張鈞凱のコラム:九三軍事パレードと台湾人の抗日史 洪秀柱出席の波紋と忘れられた記憶

2025-09-08 16:30
中国共産党が九三軍事パレードを行い、国民党の洪秀柱前主席が天安門城楼に姿を現した。(写真/CCTVより)
中国共産党が九三軍事パレードを行い、国民党の洪秀柱前主席が天安門城楼に姿を現した。(写真/CCTVより)
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中国で九三軍事パレードが先日開催された。出席した台湾人は当初の予想より少なく、天安門城楼に登った台湾代表はさらに限られていた。民進党政権による威嚇が、確かに萎縮効果を及ぼしたと推測できる。今回最も注目を集めたのは、国民党前主席の洪秀柱氏の出席である。これに対し、与党・民進党は総力を挙げて批判し、野党・国民党は予想通りほとんど擁護せず、むしろ訪日団を組織して「日台友好」を強調する姿勢を示した。

忘れられた台湾人の抗日史、抗戦は政党を超え、両岸をも越えて証言する

頼清徳政権は明確に立場を示し、「抗戦」を「終戦」に置き換え、公式には「欧州戦勝記念」を大々的に行う一方で、「抗戦勝利」については黙殺し、記念文集の出版も中止した。ゆえに民間で行われる記念活動は一層貴重なものとなっているが、その言説は意識的か無意識的かにかかわらず対抗的な色合いを帯び、国民政府と国軍の指導的貢献を強調し、中共には抗戦を記念する資格がないと批判、さらには「14年抗戦」を否定して「8年抗戦」の「正統性」を際立たせようとする傾向を示している。結果として、いわば「藍緑共識」とも言える現象が形成されている。

冷静に見れば、北京当局が九三軍事パレードに付した正式名称は「中国人民抗日戦争並びに世界反ファシズム戦争勝利80周年記念大会」であり、主語は「中国人民」であって「中国共産党」ではない。また、中共の抗戦史観において用いられる「中流の砥柱」という表現も、論述の中では国軍が正面戦場で払った功績や犠牲を否定していない。第二次世界大戦の東方戦線の主要戦場となった中国は、実に3,500万人の軍民が死傷し、最終的に惨烈な勝利を得た。抗日戦争の主体は中国人民であり、中華民族であるはずであり、政党間のイデオロギー対立の枠を超えるべきである。

そうでなければ、台湾人民が持つ反植民地主義の抗日という栄光の歴史は、あたかも付属品のように扱われ、民族全体の抗戦史という有機的構成から切り離されてしまう。そればかりか、政権の「終戦史観」によって台湾人は「敗戦者」として踏みにじられ、分断意識や被害者意識を政治的に操作される危険がある。

新北市蘆洲の李氏一族に生まれた李友邦将軍は、台湾の民間で広く敬われている。日本統治時代、彼は「台湾を救うには、まず祖国を救わねばならない。台湾革命の成功を望むなら、まず中国抗戦の勝利に尽くさねばならない」という著名な論を唱え、「祖国防衛と台湾回復」を主張した。廈門・南普陀寺の石壁には、抗戦勝利後に李友邦が台湾に戻る前に刻んだ「復疆」の二字が今も残されている。 (関連記事: 中国「九三軍事パレード」で米日を挑発、台湾を威嚇?在日研究者「国際秩序への脅威」 関連記事をもっと読む

廈門南普陀寺の石壁には、李友邦将軍が1945年9月に台湾に戻る前に刻んだ「復疆」の二字が残っている。(張鈞凱撮影)
廈門南普陀寺の石壁には、李友邦将軍が1945年9月に台湾に戻る前に刻んだ「復疆」の二字が残っている。(写真/張鈞凱撮影)

李友邦将軍の言葉は、日本植民地統治下に生きた台湾人民の真実の心情を代弁している。重慶や延安をはじめ、中国大陸各地において、祖国の抗戦に身を投じた台湾人の姿を見ることができるからである。さらに重要なのは、李友邦が率いた台湾義勇隊そのものが、抗日民族統一戦線の産物であった点である。これは抗戦の歴史が、特定の政党や人物の史観に縛られるべきではないことを示している。その意義は国共両党を超え、また両岸をも越えており、だからこそ抗日戦争が世界史における重要な位置を占めることが理解できるのである。

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