元中国国民党主席の洪秀柱氏は、北京で開催された「93軍事パレード」に出席した。洪氏はかつて立法院副院長も務めており、今回の訪問では台湾から参加した中で最も高い地位にあたる人物となった。
関係者によると、洪氏が出席を決めるまでの過程は外部に一切公開されず、北京当局は特別な礼遇を用意した。座席は「党・国家指導者」級に相当する位置に配置され、洪氏の到着前には国安当局が事前に接触、状況を確認したという。洪氏自身も「帰国後は批判され、烈士になる覚悟」と自嘲していた。
今回のパレードは「中国人民抗日戦争および世界反ファシズム戦争勝利80周年記念行事」の一環として行われ、洪氏は台灣からの参加者として最も高い階級で参列した。このため、民進党政府の注目対象となり、陸委会は洪氏が「93軍事パレードへの参加が禁止される涉密(秘密保持)対象者」に該当するかどうかを確認する方針を示している。今後、政治的な影響や対応も注目される。

洪氏の座席配置に秘められた意図
洪氏の座席は天安門城楼の第2列にあり、前列には中国共産党の最高幹部が並んでいた。前列には元中央政治局常務委員で中央書記処第一書記の劉雲山氏、元政治局常務委員・中央紀律検査委員会書記で国家副主席の王岐山氏、元政治局常務委員・国務院副総理の張高麗氏、政治局委員・中央軍事委員会副主席の張又侠氏らが含まれる。
隣席も豪華で、右隣は中国国務委員の諶貽琴氏で、国務委員は中共の「副国家級」に相当し、正国家級と並ぶ「党・国家指導者」としての地位にある。中国の学者の一部は「洪氏は副国家級の座席に配置され、非常に面子を保たれた配置」と指摘している。
左隣には前解放軍総司令の朱徳氏の孫で元空軍少将の朱和平氏、さらに抗日名将傅作義氏の孫で民革和平統一促進会副主任・北京市委副主委の傅川氏が並ぶなど、周囲も高位幹部で固められていた。

洪氏の左隣に座った人物も、いずれも高位幹部や名家の子孫で固められていた。左隣の最初の人物は、かつて解放軍総司令を務めた朱徳氏の孫で、解放軍空軍少将を務めた朱和平氏。続く左隣には、抗日名将傅作義氏の孫で、民革和平統一促進会副主任・北京市委副主委を務める傅川氏が座った。
洪秀柱、自嘲「批判覚悟で臨む」
洪秀柱氏は、93軍事パレードへの招待を受けてから参加を決めるまで、徹底的に情報を秘匿していた。外部にはほとんど知られなかったが、国安当局は洪氏の動向を注視し、事前に事務所を訪れて確認していたという。洪氏自身も、帰国後に民進党政府から批判される可能性を考慮し、国安法の規定を確認したうえで、参加自体は違法ではないと判断した。ただし「中国の宣伝に加担した」と非難される可能性は否定できないと自覚していた。

洪氏が最終的に出席を決めた理由は複数あるが、最大の理由は、現行政府が抗戦史を軽視していると感じたためだという。北京での抗戦記念活動に参加しなければ、中国側の歴史解釈だけが残る状況になる。洪氏は「中華民国こそが抗戦の主体であることを示すため」に出席を選んだと述べ、「一部の人が意図的に理解しないふりをしているだけ」と語った。