台湾で23日に予定される「第三原発(核三)再稼働」の国民投票を前に、長年原子力を支持してきた和碩(ペガトロン)グループ会長の童子賢氏が22日、台湾民衆党の陳智菡立法委員の番組に出演し、原子力と再生可能エネルギー(再エネ)をめぐる課題について語った。童氏は「台湾が努力して太陽光発電や風力を推進しても、最終的に必要な部品は中国製に依存せざるを得ず、中国にエネルギーの命脈を握られる」と強調した。
童氏は「私自身もかつては風力や太陽光に大きな期待を抱いていた。新疆や甘粛を旅した際、わざわざ光電パネルを見学するように頼んだほどで、広大な砂漠に並ぶ太陽光パネルや風力発電設備は壮観だった。当時、中国が経済発展の中で風力や太陽光を懸命に推進していることを高く評価した」と述懐。その一方で、「問題は中国が部品をほぼ独占していることだ。現在、中国は世界の風力発電の39%、太陽光の37%を占めている。この巨大な需要を背景に、関連部品産業を自国で握ってしまった」と指摘した。
さらに童氏は、民進党の矛盾を批判した。「台湾では『中国と結びつきたくない』と言いながら、再エネを推進することで結局中国に頼らざるを得なくなる。反サービス貿易協定(反服貿)を叫びながら、太陽光や風力の利権が絡むと目をつぶってしまう」。
その典型的な例として、童氏は10年前にある高官から聞いたやり取りを紹介した。「彼は『大丈夫、産地偽装はさせないようにする』と言ったが、それでは解決にならない。7~8割の部品が中国製なのだから、避けようがない。残り2割といっても品質は劣る。TSMCが8割を握っているなら、残り2割は二流品であるのと同じだ。つまり太陽光を導入する限り、中国依存からは逃れられない」と述べた。
童氏はイタリアの例も引き合いに出した。2024年7月、イタリア首相が記者会見で「太陽光拡張をやめ、原子力を再導入する」と宣言した理由は三つあったという。第一に、太陽光パネルが農地や景観を大きく破壊し、美しい山々からの眺めも反射光で損なわれ、観光客からも疑問の声が出ていたこと。第二に、太陽光はエネルギー密度が低く、農業用地を過剰に占有してしまうこと。そして第三に、部品のほとんどが中国製であり、ビジネスと政治が絡むため安全保障上のリスクが大きいことだった。首相は「中国依存が政治的な圧力につながることは受け入れられない」と明言した。
童氏は「イタリア首相は正直に依存リスクを語ったが、台湾の民進党は理念を掲げる一方で実態を見て見ぬふりをしている」と批判。その上で「再エネが不要だと言っているわけではない。だが原子力を排除するのではなく、むしろ原子力と再エネを両輪として進めることこそ、台湾や世界が脱炭素と安定供給を同時に実現する現実的な道だ」と強調した。
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