自民党が総裁選の前倒し実施を決定する直前の6日深夜、日本政界に激震が走った。自民党副総裁で前首相の菅義偉と、小泉進次郎農林水産相が首相官邸を訪れ、石破茂首相と2時間にわたり会談したのである。報道によれば、その目的は明確で、党内で高まる「石破おろし」の流れの中、党分裂という最悪の事態を避けるため、石破に自発的な辞任を迫るものだった。
《産経新聞》などによると、この会談は午後8時半頃に行われた。菅氏の公用車が到着した約30分後には菅氏は先に官邸を後にし、その後も小泉氏が残って石破氏と約1時間半にわたり議論を続けたという。背景には「党は決して分裂してはならない」という二人の共通認識があったとされる。
歴史の再現か 菅義偉氏の「勧退」の記憶
菅氏と小泉氏には特別な政治的因縁がある。4年前、菅氏自身が党内支持を失い退陣圧力に直面した際、総裁選再出馬を断念させたのは他ならぬ小泉氏であった。菅氏はその助言を受け入れ、円滑に政権を譲った経緯がある。
今回、二人が連れ立って石破氏を訪ねたことは、当時の状況を想起させるものであり、小泉氏が再び「勧退役」を担い、菅氏が「自ら退いた元首相」として現職に政治の現実と非情さを伝えに来たと受け止められている。
石破氏は同日夕方には、側近で経済再生担当相の赤澤亮正氏とも会談していた。米国交渉から帰国したばかりの赤澤氏は党内情勢を報告したとみられるが、夜の菅氏・小泉氏との会談こそが石破政権の行方を左右する決定的局面となった。
「石破おろし」運動が白熱 自民党は分裂寸前
自民党は9月8日に臨時総裁選の開催可否を最終決定する。党規定では、国会議員と都道府県連代表による署名が過半数を超えれば、臨時総裁選を開かなければならない。この手続きは事実上、現職総裁の解任に等しい。
7日朝の時点で「石破おろし」の動きは全国に拡大していた。NHKの集計によれば、47都道府県連のうち東京、大阪、青森など18都府県連がすでに前倒し実施に賛成を表明。山形、新潟の2県連も同様の方向で調整を進めている。一方、森山裕幹事長が会長を務める鹿児島県連や沖縄など8県連は「不要」との判断を下した。
国会議員の間でも立場は鮮明に分かれている。神田憲次法務政務官は連署提出を公言し、「総裁選を通じて国民のために政策を推進する体制を築き、党の結束を示すことが不可欠だ」と強調した。
さらに衝撃的なのは、かつて「旧石破派」の中核とみなされていた斎藤健元経産相が石破氏に辞任を迫ったことである。斎藤氏は「自民党の混乱を防ぐ最良の方法は本人が決断することだ。最後の瞬間までそう願っている」と述べ、辞任を強く促した。この発言は、なおも抵抗を続ける石破氏にとって極めて重い一撃となった。
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