黒海の戦場において、ウクライナは大部分の艦艇を失ったものの、「海上ドローン」(USV)や小型ボートを活用してロシアの攻勢を牽制している。『エコノミスト』によれば、情報部隊と同盟国の衛星支援の下、ドニエプル川河口から黒海回廊まで、無人艇や監視機、地雷防衛線がウクライナの海防の主力となっているという。しかし、専門家は黒海の大部分が依然として「グレーゾーン」であり、ロシア軍のドローンとミサイルの脅威が続いていることを指摘している。さらに、モスクワも自主製造の無人艇の開発を加速しており、海上の戦況は依然として厳しい。
無人艇が黒海の戦局を変える
海岸で、一人が小舟を押し、武装した人物がアシの間に隠れ、他の者は岸辺で観察している。突然、この無人の小舟が轟音とともに加速し、海岸から離れていく。これは全て白いバンの中の操縦者が遠隔で操作している。今日はテストであるが、次の任務はロシア攻撃である。
海上ドローン、すなわち「無人水上ビークル」(Unmanned Surface Vehicles、略してUSV)は、黒海周辺の戦争情勢を根本的に変えた。8月、アメリカ、ロシア、ヨーロッパのサミットは戦争終結について具体的合意に至らず、戦況は膠着を続けている。陸上では、ロシア軍がウクライナ東部で緩慢に前進しているが、海上ではウクライナ軍が無人艇やミサイル、小型ボートでロシア軍の進入を阻止している。
ウクライナ南部黒海沿岸都市ニコラエフの基地では、ウクライナ軍が様々な機能を持つ無人機を作り出している。「バラクーダ大隊」の兵士たちは「監視ドローン」を使ってオレシキの動きを偵察している。オレシキはドニエプル川の対岸に位置し、ロシア軍が占領し、ウクライナが支配するヘルソンから約8キロ離れている。無人機のカメラで、羽毛を整えるカモがはっきり見えるほどである。
基地の倉庫では、技術者と溶接工が様々な無人艇を建造している。ある無人艇は負傷兵の撤退用、あるものは「神風特攻艇」として大型艦や施設を攻撃するために使われる。また、爆薬やロケット発射器を満載し、空中ドローンをより近く運ぶことができるものもある。
実際、この「バラクーダ大隊」は海軍ではなく陸軍に属している。ウクライナの水域防衛は、緩やかに協力する多様な組織ネットワークによって構成されている。ウクライナ軍事情報局(HUR)と国家保安局(SBU)はそれぞれ無人艇作戦を手掛けており、時には海軍に通知しないこともある。海軍高官に比べて、これらの情報機関の指導者は政治的影響力を持ち、しばしばメディアの注目を集めるのが上手である。 (関連記事: 九三軍事パレードを前に 中国無人機群が台湾に照準 米国を上回る強みも「侮れない」 | 関連記事をもっと読む )
艦隊を失ってからロシア艦を撃沈、ウクライナ軍の戦果は海陸協力による
2014年以前、ウクライナ海軍の主基地はクリミアに設置されていた。クリミアがロシアによって奪われた後、ウクライナ海軍は大半の艦艇を失い、3分の2の兵士がロシア側に転向した。2022年のロシア・ウクライナ戦争の全面的な勃発後、ウクライナ軍は残りわずかな艦艇を再び失い、最後のフリゲート艦をロシア軍の手に渡ることを避けるため、自ら沈めたのである。現在、ウクライナの80%の海岸線がロシア軍によって支配されている。