2025年9月2日、東京の日本外国特派員協会(FCCJ)において、パレスチナ常駐代表部のワリード・シアム大使が記者会見を行い、イスラエルによる攻撃で壊滅的被害を受けたガザの現状を訴えた。会見は終始英語で行われ、多数の国内外メディアが参加した。

シアム大使は冒頭、「ガザはもはや世界最大の野外刑務所から世界最大の墓場に変わってしまった」と強調した。イスラエル軍の攻撃によって75%のガザ地域が破壊され、病院や学校、モスク、教会、難民キャンプが次々と爆撃され、多くの女性や子どもが瓦礫の下に埋もれたと述べた。さらに「飢餓が兵器として利用されている」と指摘し、124人の子どもを含む数百人が餓死した事実を明らかにした。

大使はまた、イスラエル政府がパレスチナ人を「人間の動物」と呼ぶなどの非人間化言説を用いていると批判し、「これは民族浄化であり、ジェノサイドだ」と断じた。報道関係者に向けては「270人を超えるジャーナリストが殺害され、沈黙させられている」と訴え、記者たちに連帯を呼びかけた。
シアム大使は、国際社会に対してパレスチナ国家の承認を強く求めた。「承認はパレスチナへの贈り物ではない。国際法上の義務であり、平和への唯一の道だ」と強調した。イスラエルの「大イスラエル構想」が周辺諸国を危機に陥れているとし、国境を確定させることが地域と世界の安全保障につながると訴えた。また「イスラエルの占領が暴力の根源であり、和平の障害だ」と語った。

質疑応答では、米国のドナルド・トランプ大統領が提案した「ガザを観光リゾート化する構想」に関する質問に対し、「ガザは売り物ではない。我々自身の手で未来を築く」と強く否定した。また、アメリカがパレスチナ代表への国連ビザを拒否した件について「我々の声を恐れている証拠だ」と述べた。さらに「日本は人道援助と二国家解決支持の歴史を持ち、いまこそパレスチナ国家を承認すべきだ」と日本政府への期待を表明した。
記者から、日本がパレスチナ国家承認をためらっている理由について問われると、「日本が経済的にも外交的にも難しい局面にあることは理解している。しかし、承認を先延ばしするたびに人命と土地が失われている」と述べ、「日本は歴史の正しい側に立つべきだ」と強調した。
会見の終盤、大使は自身の故郷ガザで家族を失った経験を語り、「失われた命は取り戻せない。しかし希望は残っている。パレスチナ人は屈しない」と語気を強めた。そして「自由と尊厳、国家を求めることが論争的であるならば、なぜパレスチナ人だけが基本的人権と自由を否定され続けているのか。それこそが本当の論争だ」と締めくくった。
編集:柄澤南 (関連記事: イギリスがパレスチナ国家承認をめぐり疑問の声 『テレグラフ』:実在する国「台湾」をなぜ承認しないのか? | 関連記事をもっと読む )
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