英国紙「フィナンシャル・タイムズ」は30日、複数の事情に詳しい関係者の話として、トランプ米大統領が先週、ホワイトハウスで行われた欧州およびウクライナ首脳との非公開会議において、中国に軍隊を派遣させ、戦後のウクライナで「平和維持部隊」として活動させるという驚くべき提案を行ったと報じた。この構想はもともとロシアのプーチン大統領が打ち出したもので、直ちにキーウから断固たる拒否を受け、欧州の同盟国からも強い反発を招いた。ホワイトハウスはこれを否定したが、「フィナンシャル・タイムズ」はなおも、この報道はロシア・ウクライナ和平交渉に新たな衝撃を投じ、停戦条件や戦後体制をめぐる各方面の深刻な亀裂を露呈させたと指摘している。
英紙「フィナンシャル・タイムズ」は、関連の報告を受けた四人の証言として、トランプ米大統領が先週ホワイトハウスで開かれた重要会議の場で、戦後のウクライナに中国軍を派遣し、平和維持の役割を担わせるという極めて物議を醸す提案を行ったと報じた。この構想はロシアのプーチン大統領が以前に打ち出した案と軌を一にするものであり、会議に出席した欧州首脳やウクライナのゼレンスキー大統領の間で直ちに大きな波紋を呼んだ。
この会議は、想定される停戦合意の履行方法、西側諸国がウクライナに提供すべき安全保障、さらには戦後の解決策の枠組みを協議することを目的としていた。出席者の証言によれば、トランプ氏は、ロシアとの和平協定の一環として、ウクライナ東部約1300キロに及ぶ前線に非武装地帯を設置し、中国の平和維持部隊を招き入れて監視させる案を示したという。
しかし、トランプ政権の高官はこの報道を全面的に否定し、「フェイクニュースだ」と断じるとともに、「会議では中国の平和維持部隊について一切議論されなかった」と強調した。ホワイトハウスの否定にもかかわらず、この構想は欧州およびウクライナの最も敏感な懸念を刺激している。北京が戦争中にロシアへ重要な支援を行ってきた経緯から、欧州の主要国は一様に強く反対しており、ゼレンスキー大統領もすでに明確に拒絶している。
ロシアの思惑――2022年イスタンブール交渉の再現狙う
英紙「フィナンシャル・タイムズ」によれば、「中国を平和維持部隊として招く」という発想は突如出てきたものではない。初めて登場したのは2022年春、ロシアとウクライナがトルコ・イスタンブールで行った初期交渉の場であった。当時ロシア側は、将来の和平条約には米国、英国、フランス、中国、ロシアといった「保証国」が署名し、ウクライナが再び攻撃を受けた際にはこれらの国々が共同で出兵し防衛するべきだと提案した。
しかし、この合意案にはウクライナに極めて不利な条項が潜んでいた。すなわち、いかなる軍事行動も「保証国すべての一致した同意」を必要とするというもので、保証国の一員であるロシアが事実上の拒否権を握り、ウクライナへの軍事支援を容易に阻止できる仕組みであった。
当時ロシア軍は依然としてキーウ周辺の広大な領土を占領しており、交渉を有利に進めていた。しかしその後、ウクライナ軍が反撃に成功してロシア軍を首都近郊から退け、さらに郊外の町々で戦争犯罪の証拠が発見されると、ゼレンスキー大統領はこの交渉を断固として打ち切った。
最近になり和平交渉再開の声が高まるなか、ロシアは再び北京をウクライナの安全保証国に加える案を持ち出した。ラブロフ外相は今月初め、国連安全保障理事会の常任理事国(ロシアと中国を含む)が戦争終結に向けた和平協定において、ウクライナに共同で安全保障を提供すべきだと提案したのである。興味深いことに、中国外交部は今週、北京が自らウクライナの平和維持部隊参加を提案したとの報道について「事実ではない」と否定したばかりである。
ゼレンスキーは断固拒否
トランプ氏の提案に対し、ウクライナのゼレンスキー大統領の立場はほぼ間違いなく強硬な拒否である。ゼレンスキー氏は今月、中国が保証国を務めることを受け入れられない理由をあらためて公に説明した。
「なぜ中国が保証国になれないのか。第一に、戦争が始まった当初から、中国はこの戦争を止めるために我々を助けてこなかった。第二に、中国は無人機市場を開放することでロシアを支援している」と同氏は指摘した。さらに「クリミアが占領された時も、彼らは何もしなかった。だからこそ、我々が本当に助けを必要とした時(2022年2月のロシア全面侵攻)に手を差し伸べなかった国を、保証国として必要としないのだ」と強調した。
ゼレンスキー大統領は今年4月、更に踏み込み、中国がロシアに武器を供与し、その軍備生産を支援していると非難した。また、ロシアが中国国民を募集してウクライナ戦争に投入している行為に対し、北京が何ら行動を取っていないと指摘し、ウクライナ情報機関が収集した証拠を公開した。それによれば、少なくとも155人の中国人傭兵が既に戦場に派遣されているという。
トルコ――欧州が受け入れ可能な仲介者
複雑な戦後の枠組みにおいても、ウクライナがすべての国に疑念を抱いているわけではない。キーウは、トルコ軍の平和維持任務への参加については前向きな姿勢を示している。
エルドアン大統領は28日、ゼレンスキー大統領に対し、アンカラがキーウとモスクワの間でいかなるハイレベル会談も主催する用意があると伝え、和平が成立した場合にはウクライナの安全保障に貢献することを約束した。戦争勃発後、イスタンブールでは既に三度のロシア・ウクライナ和平交渉が行われ、大規模な捕虜交換を除いて実質的進展はなかったものの、トルコの仲介者としての役割はますます重みを増している。
NATO加盟国であるトルコは、戦争中一貫して自らを和平の仲介者として位置づけてきた。最近では、黒海地域に平和維持部隊を計画・派遣する可能性を示唆し、これをロシアとの最終合意の一部に組み込む考えもにじませている。欧州の当局者も、トルコがその役割を担うことについては容認できると述べている。
トランプ政権はロシアとウクライナの和平合意を積極的に後押ししているものの、モスクワとキーウの間には戦後の領土支配など重要な論点で依然として深い溝が横たわっている。トランプ氏による「中国平和維持部隊」の提案は、思いつきにせよ意図的な試金石にせよ、ウクライナ和平の道のりがいかに複雑かつデリケートであるかを改めて浮き彫りにした。