー、データの整理および統計分析を行った。
調査期間は2025年9月8日から10日までの3日間で、対象は全国の20歳以上の成人。有効サンプル数は1,077人で、市内電話が753人(70%)、携帯電話が324人(30%)であった。サンプリング方法は、市話と携帯電話を併用する「デュアル・フレーム抽出法(dual-frame random sampling)」を採用。95%の信頼水準における抽出誤差は±2.99ポイントである。
また、調査結果が母集団構造を反映するよう、内政部の最新人口統計を基に、地域、性別、年齢、学歴の分布で加重を行った。調査経費は財団法人台湾民意教育基金会(略称:台湾民意基金会、TPOF)が負担した。
編集:柄澤南 (関連記事: 台湾・柯文哲氏の7000万元保釈取り消し 台北地検の抗告認められ高裁が差し戻し 3つの理由を指摘 | 関連記事をもっと読む )
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