中国の習近平国家主席は9月3日の九三軍事パレードで演説し、中国人民解放軍は「国家の主権統一と領土の完全性を堅持して守らなければならない」と強調した。しかし注目された「台湾」への言及はなかった。この点について、中国人民大学の金燦栄教授(国際関係学部、党内で「国師」とも称される)は「台湾問題の解決の条件は成熟しつつあるが、民族感情の問題がある」と説明。台湾独立派が「自分たちは中国人ではない」と主張しても、中国本土は「彼らを自分の子どものように見ており、慈悲の心を持っている」と語った。
中国本土では同日、「中国人民抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利80周年記念活動」として大規模な九三軍事パレードが実施された。天安門広場には大量の部隊が整列し、陸海空軍の兵器が次々と披露され、軍事力を誇示した。習近平氏は、中国人民解放軍を「世界一流の軍隊」として早期に育成し、国家の主権と領土を守り抜くとともに、「中華民族の偉大な復興を戦略的に支える存在になる」と強調。さらに「世界の平和と発展により大きな貢献を果たす」と述べた。

九三軍事パレードの軍事的意義:兵器は多く、兵士は少ない
金燦栄教授は今回のパレードについて「世界の大きな潮流を映し出しており、『東昇西降』(東の台頭と西の衰退)を示すものだ」と指摘。過去500年間は西側が中国を上回り世界を主導してきたが、現在は「100年に一度の大変動期」にあるとし、「東昇西降こそがこの大変動の核心であり、今回の天安門広場でのパレードはその象徴的な歴史的意義を持つ」と述べた。
また、パレードには政治的意義もあるとし「歴史を記憶し先人を追悼することは極めて重要で、これにより国民の信頼を高めることができる。歴史を忘れることは裏切りであり、先人に対する二度目の傷害となる」と強調した。
さらに、外交的な意味合いも大きいと説明。ロシアのプーチン大統領や北朝鮮の金正恩総書記が出席したことを挙げた。金正恩氏は就任以来、複数回にわたり外国を訪問しているが、その多くは中国とロシアで、他には米国のトランプ大統領との会談のためシンガポールとベトナムを訪れたにとどまる。今回の訪中は10回目の外国訪問で、中国では6回目。多国間の外交イベントに参加するのは極めて珍しく、孤立を続ける北朝鮮にとっては大きな意味を持つと位置付けた。

金燦栄教授は軍事的意義について「今回の閲兵式は『兵器は多く、兵士は少ない』特徴を持っている」と指摘した。彼は、かつて毛沢東が朝鮮戦争を振り返り「米軍は兵器は多いが士気が低い、中国は士気は高いが兵器が少ない」と語ったことを引き合いに出し、当時は物量で中国が劣勢に立たされていたことを示す言葉だと説明した。
今回のパレードでは、歩兵部隊の規模が2019年のパレードと比べて半減する一方、新型装備の比率は約5割増加していた。金教授はこれを「中国の工業化と軍事近代化の進展を象徴するもの」と位置付けるとともに、「今の時代、子どもたちはかけがえのない存在になった。兵器が増えた今後の戦争は、兵士を消耗する戦いではなく兵器同士の戦いとなるだろう」と述べ、今回の閲兵式が「人命の価値が高まったことを示している」と分析した。