呂紹煒コラム:大きな損失、台湾は米日の不平等条約の轍を踏むな

2025-09-10 11:23
日米貿易協定は不平等条約であり、日本の「主権不完全国家」という面を明確に示している。今年2月、トランプ大統領と石破茂首相がホワイトハウスで会談した時の様子。(写真/AP通信提供)
日米貿易協定は不平等条約であり、日本の「主権不完全国家」という面を明確に示している。今年2月、トランプ大統領と石破茂首相がホワイトハウスで会談した時の様子。(写真/AP通信提供)
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7日に辞任した日本の石破茂首相は「国内要因」による退陣とされている。しかし、先週発効した日米貿易協定の内容を見れば、むしろこの協定に署名した責任を取って退陣すべきであったとの印象を受ける。なぜなら、この協定はきわめて不合理で、不平等かつ屈辱的であり、主権国家の権利さえも奪う性格を持つ条約だからである。経済的な観点から見ても、日本は大幅な損失を被る内容となっている。

日米半導体協定よりも厳しく、「主権が不完全な国家」との評価

先週木曜日、アメリカのトランプ大統領が大統領令に署名し、日米貿易協定が正式に発効した。これまで一部の協定内容が漏れ伝えられていたものの、明確な確認はなく、詳細も乏しかった。中には「日本が数千億ドル規模の対米投資を約束した」との報道についても、米側は「資金を投資し、その使途はトランプ大統領が決定する」と主張する一方、日側は「日本政府が直接出資するのではなく、民間投資を後押しする融資保証にすぎない」と説明するなど、食い違いが目立っていた。

しかし、協定発効後に両国政府が公表した共同声明と覚書(MOU)には、投資のガバナンス構造、意思決定手続き、利益配分の仕組みが詳細に盛り込まれていた。

その内容を見れば驚愕するほかなく、これが二つの主権国家の間で結ばれた貿易協定であることを信じ難い。約5,500億ドルに及ぶ投資の権限と利益は徹底的に米国側へ集中しており、率直に言えば、日本はほぼ役割を持たず、資金を拠出し収奪される立場に過ぎない。この協定は、かつての「日米半導体協定」をも上回る苛烈さであり、日本が「主権の不完全な国家」であることを如実に示すものである。

米シンクタンクのハドソン研究所が整理したMOUの要点によれば、日本はトランプ大統領の任期が終了する2029年1月19日までに5,500億ドルを拠出し、投資対象は半導体、製薬、重要鉱物、造船、エネルギー(パイプラインを含む)、AIや量子コンピューティングなどの戦略分野に集中することが義務付けられている。

トランプ卸任前に資金が整う、利益分配は米国に集中

この規定には二つの大きな意味がある。第一に、当初「投資の約束」はトランプ大統領の任期満了まで先延ばしにできるのではないかとの見方があったが、今回の合意ではそれが不可能であることが明確になった点である。これに比べれば、米国企業──Apple、NVIDIA、Meta、SoftBankなど──がトランプ氏の前で5,000億ドル、6,000億ドル規模の投資を口にすることは少なくとも「期限」が設けられておらず、単なるリップサービスにとどまっても差し支えない。

第二に、日本が「5,500億ドルを拠出する」と明記されたことは、既存の民間企業による投資をそのまま流用してごまかすことは難しいことを意味する。日本政府が主導して民間企業を動員し、米国指定の分野に投資させるのか、あるいは「自ら資金を拠出する」のか(その資金は一体どこから調達するのか)にかかわらず、きわめて「重く」、達成の困難な義務である。

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