米国ワシントンのシンクタンク「スティムソンセンター」は最新の報告で、北京が台湾に対して大規模な攻撃を行う可能性は「極めて低い」と明言した。さらに、時間の経過とともに成功の可能性は逆に低下していると指摘。この報告書は『脅威の再考:中国が台湾を侵略しない理由』と題されており、ワシントンが台海戦争のリスクを過度に強調し、実際には軍事予算の増加を合理化していることを指摘している。報告書の著者ダン・グラジエ氏は、「軍事と防衛技術の進展により、北京の成功の可能性は日に日に低くなっている」と強調している。
台湾攻撃にはどのような軍事的挑戦があるのか?
報告書によると、台湾海峡を越えること自体が大きな挑戦であり、上陸作戦を成功させることは第二次世界大戦時の「ノルマンディー上陸作戦」以上に困難であると指摘している。また、台湾の多くの山地は防御側にとっての「最良の戦場」とされており、平原に広がる農地と湿地が「戦車の稲田や湿地帯での行進を阻む」ことで攻撃側の行動能力をさらに制限するとしている。シンクタンクは、これが「史上最大かつ最も複雑な軍事作戦」となり、北京が成功する可能性は極めて低いと結論づけた。
紛争が発生した場合、中国はどのような代償を払うのか?
報告書は、台海で戦争が勃発した場合には、まず大量の人的損害と人口減少が引き起こされ、中国共産党にとって大きな政治的リスクとなると述べている。その後、深刻な経済的打撃が続き、世界的な航運の混乱を招くだけでなく、国際社会からの全面的な制裁も引き起こす。最も懸念されるのは核戦争のリスクである。米軍が過去の多くのシミュレーション演習で示したように、従来の戦争が膠着状態になると、意思決定者は「核兵器の使用に訴えたいという強い衝動」に駆られることが多く、このリスクはどの国にとっても耐えがたいものである。
北京が採る可能性のある「全面的な攻撃以外の手段」とは?
全面的な台湾侵攻は現実的ではないと考えられているものの、報告書は北京が他の方法で台湾に圧力をかける可能性があると警告している。具体的には以下の通り:
- 海上封鎖:航運を遮断して圧力をかける。
- サイバー攻撃:インフラや政府システムを攻撃する。
- 威圧的な外交:軍事と経済的手段を利用し、台北に「圧力から逃れるために具体的な政治譲歩を求める」。
これらの戦略は全面戦争ではないが、台湾を域内安全保障において長期にわたり受動的な状況に置くのに十分である。
米国は防衛投資を見直すべきか?
現在、米国議会は新たな「国防権限法案」を推進しており、その中には「台湾安全保障共同イニシアチブ」(Taiwan Security Cooperation Initiative)への10億ドルの資金が含まれ、その目的は台湾の防衛能力を強化することにある。この法案には、原子力潜水艦などのハイテク兵器も含まれているが、スティムソンセンターは米国が中国による武力統一を過度に想定することが、資源の誤配置を招く可能性があると警告している。報告書は、「台海紛争の脅威を過度に強調するべきではないし、中国の台湾統一という想定に基づいた防衛投資を減らすべきである。この方が米国の利益により適う」と強調している。
編集:佐野華美
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