トランプ政権の「対印50%関税」と親パキスタン政策、長年の友好関係に亀裂 専門家「地政学的な自滅」と警鐘

2025-09-03 17:23
2024年10月23日、ロシア・カザンで開催されたBRICSサミットに出席したインドのモディ首相(左から)、ロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席。 (AP)
2024年10月23日、ロシア・カザンで開催されたBRICSサミットに出席したインドのモディ首相(左から)、ロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席。 (AP)
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アメリカのトランプ大統領は、任期中のわずか数か月の間にインド外交で大きな波紋を呼んだ。一方でインドの宿敵であるパキスタンに公開の友好を示し、他方でインドには50%の高率関税を課す措置を実施した。関税は8月27日から発効している。これまで米国にとって、中国をけん制する重要なパートナーだったインドとの20年間の関係は、トランプ大統領の行動により大きく揺らいだと専門家は指摘する。「地政学的自傷行為」に等しいとの評価もある。

こうした状況下、インドは新たな外交選択を迫られている。モディ首相は7年ぶりに中国を訪問し、「上海協力機構(SCO)」サミットに出席。これにより「中露印三国の枠組み」が復活する可能性も取り沙汰され、西側諸国に対抗する新たな勢力として注目されている。『エコノミスト』や『フォーリン・ポリシー』の専門家は、トランプ大統領の「衝動的外交」に対し、インドが中露との協力を強めるのか、それとも米国・西側民主主義諸国との関係を維持するのかが、インドの多極化した国際舞台での将来を左右すると分析している。

トランプ氏の「印パ和平大使」発言が火に油

印パ関係は長年、インドの敏感神経を刺激してきた。インドはパキスタンがテロリストを黙認・支援していると非難し、アメリカもインドの懸念を理解してきた。しかし今年5月、インド支配下のカシミールで24人が死亡するテロ攻撃が発生。多くがヒンドゥー教徒男性であったことから、印パ間で短期間の衝突が起きた。

米国の立場は一貫せず、「インドに自主的対応を任せる」と見せかけつつ「双方のミサイル発射停止を求める」など二転三転した。これによりインドは、自国が「侵略者」と見なされていると感じたという。

さらにトランプ氏は、自ら「貿易制裁で停戦に導いた」と自慢し、カシミール調停の構想を打ち出すなど、インドにとって最も敏感な国境問題に踏み込んだ。専門家によれば、トランプ大統領が「和平をもたらした」と公言した回数はすでに40回に上る。

トランプ氏のパキスタン寄り外交により、米印防衛関係は大きく揺らいだ。2020年6月にはホワイトハウスでパキスタン陸軍参謀長ムニール氏を接遇し、パキスタン側はトランプ大統領を「ノーベル平和賞候補」と称賛。さらにパキスタンの石油・ガス開発支援を表明し、「いつかインドは君たちからエネルギーを買わざるを得ない」と皮肉交じりに発言した。

インドは長年、中国をけん制する重要なパートナーとみなされ、2014年には「重要防衛パートナー」に指定されていた。正式同盟ではないものの、高度な米国製防衛技術の取得が可能となり、同時に中国はパキスタンに先進兵器を供与。5月の印パ衝突では、パキスタンが中国製戦闘機を使用し、インド戦闘機5機を撃墜した可能性も指摘されている。 (関連記事: インド・モディ首相、農民保護と国内生産を強調 米国関税に対抗姿勢 関連記事をもっと読む

インドが軍備を急速に増強する必要がある中、米国は従来、信頼できるパートナーとみなされてきた。米国・インド・日本・オーストラリアで構成される「四か国安全保障対話(Quad)」を通じて、10年間の防衛協力枠組みの署名や共同演習、戦闘機エンジンの現地生産支援などが計画されていた。しかし、トランプ氏の行動により、これらの協力の前途は不透明となった。

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