呉典蓉コラム:柯文哲を拘留することは司法の恥である

2025-09-04 13:50
前民衆党主席の柯文哲氏は京華城事件により収監され、既に1年以上経過している。(写真/顔麟宇撮影)
前民衆党主席の柯文哲氏は京華城事件により収監され、既に1年以上経過している。(写真/顔麟宇撮影)

《震傳媒》の世論調査によれば、すでに有権者の約半数が、前民衆党主席の柯文哲氏は「政治的理由で勾留されている」と考えているという。同じ調査機関が昨年11月に実施した際には、ほぼ半数が「柯氏の勾留は必要な手段である」と回答していた。つまり、勾留が長引くほど、司法の公正性に対する疑念が強まっていることを示している。与党・民進党関係者は、民衆党側の「不当な勾留」との訴えを揶揄し、「勾留の判断権は裁判官にある」と反論してきた。確かにその通りであるが、検察・調査機関に政治的影響が及んでいるのは台湾において「現実」であり、司法官が本当に独立性を保てるかどうかこそが、司法の信頼回復の鍵である。歴史に残るとされる京華城事件は、まさに裁判官の独立性を試す事案となっている。

勾留が1年に及ぶ柯氏は、自ら「すでに9人の同室者が替わった」と自嘲している。実際、柯氏は死刑囚の邱和順氏に続き、長期間にわたって未決のまま勾留される異例の存在となりつつある。被疑者を勾留して供述を引き出す手法は、憲法が定める「無罪推定」の原則に反するものである。しかし、台湾の検察・調査当局にとって勾留は捜査の常套手段となっており、それは警察が防犯カメラに依存して犯人を捕らえるのと同じくらい日常的なものとなっている。実際、昨年9月に柯氏を保釈した裁判官も、当時の台北市副市長・彭振声氏については勾留を決定していた。さらに柯氏は初めて勾留された際、抗告を放棄し、「検察は徹底的に調べればよい。それが自らの潔白を証明することになる」と強がりを見せていたのである。

​​現在の柯文哲氏にとって、当時の自分はあまりに天真だったと思わざるを得ないだろう。この期間における検察・廉政機関の対応は、単なる「勾留による供述引き出し」をはるかに超えていたからである。京華城事件において最も批判を浴びた「違法な取り調べ」と「捜査情報の公開」は、まさにこの時期に集中して起きた。特に起訴前の4カ月間の勾留は、事件における最も暗い時期とされる。検察当局と関係の深いメディアからは、「小沈1500」などの収賄疑惑や「柯氏宅に6000万元の現金があった」「冷蔵型ウォレットを所有していた」「ビットコインで資金洗浄を行った」といった数々の憶測が流された。これらは真偽不明で、発信者も責任を負うことはなかった。後に起訴状には盛り込まれなかったものも多く、むしろ週刊誌記事さながらと揶揄された。しかし、柯氏や家族に「金銭欲にまみれた」というイメージを植え付ける効果をもたらしたのは否めない。そして、土城で勾留生活を送る柯氏には反論の機会はなく、一方的に打撃を受ける状況に置かれていた。

さらに深刻なのは「違法な取り調べ」である。京華城事件における主要被告である彭振声氏、邵琇珮氏、朱亞虎氏らの自白経過には多くの疑念が残る。司法取引によって減刑が可能となり、自白すれば勾留を免れることができる。高齢で持病を抱える被告にとって、自白は大きな「恩恵」であった。事実、朱亞虎氏は210万元が賄賂であるとの認定を11回にわたり否定したにもかかわらず、最終的に認めるに至った。しかし最も問題視されるのは、その210万元が民衆党への公開された政治献金であった点である。検察は関係者の携帯電話を徹底的に調べたが、柯氏がその資金を認識していた証拠は見つからなかった。受領者が存在を知らない「賄賂」で、果たして賄賂罪が成立すると言えるのだろうか。

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