7日に辞任した日本の石破茂首相は「国内要因」による退陣とされている。しかし、先週発効した日米貿易協定の内容を見れば、むしろこの協定に署名した責任を取って退陣すべきであったとの印象を受ける。なぜなら、この協定はきわめて不合理で、不平等かつ屈辱的であり、主権国家の権利さえも奪う性格を持つ条約だからである。経済的な観点から見ても、日本は大幅な損失を被る内容となっている。
日米半導体協定よりも厳しく、「主権が不完全な国家」との評価
先週木曜日、アメリカのトランプ大統領が大統領令に署名し、日米貿易協定が正式に発効した。これまで一部の協定内容が漏れ伝えられていたものの、明確な確認はなく、詳細も乏しかった。中には「日本が数千億ドル規模の対米投資を約束した」との報道についても、米側は「資金を投資し、その使途はトランプ大統領が決定する」と主張する一方、日側は「日本政府が直接出資するのではなく、民間投資を後押しする融資保証にすぎない」と説明するなど、食い違いが目立っていた。
しかし、協定発効後に両国政府が公表した共同声明と覚書(MOU)には、投資のガバナンス構造、意思決定手続き、利益配分の仕組みが詳細に盛り込まれていた。
その内容を見れば驚愕するほかなく、これが二つの主権国家の間で結ばれた貿易協定であることを信じ難い。約5,500億ドルに及ぶ投資の権限と利益は徹底的に米国側へ集中しており、率直に言えば、日本はほぼ役割を持たず、資金を拠出し収奪される立場に過ぎない。この協定は、かつての「日米半導体協定」をも上回る苛烈さであり、日本が「主権の不完全な国家」であることを如実に示すものである。
米シンクタンクのハドソン研究所が整理したMOUの要点によれば、日本はトランプ大統領の任期が終了する2029年1月19日までに5,500億ドルを拠出し、投資対象は半導体、製薬、重要鉱物、造船、エネルギー(パイプラインを含む)、AIや量子コンピューティングなどの戦略分野に集中することが義務付けられている。
トランプ卸任前に資金が整う、利益分配は米国に集中
この規定には二つの大きな意味がある。第一に、当初「投資の約束」はトランプ大統領の任期満了まで先延ばしにできるのではないかとの見方があったが、今回の合意ではそれが不可能であることが明確になった点である。これに比べれば、米国企業──Apple、NVIDIA、Meta、SoftBankなど──がトランプ氏の前で5,000億ドル、6,000億ドル規模の投資を口にすることは少なくとも「期限」が設けられておらず、単なるリップサービスにとどまっても差し支えない。
第二に、日本が「5,500億ドルを拠出する」と明記されたことは、既存の民間企業による投資をそのまま流用してごまかすことは難しいことを意味する。日本政府が主導して民間企業を動員し、米国指定の分野に投資させるのか、あるいは「自ら資金を拠出する」のか(その資金は一体どこから調達するのか)にかかわらず、きわめて「重く」、達成の困難な義務である。
さらに協定の不平等性、ひいては日本が主権国家としての地位を失ったことを際立たせるのは「利益配分」の仕組みである。
合意によれば、これらの投資から得られる利益は当初、日米が50対50で折半する。ところが日本が投資額を回収した後は、利益配分が米国9割、日本1割へと変わる。率直に言えば、資金を100%拠出するのは日本であり、通常の商業的観点からすれば米国が利益を分配される根拠は存在しない。
しかも投資はすべて米国内で行われ、米国はそれ自体で数多くの利益を得る。雇用の増加、GDPの成長、税収の拡大(営業税から法人税、さらには波及する財政効果まで)といった恩恵に加え、投資対象は米国が国家安全保障などの観点から必要とする分野や事業(例:アラスカ天然ガスパイプライン計画)に限定されている。すなわち、日本は米国の必要事業に資金を提供して支える立場であるにもかかわらず、投資回収前には利益の半分を、回収後には実に9割を米国が取る仕組みとなっている。
大きな損失、113億ドルの関税削減に5500億ドルを支払い
投資対象や金額の決定は、米国商務長官を議長とする投資委員会が推薦・監督を担い、さらに日米双方の代表からなる諮問委員会も設置される。形式上は日本にも特定の案件を拒否する権利が与えられているが、その場合、米国は報復措置として関税を課すことが可能である。実際には、日本は米国側が提示する投資案件すべてを引き受けざるを得ない仕組みである。
日本にとってこの取引は明らかに不利である。計算は難しくない。協定締結前、トランプ政権が日本に課す関税は25%であったが、協定後は15%に下げられた。すなわち日本は年間で10ポイント分の関税を減免されることになる。日本の対米輸出額が年間1,130億ドルであることを踏まえると、削減額は113億ドルとなる。
ところが、日本は5,500億ドルを拠出し、主導権を持たないまま利益を「上納」する形で米国に投資することになる。これは完全に割に合わない取引である。仮にこの5,500億ドルを関税負担の軽減に充てれば、50年間は賄える計算になり、その方がはるかに合理的である。
さらに言えば、この113億ドル分の関税は必ずしも日本が直接負担するものではない。トランプ政権の関税は実際には米国の輸入業者や消費者が支払うコストである。今年に入り米国の関税戦争は激化したが、学者の統計によれば米国の輸入品価格は「横ばい」であった。言い換えれば、関税の大部分は米国企業と消費者が吸収しているのである。各国がトランプ関税を恐れるのは、心理的な恐怖に加え、自国製品が米国市場で値上げを余儀なくされ、競争力を失うことを懸念するためにほかならない。
教訓を得、台湾はトランプの要求を拒絶すべきだ
日本が米国に輸出する製品がそこまで競争力を失い、容易に代替されるだろうか。必ずしもそうではない。加えて、経済主体は国家から産業、企業、さらには個人に至るまで、圧力にさらされつつも適応し変化に対応する力を備えている。振り返れば、中国は2018年以降、トランプ政権による25%関税の圧力に直面しながらも、対外貿易の構造を調整し続け、今日に至っても米国市場で重要な地位を維持していることがその証左である。
台湾は日本がこの不平等条約を締結した教訓を汲み取り、あらゆる局面におけるコストとベネフィットを精緻に試算・分析し、起こり得る情勢変化を見極めるべきである。そうすることで、トランプ氏の「吸血鬼的要求」を拒むだけの自信を持つことができるだろう。