第三原発(核三)の再稼働に関する国民投票が28日に台湾で行われ、同意票は434万1432票、不同意票は151万1693票、投票率は29.53%だった。賛成票が反対票を大きく上回ったものの、成立には有権者総数の4分の1にあたる500万523票以上の賛成票が必要で、条件を満たせなかったため不成立となった。
台湾では過去にも2度、原発関連の国民投票が行われている。2018年の「以核養緑(原子力で緑を再生)」投票、2021年の「重啟核四」投票では、賛否の差はここまで大きくなかった。今回の投票結果を比較すると、反原発票が大幅に減少し、過去の約4割にまで落ち込んだことが明らかになった。

2018年「以核養緑」国民投票は成立 蔡英文政権は「非核家園」を堅持
台湾の原発をめぐる国民投票は、2018年と2021年にも実施されている。原子力を巡る議論は常に激しい賛否を呼ぶ。2018年の「以核養緑」投票は、蔡英文政権が進めた「2025年非核家園」政策をめぐる対立から生まれた。2017年に電業法を改正し、脱原発方針を法制化したことが発端で、反対する市民団体が国民投票を提起。発起人は「核能流言終結者」の創設者である黄士修氏だった。
結果は同意589万5560票(59.49%)、不同意401万4215票(40.51%)で成立。しかし蔡政権は「原子炉の寿命が尽きている」として延長運転や新設には応じず、「非核家園」路線を維持した。
2021年の「重啟核四」国民投票は、当初2018年の「以核養緑」と同じ文脈で提案されたが、中選会(中央選挙委員会)が「一案一事項」に違反するとして修正を求め、2019年に改めて提起された。「第四原発(核四)を稼働させることに同意するか」という問いで、2021年12月に投票が行われた。
結果は同意380万4689票(47.16%)、不同意426万2517票(52.84%)。賛成票が反対票を下回り、かつ成立要件の4分の1に届かなかったため不成立となった。この時は府・院・党が一体となって「4つの不同意」を訴え、各地で反対票を訴える活動を展開した。

2021年「重啟核四」に比べて反核票は4割減少
今回の第三原発延長国民投票を過去2回と比較すると、特徴が際立つ。賛成票434万1432票(74.17%)、不同意票151万1693票(25.83%)と、賛否の差は過去最大となった。
2018年「以核養緑」では投票率54.83%、同意約6割、不同意約4割。2021年「重啟核四」では投票率41.09%、同意約47%、不同意約53%であった。これに対し今回の投票率は29.53%と低かったが、反対票は151万票にまで落ち込み、過去2回の約400万票と比べると4割程度にまで減少した。
投票率は下がったものの、賛成票が圧倒的に多かったことは、台湾社会における原子力利用への意識が変化しつつあることを示している。民進党政権が「非核家園」方針を堅持し続ければ、民意との乖離が拡大し、将来的に政権運営の不安定要因となりかねないとの見方も広がっている。
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