中国共産党は今年、抗日戦争勝利80周年を記念して、9月3日に北京で大規模な軍事パレードを実施した。習近平国家主席が演説を行い、整然とした歩兵部隊の行進に加えて新型兵器が次々に登場。アメリカのトランプ大統領や台湾の指導者を含む国内外の注目を集めた。これらの兵器が米軍への対抗手段となるのか、あるいは「台湾統一」を目的としたものなのかが、軍事専門家の焦点となっている。
これに対し、日本に拠点を置く研究者は、「九三軍事パレードは習近平主席、ロシアのプーチン大統領、北朝鮮の金正恩総書記といった権威主義的リーダーが権力を誇示する場だ」と分析する。一方で中国本土の一般市民にとっては、自国が発展し強大になったと実感する「誇りの時代」として受け止められている。台湾側にとっては、新兵器が「武力統一」のための道具となるかどうかが最大の懸念だ。

北京が国際秩序に挑戦
日本の「横須賀アジア太平洋研究委員会(YCAPS)」の政策研究主任、スティーブン・ナギ氏は《風傳媒》の取材に対し、パレードの効果を理解するには「誰に向けられたものか」を考える必要があると述べた。国内向けであれば、中国はすでに変化し、発展し、再び強大になったと強く感じさせる狙いがあり、その誇りは「百年の屈辱」と日本帝国主義を強調した数十年に及ぶ宣伝の上に築かれていると指摘する。
ただしナギ氏は、「九三軍事パレードは現実を誇張し、中国共産党体制が国際社会に突き付ける内部的な課題への関心を欠いている」とも強調。一方で、グローバルサウスや類似の権威主義国家にとっては、中国の招待を歓迎しており、「新しい進路を見出した」と受け止められていると説明した。
さらにナギ氏は、中国の進路は植民地時代の経験や西側支配を克服し、西洋列強が他国を見下す構造を打破するものとして評価されていると分析。今回チェコの指導者も出席したことで、北京が新たな統治モデルを示しているとの印象が広がったという。したがって西側にとっては「プラスとマイナスの両面を含む状況」だと語った。

中国の軍事技術の誇示
一方、「九三軍事パレード」で披露された新兵器について、ナギ氏は「中国が抗日戦争勝利80周年を記念して行ったこのパレードは、アメリカや西側諸国に向けて最も強烈なシグナルを送る場となった」と分析する。すなわち「中国は過去の戦争から学んだ」というメッセージだ。
ナギ氏は、中国が第一次・第二次湾岸戦争、アフガニスタン侵攻、そして最近のウクライナによるロシアへの抵抗などから、どの技術を示すべきかを学んだと指摘。「極超音速ミサイルの公開は目新しくはないが、大陸間弾道ミサイルシステムを含め、無人機戦に関する技術や無人機通信を妨害する技術まで展示された」と述べた。
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そのうえで、次の戦争の勝敗を決めるのは空母のような大型兵器ではなく、より小型で入れ替え可能な無人機システムだと多くの国が考え始めていると指摘。「まるで1996年公開の米映画『インデペンデンス・デイ』のような世界観だ」と例えた。